書店で本を買うのが好きだ。書店には、予期していなかった出会いがある。
「この作家の新作、面白そうだな」
「こんな新刊出てたんだ」
「この本全然知らなかったけど、買ってみようかな」
心を躍らせる出会いが、ゴロゴロ転がっている場所。日常のなかの非日常。それが書店。
しかし、ワクワクする場所であるはずの書店の数は、年々減少している。現在の書店数は、20年前に比べると約6割になっているという。さまざまな理由が考えられるが、書店の減少に歯止めがかかっていないのは事実だ。(参考)https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20231108hitokoto.html
私はいち小説家として出版業界の片隅で飯を食っているが、この状況には常々歯がゆさを感じていた。
もっと、「書店で本を買う」ことの楽しさを伝えられないだろうか? 微力ながら、個人としてなにかできることはないだろうか?
あれこれ考えるなかでヒントになったのは、「本の雑誌」の人気企画「図書カード3万円使い放題!」だ。このコーナーが私は大好きで、登場する作家ごとに買い物のカラーが違っていて面白い。私はお声がかかったことはないのだが、いつかやってみたいと前々から思っていた。
こんな企画ができたらなあ、と思うなかで、ふと思いついた。
――自分でやっちゃえばいいのか。
いろいろな書店で本を購入させてもらい、その様子をエッセイにする。それくらいなら、私個人の力でもできそうだ。たとえば1万円という縛りを設定して、お金のやりくりに悩みながらも本を買う姿を見せるのはどうだろう……。
いったん思いつくと、いてもたってもいられなかった。私はさっそく、この企画をどの書店さんにお願いするか、考えはじめた。
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文豪未満
デビューしてから4年経った2022年夏。私は10年勤めた会社を辞めて専業作家になっ(てしまっ)た。妻も子どももいる。死に物狂いで書き続けるしかない。
そんな一作家が、七転八倒の日々の中で(願わくば)成長していくさまをお届けできればと思う。
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