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だらしなオタヲタ見聞録

2025.02.01 公開 ポスト

ドラマを観たこともないのに新年早々『グランメゾン・パリ』に行ってきた!藤田香織

てっきりフジテレビだと思ってたらTBSだった

いわゆるコロナ禍へ突入する前に、木村拓哉主演で『グランメゾン・東京』なるドラマがやっていたことは知ってました。でもって、わりと良い評判も耳にしていました。
いわく。
思ってたより面白い!
引きが強くてうっかり見たらはまっちゃった。
キムタク、20年ぶりにいいじゃんって思った。
などなど。

微妙に失礼みがあるようにも感じられるやもしれませんが、ドラマの感想として、これは明らかに「褒められている」部類だと思われます。そもそもドラマを見ない民の耳に良い評判が聞こえてくるだけでもレアなわけで。

でも、何しろ私はそのドラマを見ない民なので、いつものように聞き流すだけで、特に関心はなかったのです。

が、世の流れとは恐ろしいもので、去年この人気ドラマが「待望の映画化!」されることになりました! というニュースが流れたとき、そこには新キャストとして<正門良規(Aぇ! group)>と推しの名が。
しかも公開されたビジュアルは、なにやら爆発ヘアで、面白過ぎた&気になり過ぎた。これは観なければ……! とまんまと釣られて踊らされ、ドラマをまったく観ていないにもかかわらず、公開された『グランメゾン・パリ』を新年早々、観てきました。
結果、映画診てからSPドラマ(全録されていた)とレギュラー版(Netflixでやってた)を全て後追いすることに。

まずは、いつもながら予備知識としては出演者の役柄と、物語の大筋をざっとネットで拾った程度での「観ながら」感想から。

★え? ちょっとなに? これTBSのドラマだったの? 勝手にフジだと思ってた! 思い込み怖い……!!
★いやー尾花夏樹も怖い。偉そう。強気すぎ。実はいい人パターンなんだろうけどちょっと嫌。
★スーシェフ? スーシェフ? 副料理長、セカンドみたいな?
★凄いロケだなあ。お金かかってるなあ。予算あるんだなあ。料理美味しそうだなしかし。
★え? この天才パティシエ役の人かっこいい。なんだろう顔っていうより佇まいがかっこいい! 目がいっちゃう。彼がオク・テギョン? なるほどそりゃ人気ありそうだわー。
★しかも演技うま! この表情、すごっ!(ユアンが尾花の料理を始めて食べたときの回想シーン。美味しくて悔しくて悔しいけど美味しい表情が抜群に良かった)。
★小暮キター! 正門くん! 爆発ヘア似合ってる! 全然OK。これはこれで役者感あっていい!
★正門くんの髪型だけじゃなくて、ほんとに爆発するんかーい! すごい火薬! マジでめちゃお金かかってるなー。
★チーズ! チーズチーズ!
★はー、美味しそう。ラングスティーヌ“ブラッディ―・メアリー”食べたすぎる!
★やっぱりそうですよね。そうきますよね、改心で会心! みたいな。
少年ジャンプの友情・努力・勝利にプラスして挫折・葛藤・再生で中年ジャンプですな!

バブル世代にぶっ刺さるこれは確かに中年ジャンプ!

都心ではないので202席でも大きいスクリーン。3割くらいの入りだったんだけど、同じ列に4人も人がいたのは初めてでビックリ。

個人的に、鈴木京香と沢村一樹は同い年ラインで、彼らがデビューしたころから知っているので、なんというか余計に中年ジャンプ感があって、そこに思いがけないツボを押されてしまった。

平日の昼間に観たからなのか、観客の年齢層がわりと高く、ほぼほぼ自分と同年代以上に見えたのが上映前はちょっと意外だったんだけど、観終わったら、なるほど中高年人気も納得。

だって、これ、もうバブル世代的胸アツ要素がてんこ盛りなんですよ。
捨てきれない野望、割り切れぬ理不尽。華やかな表舞台とその舞台裏。過去の栄光と新たな挫折。努力だけでは超えられない才能の壁。共に苦難を乗り越えようとして激突し、痛みを分け合って、背負い背負われ、傷だらけになって足掻いても、必死でカッコつけてスンって顔しとく、みたいな姿に己の30数年くらい前が重なってぐさぐさ刺さっちゃうんじゃないかと。

あと、なんといってもフランス料理なのが大きい。
バブル世代的はこれについて、フランス料理なー、と遠い目になる記憶の1つや2つを抱えていがち。
あの頃、クリスマスや誕生日にフレンチって、今よりは身近なものだった。ちょっと背伸びして、緊張しつつも店を選んだり洋服を選んだりして、小洒落た場所を楽しむくらいの余裕はあって、それは間違いなく「幸せな時間」だったわけですよ。

だけど、それはやっぱり「贅沢」でもあって、バブルが弾けて世知辛い世の中に突入した20代後半以降、私はフランス料理を食べに行った記憶がない。オタ活して飲み食いする時間やお金は捻り出せても、緊張やお洒落やプチ贅沢を楽しむ余裕はなくなっちゃった50代を生きてる。あとお寿司に払う2万円とフレンチに払う2万円なら、同じ金額でもフレンチのほうが敷居が高い、腰が重くなる、みたいなとこもあって、ますます足が遠ざかっちゃって。なんならもうこのままフランス料理なんて2度と食べることないかもなーとまで思ってた。

それが、こんな中年ジャンプを見せられると、もう切ないやら懐かしいやら羨ましいやらこんがらがった感情が胸にこみ上げてきちゃって、「……いや良かったわー」ってなるのでは。
映画終わって出口に向かってたとき、私より少し年上そうな男女が、「久しぶりに今度フレンチ食べに行く?」って話をしてて、映画の力を感じたり。私も今年の目標はフランス料理を食べに行く、にしたい!

というわけで、帰宅後、ネトフリで連ドラ&スペシャル版を一気見しました。

「二人で一緒に世界一のグランメゾン作るってのはどう?」
くぅーーーー!
「俺が必ずあんたに星をとらせてやるよ」
はぁぁぁぁーーー!!!
「料理っていうのはさ、みんな自分に才能があるかどうかなんかわかんないとこから始まる」
「でも努力して腕を上げれば上げるほど自分の才能ってやつに気付いちゃうんだけどね」
ほんとそれな! 料理人だけじゃないわー(泣)。

あとドラマって見始めると時間がとけることを久しぶりに実感しました。
昼から夜中の3時まで見ちゃったよ!

追記:グランメゾン東京のコミだった芦田公一=寛一郎が、佐藤浩市の息子で三國連太郎の孫なとこを学習。

本日の映画の友はフライドポテトとナゲット。美味しいよ?美味しかったけどさ、あの映画観ながら食べるのはちょっと違った!感あった。

 

関連書籍

杉江松恋/藤田香織『東海道でしょう!』

かたや体重0.1t、こなた日常歩数400歩。出不精で不健康な書評家2人が、なぜか東海道五十三次を歩くことに。吉原宿では猛烈な暴風雨に全身ずぶ濡れ、舞坂宿の真夏の国道では暑さに意識朦朧、凍える鈴鹿峠で雪に見舞われ、濃霧の箱根峠であわや遭難!? 日本橋~三条大橋までの492kmを1年半かけ全17回で踏破した、汗と笑いと涙の道中記。

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だらしなオタヲタ見聞録

20年以上、毎日300~500歩程度しか歩いていなかった超絶インドアだらしな生活だったのに、突然フッ軽オタ道を走り出したこの数年。もう「いつかそのうち」なんて言ってられん! 見たいものは見ておきたい! 寄る年波を乗り越えて、進め! ヨタヨタオタヲタ見聞録。

以前の連載『結局だらしな日記』はこちら

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藤田香織

1968年三重県生まれ。書評家。著書に『だらしな日記 食事と読書と体脂肪の因果関係を考察する』『やっぱりだらしな日記+だらしなマンション購入記』『ホンのお楽しみ』。近著は書評家の杉江松恋氏と1年半かけて東海道を踏破した汗と涙の記録(!?)『東海道でしょう』。

Twitter: @daranekos
Instagram: @dalanekos

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