齢五十も過ぎて、人生初の「推し」ができ、老化する一方の身で西へ東へ遠征する。心は軽いが身体は重い。ままならぬことばかりの50代オタ活考察記!
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先日、「何も知らない」ということに唐突に気付いてしまった。
いわゆる「オタ友」について、である。
推し活における「友だち」の重要度は、人にもよるし界隈にもよってまったく異なる。「友だち」なんていなくても個人行動で楽しめ、足りない情報はSNSで集めれば十分満たされる界隈もあるし、アイドルの推しとて、「現場」に行かずに応援するタイプのファンも少なくない。舞台やライブなどに通い詰める場合でも、単独行動を好むオタクもいる。ひとり現場は圧倒的に気楽である故、その気持ちも分かる。
が、しかし。軽率にあちこち行きたい、好きなものは出来る限り観たいといった厄介な欲望を抱えると、「オタ友」なしでは「オタ活」が成立しないのだ。たとえばライブツアーが発表された場合、FC(ファンクラブ)先行でも自分だけならまず1公演しか当たらない。もちろん、需要と供給そのほかの兼ね合いで、1公演も当たらないケースもあるし、2公演当選する場合もあるが、基本はひとり1公演。
ところが界隈のFCはライブ1公演につき2枚まで申し込めるのが常なので、「オタ友」がいれば同行者分を交換して2回行ける可能性が出てくる。申し込み時から同行者を決めて登録が必要な場合でなければ、「友だちと同じ日を申し込んだらふたりとも当たってチケットがダブっちゃったから行かない?」といった声がかかることもある。過去には1公演につき4枚申し込めた時代もあり、そうなると自分+3人のオタ友が全員当選すれば、4回ライブに行けていた。当時はまだ自分のなかに推し活という概念が芽生えていなかった頃で、そうやって東京、愛知、大阪、福岡とワイワイ楽しそうに遠征している友人に「え? 同じライブ4回も見るの? 遠征してまで? セトリとか変わらないのに? なんで!?」と真顔で聞いたこともあった。いやだって本気で意味が分からなかったのだ。
そうしたFC関連だけでなく、いわゆる「一般」と呼ばれるチケット争奪戦も「オタ友」の存在は力強い。あの各種プレイガイドの10時一斉販売でありがちな延々繋がらない地獄も、協力し合えば強運により突破できる確率も上がる。舞台の主催社による「先行抽選」も同様で、これまでにもFCで取れなかった舞台やミュージカルのチケットを、オタもだちが先行抽選で当てて誘ってもらったことも何度かある。
先日も、推しが出演している映画の舞台挨拶があり、プレイガイド抽選だったものの、くじ運悪いことこの上ない自分はもちろん落選。しかーし! 若者のオタもだちが上限4枚で当選し、「もし良かったら一緒に~」と誘ってくれるという僥倖がおとずれた。しかも「B列」=2列目という神席。こんなプラチナチケットを譲ってくれるのか! なんて慈悲深い女神! と感謝して当日現場に向かったところ、映画館で特別に高さのある舞台が用意された作りでもなかったためか、A列が潰されていて、なんとBが最前列。間に何ひとつ遮るものがない5メートル向こうに最推しが現れるというとても現実とは思えぬ20分を過ごすことに。いやー幸せが怖かった!
ところが。その後、参加したメンバーで興奮と感動を分かち合いつつ歓喜の食事会&お茶会と流れたとき、急に「今、この場にいる3人のことを何も知らない!」と気付いたのだ。フルネームも、年齢も、住んでいる場所も、具体的な仕事も知らない。一人暮らしなのか、家族と同居なのか、独身なのか、子どもはいるのかなんて踏み込んだことはもちろん知らない。アルコールは飲めるのか、嫌いな食べ物があるのか、といった飲食情報は知っているし、「推し」が誰なのか、これまでの推し活歴も知っている。どこ「出」(何をきっかけにその推しに落ちたのか、という意味)なのか、ドラマなのか歌番組なのか。声がいいのか顔がいいのか、どこがどんなふうに好きなのか。リアル恋バナでもなかなか訊きにくいことも平気で話せるのに、「ところで本名はなんていうの?」とは訊けないし、「今さらだけど何年生まれ?」とも切り出しにくい。
「かなちゃん」(仮)「なみさん」(仮)などと呼んでいても、それが当人の名前とは限らない。苗字の略かもしれないし、以前好きだったキャラクターの名前かもしれない。「ママ」と呼ばれていても誰かの母親とは限らないし、「ぼーちゃん」がお寺の娘だったりすることぐらいはよくある話。
今どきXもラインも本名では登録していない人も多い。リアルで会っていても正体不明で、いつからどこまで踏み込んでいいのか分からないし、この微妙な匿名性が心地よいのだとも感じなくもない。よく知らない人なのに信用しているし大切に思っている、とても不思議な関係性なのだ。
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『昭和歌謡イイネ!』(横山剣/小学館)1980円(税込)
エモーショナルな歌声で魅了するクレイジーケンバンドの横山剣が愛す昭和の120曲を語るエッセイ。いかにも納得! な名曲もあれば、南沙織や麻丘めぐみといったアイドル曲や、ガロや風、オフコースなどのフォークソングも。橋幸夫、村井邦彦、岩崎宏美、浅野ゆう子との特別対談も収録。美空ひばり「お祭りマンボ」で始まる120曲のラストは中森明菜「難破船」。くぅー(泣)。
だらしなオタヲタ見聞録

20年以上、毎日300~500歩程度しか歩いていなかった超絶インドアだらしな生活だったのに、突然フッ軽オタ道を走り出したこの数年。もう「いつかそのうち」なんて言ってられん! 見たいものは見ておきたい! 寄る年波を乗り越えて、進め! ヨタヨタオタヲタ見聞録。
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