
Tシャツが恐ろしく似合わない。いわゆる普通のTシャツが似合わない。若い頃、白Tシャツにデニムをさらっと着こなす大人を雑誌で見て、かっこいいなぁと思っていた。大人になったらこんなふうになれるのかと思っていたが、大人になってもちっとも似合う気配はない。
よく舞台やドラマの現場でスタッフTシャツをいただくけれど、私は似合わなすぎるので、大抵XLサイズにしてあえて大きめで着るか、首元をカットする、でしのいできた。
世の中には骨格というものによって、似合う服が違うらしい。いや、前からなんとなく耳にはしていたし、自分でもネットでセルフ診断をしたりしたことはあり、「骨格ウェーブ」という種類に分類されると思った。でも確信を持つことはできず、仲の良いメイクさんに聞いてみたところ、「うーんでも、この辺はストレートな気もするし、ウェーブと混ざってるんじゃない?」と言われた。もうそうなったら、お手上げです。ただでさえわからないのに、混ざったらもう余計にわかりません。ってな具合で。得意の放置をしてきた。
不思議なのは、私の仕事は色んな人を演じることなので、色んなカラー、色んなジャンルのお洋服を着てきた。おそらく、普通よりかはたくさんの機会があったはずだ。それなのに、私はいまだに自分に似合う服も、似合う色もわからないのだ。
いつもその役を表現するために着ているから、自分のことなんて考えない。そりゃそうだ。

もうすぐクランクインの作品の衣装合わせに行った。その作品の監督の過去作はどれも大好き。内容が面白いのはもちろん、役者さんたちはいつも魅力的。昨年末からお話をいただいていたので、ずーっと楽しみにしていた。久しぶりにご一緒出来ることが嬉しく、また、がっつりと撮影に関わらせてもらえるのは初めてなので監督の組に入るのを心待ちにしていた。
衣装合わせとなると、監督はお洋服が好きか、あまりファッションがわからないですなのかの2つにわかれる。僕はあまり詳しくないので、お任せしますという監督もいれば、細かくディティールまでこだわって意見を言ってくれる監督もいる。大抵は、女性監督のほうが意見をしっかり言ってくれることが多い。
で、その新しい作品の衣装合わせをしているときに、監督は「ご本人に似合ってるものがいいです」と言ってくれたのだ。私は衣装合わせで初めて聞く言葉だった。「役に合うもの」が前提であり、例えばお母さんっぽすぎる。お金持ちっぽすぎる。もっと休日感を出して。といった具合に、キャラクターとシチュエーションに合わせて選ぶから、「私に似合うもの」なんて衣装合わせでは考えたことがなかった。
監督は、本人に似合ってることが前提で、そこからキャラクターにも合っているものをみていた。目からウロコだった。だから、監督の作品はいつも、役者さんたちが魅力的なんだ。衣装だけでなく、きっと、他の部分にも監督のそういう感覚が活きているのだとおもう。
撮影がとてもとても楽しみだ。
今年の夏は、お気に入りのワンピースを毎日のように着ていた。夜洗濯すると朝には乾いている優秀ちゃんなこともあいまって。着心地と、気分が上がることが大事。たまたま出会ったここまでお気に入りのワンピースちゃんは稀で、毎日に繋がったのかもしれない。そろそろ秋服も考えなければ。お気に入りを着るかぁ。

衣装合あわせでは「自分に似合う」を考える機会となった。得意のリサーチを開始。骨格診断を再度セルフでやってみる。やっぱり、「骨格ウェーブ」だろう。ウェーブさんは、厚い生地、しっかりしているものが合わない。丈は短めがいいらしい。
ユニクロでミニTを試着してみる。な、なんか、スタイル良くみえる!これか、こういうことか!
Tシャツは似合わないと思っていたけど、かたちによっては似合わなくない!気に入った。
骨格とかパーソナルカラーとか気にしない、自分の好きなものを着る!という方もいらっしゃるだろうけど、自分の好きがわからない人間には、似合うがわかって、気分が上がったので、有り難い。
別のお店で薄いテロっとしたフレンチスリーブのTシャツが目に入った。昔の映画女優の写真がプリントされている。そういえば、同じお店で昔、オードリーヘップバーンの写真がプリントされている同じかたちのTシャツを買った。気に入って着たおした。これも着てみると、やっぱり悪くない。ウェーブさんには合うといわれている、薄い生地、フレンチスリーブというのが、合っているのだろうか。そして、私が好きな映画女優のプリント。このお店は、またお買い物に来よう。あぁ、こうやって、自分に合うブランドや好きなお店を知っていくのかもなぁと思った。以前書いたように、買い物が下手だからこそ、少しの革命だった。
そう考えると、「好きな映画館」の感覚と同じかもしれない。セレクトしている作品の好み、劇場の雰囲気、観やすいだったり、客層が落ち着くだったり。そういう感覚と同じだと思った瞬間、好きなお店を見つけていくことも、出来そうな気がしてきた。少しの革命。いや、大革命だ。
沢山買い揃えるわけではないからこそ、厳選して、お気に入りだけを買えた。大進歩!
次の撮影現場には、毎日自分で選んだお気に入りの服を着ていきます。当たり前の人も居るだろうけど、私にはすごいこと。
お洋服楽しめる人間になれるかしら。なれたらいいな。
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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。