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いつまで自分でせいいっぱい?

2026.01.19 公開 ポスト

#95

シル活に学ぶ佐津川愛美

昨年は子役ちゃんから、立て続けにシールをもらう日々だった。現場で会うたびに、誇らしげだったり、照れくさそうにだったり、どんどん差し出される小さなシール。姪っ子もシール帳をつくってママと交換しているという。

それをきっかけに、いまブームだという「シル活」という言葉を知った。シールを集める活動。なんだか可愛らしい響きだ。子どものころシール帳つくっていたよ。懐かしい。

シール帳を持っていたら、子役ちゃんともっと早く仲良くなれるのかなぁ。なんて考えながら、じゃあつくってみようかなぁと思っていた。

 

そんな気持ちを持っていたところ、6年ぶりに行った忘年会で、久々に会ったプロデューサーをしている友人に話すと、「私も次の現場、子役ちゃんがいて、まったく同じこと考えてた!」と、驚くほどすぐに返事がきた。

そこからは早かった。年始に一緒にシールを買いに行く約束をしたにもかかわらず、毎日のように「今日の成果」をお互いに報告し合った。今日はこれを見つけた、このお店がいいらしい、ここは売り切れだった。そんなやり取りが楽しくて、面白かった。

私は東京から少し離れたショッピングセンターに1人で居た。

東京ではほとんど見つけられなかった。輝いてみえるシールたち。普通にテンション上がった。

シール売り場の前で、どれにしようかと眺めていると、小学校低学年くらいの女の子が私の横にやってきた。お父さんが「ほら、これ!」と、彼女の好きそうなものを見つけて連れてきたようだった。

女の子は、ぱぁっと一瞬で表情が明るくなり、

「え、え、え、待って!待って!待って!超かわいい!超かわいい!やばい!!可愛い可愛い可愛い!!」

息継ぎも忘れたみたいに、全身で喜びを表現していた。

その姿を見て、私は思った。

そうだよね、可愛いから欲しいんだよね。

当たり前のことなのに、なぜか忘れていた大切な感覚を、思い出させてもらった。目が覚めた感覚だった。

どれなら子役ちゃんが喜んでくれるか、現場で話題になるか。そんなことを考えて、色んなキャラクターものを選んでいた。それはそれで、間違ってはいないけれど。自分が可愛いと思うものも探そう。必ずひとつは、可愛いと私が思ったものを買って帰ろう。

そこで、誓った。

誰かのために選ぶだけじゃなくて、私自身が心から「かわいい」と思うものをちゃんと選ぶこと、ちゃんと選ぶ訓練なのだ。

すみからすみまでよーく見て、1番かわいいと思った、キラッキラシールを買った。

【楽】私がかわいいと思って買ったキラキラシール。姪っ子がいつの間にか貼っていた。かわいい!今度は私も貼る楽しみもしてみたい。

 年明け、いよいよ2人で原宿へ向かった。

私たちが子どもの頃に夢中になっていたキャラクターやブランドのリバイバルが、街中にあふれていた。懐かしさと新しさが入り混じった空気に、ガチャポンの前で必要以上にテンションがあがってしまう。どうやら「平成女児ブーム」というらしい。まんまとハマって興奮した。

友人はシールが色々と売っている小さなお店に「どうしても並びたい」と言っていた。人が多すぎて、並ぶことが打ち止めになっていながらも、何度もチャレンジして、ついに並ぶ資格を手に入れた。もはやディズニーランド。

欲しかったものはすでにどこでも売り切れで、手に入らないと分かっていたのに、それでも列に加わるという。

「たくさんある中から選びたいんだよ」

その一言に、はっとした。

なるほど、と思った。私にはなかった発想だ。

2時間一緒に列に並んだ。その2時間は、ただの待ち時間じゃなかった。選ぶための時間で、迷うための時間で、わくわくや嬉しさを倍増させる時間で。ちゃんと意味のある時間だった。

普段は列には絶対並ばない。混んでいたら絶対入らない。

それなのに、欲しいもののために並ぶという行為が、こんなにも新鮮で、貴重で、少し嬉しいなんて。おしゃべりしていたら、時間は全く苦じゃなかった。

並びながら、友人のシール帳を見せてもらった。リバイバルじゃなくて、リアル平成のもはやレアなシールがいっぱいで、またまた興奮した。今度はシール交換をするためにちゃんと会おうと約束した。やっとシールコーナーに辿り着くと、謎の高揚感だった。友人はかなりの枚数買っていた。私は厳選しつつ、ちゃんと、かわいいと思ったものを数枚選んだ。

私たちの前に並んでいた男性は、2時間並んで、クロミちゃんのシール2つだけ買っていた。娘さんのために、1人で2時間、喜んで欲しく並んでいたのかなぁ。

後ろのファミリーは、幼稚園児くらいのお姉ちゃんと、少し話し出したくらいの妹ちゃん。パパは全ての荷物を持ち、無口気味。でも、表情は全くうんざりなんてしていない。こんなに小さな子たちと2時間並んでパパもママも大変だろうに、娘ちゃんの希望を叶えたくて並んでいた。

パパと娘ちゃん2人組も結構いた。みんな子どもの為に、喜ぶ顔が見たくて並んでいるんだよなぁ。行列ってなんて幸せな列なんだ!!嫌っていた行列さえも、かなりの幸せが詰まったものなのではないかと思えてきた。

シル活のおかげで、色んなことを学んでいる。このまま、かわいいやうれしいを思い出す訓練をしていこう。2026年は、超楽しく過ごせちゃうかもしれない。

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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。

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佐津川愛美

1988年8月20日生まれ、静岡県出身。女優。
Instagram http://instagram.com/aimi_satsukawa

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