1. Home
  2. 生き方
  3. いつまで自分でせいいっぱい?
  4. 佐々木さんに会いに行く

いつまで自分でせいいっぱい?

2025.07.04 公開 ポスト

#84

佐々木さんに会いに行く佐津川愛美

最近の主な仕事場となっている、とある収録スタジオ。
午前中に別の仕事があった為、数分しかない中、収録前にさくっと食べられる和食系のお店がないかと考えていた。ふと目に入った、お魚定食の看板。よく見ると、いわゆるチェーン居酒屋。ランチもやってますの文字。収録前はごはん一択のため、すかさず入店した。

 

「いらっしゃいませ〜‼︎お好きな席にどうぞ~!」
とても元気な声が聞こえた。
机の上にタブレットがあり、セルフでの注文方式。すぐさま本日のお魚定食を選び、仕事のメールを返しはじめる。しばらくすると、メガネをかけた女性が運んできてくれた。
「は〜い!今日のお魚はホッケですよ〜!とっても美味しいですよ〜」
ニッコニコで持ってきてくれた。単純に嬉しくなった。ついつい気になって、その女性を目で追いながらホッケを食べる。メールに集中していて気づかなかったけれど、フロアにはそのおばさましかいなかった。
新しいお客さんの誘導、お料理を運ぶのも、レジも、全て1人でこなしている。

サラリーマンチームの3人が食べ終わり、お会計をしに行った。そのおばさまは、3人の一人一人に声をかけていた。
なんてすてきなの。元気に、ニッコニコのスマイルでお仕事されていて、素敵。

私も食べ終わり、レジにむかった。
お会計を済ませている間に、その素敵なおばさまを見つめてしまった。やっぱり、ニッコニコのスマイル。
胸元の名札には「佐々木」と書かれていた。
素敵なおばさま。佐津川の佐と一緒の文字だわなんてどうでもいい事を考えていると、
「お肌がツルッツル!うん‼︎お綺麗ねぇ〜」と私に言ってくれた。不意打ちだった。
う、うれしい。普通に嬉しい。私は丁度、新しいファンデーションをしてきたのだ。8000円もするファンデーションを高い、高すぎる‼︎と思いながらも年齢的に良い化粧品に頼っていかなきゃになってきたなぁと清水買いをしたのだ。
佐々木さんに褒めてもらった。しかも、今日初めてつけたファンデーションのお陰かしらっと、物凄く嬉しかった。
「え、そうですか?ありがとうございます〜」
「だって本当だもん。本当にツルツル。綺麗だわ〜うふふ。また来てくださいね!」
「はい!また寄らせていただきます。ありがとうございました〜」

佐々木さんはすごい。ほんの数分で虜になってしまった。ほんの20分程度よ。スタジオに着くと、スタッフのみんなに佐々木さんについてプレゼンをし、みんなも行ってみて〜と普及活動をした。

【楽】素敵な街にきました!

数日後。
朝から定期的に通っている病院へ。アプリでタクシーを手配するも、どうも運転手さんとうまく噛み合わなかった。いくら考えても私は悪いことをしていないと思うのだけれど、待ち合わせするなり、怒り口調で文句を言われてしまった。今考えれば、運転手さんが到着時間に間に合わなかった言い訳をしていたように思える。
その時は本当によくわからなかったけれど、謝った。3回くらい謝ったのだが、運転手さんのイライラはおさまらなかったのか、ずっとぐちぐちと言われてしまったので、「申し訳ありませんでした」と丁寧にまた謝って耐えた。
俯瞰して考えたら、機嫌が良くなかったのかなぁとか思えるかもしれないけれど、連日のなかなかの激務に寝不足だし疲れが溜まっていたこともあり、余裕が持てず、どよーんな気持ちのまま2時間ほど過ごしてしまった。
いかんいかん。切り替えなくちゃと、お会計を待ちながら考えていると、佐々木さんが頭に浮かんだ。ニッコニコの佐々木さんが。

「そうだ!佐々木さんに会いに行こう!」

すぐさまタクシーに乗り込む。お店の住所を伝える。今度のタクシーの運転手さんは優しそうだ、よかったぁとホッとした。そして私は、佐々木さん今日もシフト入ってるかなぁ、会えるといいなぁ、と考える。行きのタクシーのモヤモヤは消え、ワクワクしていた。

2回目のお店。慣れたもんだと入っていく。
「いらっしゃいませ〜‼︎お好きな席にどうぞ~!」

佐々木さんだーーーー!佐々木さんの声だーーーーー!

心がほぐれる。
本日のお魚定食を注文する。
今日も佐々木さんが運んできてくれた。
「お待たせいたしました〜今日はサバですー!」やっぱりニッコニコだ。もう、午後からも頑張れます。ありがとうございます。もう十分です。

今日も佐々木さんは、お会計のたびに1人ずつと短い会話をしている。おそらく、毎回そうしているのだろう。

私もお会計をしにレジへ。
心の中で佐々木さんへの感謝を唱える。

お会計が終わり、お財布にカードをしまっていると
「わぁ‼︎ネイル素敵‼︎」
なんと今日も佐々木さんは胸キュンワードをくれた。
「え!嬉しい‼︎ありがとうございます‼︎」
ニッコニコで言い返す。
「うん!ほんっとに、キラッキラ‼︎素敵ですよ〜」

気に入っているネイルを褒めてもらって、嬉しくない人なんて居ないだろう。もう佐々木さんはすごい。佐々木さんはきっと、ランチにくるみんなを元気にしてくれてる。お客さん1人1人に声をかけ、楽しそうに働いている。もしあえて、努力してそうしてくれているのなら尊敬だし、もし本当に楽しめているなら、それもまた尊敬だ。

今日もスタジオに着くと、みんなに一連の話をした。
悲しい気持ちだったから、佐々木さんに会いに行ったんだ〜!と言う私にみんなは爆笑し、推し活やんと言われた。健全な推し活らしい。

人の良いところを探すのがうまい佐々木さん。これをみんなに出来るのは、才能だ。かっこいい!

佐々木さんは心を元気にしてくれる、
最近の私のヒーローなのだ。

【喜】だいすきなスイカの季節がきた!
スイカアイスハッピーハッピー‼︎

{ この記事をシェアする }

いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、リアルな日常を綴る。

バックナンバー

佐津川愛美

1988年8月20日生まれ、静岡県出身。女優。
Instagram http://instagram.com/aimi_satsukawa

幻冬舎plusでできること

  • 日々更新する多彩な連載が読める!

    日々更新する
    多彩な連載が読める!

  • 専用アプリなしで電子書籍が読める!

    専用アプリなしで
    電子書籍が読める!

  • おトクなポイントが貯まる・使える!

    おトクなポイントが
    貯まる・使える!

  • 会員限定イベントに参加できる!

    会員限定イベントに
    参加できる!

  • プレゼント抽選に応募できる!

    プレゼント抽選に
    応募できる!

無料!
会員登録はこちらから
無料会員特典について詳しくはこちら
PAGETOP