
昨年末撮影した映画「毒娘」内藤瑛亮監督作品。
最初にお声がけ頂いたのは、出演作が公開中止となり、自分にとってのベースにある「映画」というものとの向き合い方がわからなくなっているときだった。
中止になった作品については正直なんの未練もない。
ただ、自分自身を育ててくれた大切な映画という場から距離をとっていた。どんな気持ちで現場に立てばいいのかわからなくて。劇場で映画を観ることもなんだか心が窮屈で。
このままではダメだと思いつつ2ヶ月ほど経ったときだった。
普段なら、出演が決まると本読みか衣装合わせで作品のチームの方とはじめましてをする。
が、今回は出演を決める前に監督、プロデューサー陣とまずは話してみましょうということでお会いすることになった。初めての経験だった
お話を聞いてみようと思えたのは、内藤監督の過去作をいつも観ていて、内藤監督の作品に出演する役者の存在の仕方が羨ましいと毎回思っていたから。いつかご一緒したいと思っていた監督だったから。そして監督がぜひ佐津川さんにやってほしいと言ってますとお伝え聞いたから。なんとも有難い。
しかし、映画と距離を取っていた私には、なかなか重たい内容で、そういう作品と向き合う体力が自分にあるのかどうかわからなかった。
何はともあれ話してみましょうということで、事務所にてお会いした。
懸念していたのは、中学生くらいの年齢の子たちに内容的にセンセーショナルな描写を背負わせてしまう部分。そこのキャストさんへの心のフォローや、精神的にキツイ現場にならないような環境にしたかった。
何より、昔ながらの体質、怒鳴ったり人に対する接し方が雑になってしまう人を良しとしない環境づくりへの意識を持ってもらえるよう、監督にお話しさせてもらった。
たどたどしく話す私の何倍も上をいく信念を持ってくれていた内藤監督。当たり前にそういう気持ちを持ってくれていた。人への接し方、相手をしっかり捉える丁寧さ。
もともと、特別支援学校の先生をされていたということで、特に若い世代との向き合い方が得意なのかもしれないと感じた。
なんだか、とても、希望が持てた。この組でまた、映画づくりに参加しようと思わせてもらった。
私を大好きな「映画の現場」に引き戻す機会をくれた内藤組に感謝が止まらないのです。そんな作品が情報解禁になったので、思わず書いてしまいました。2024年春公開です。よろしくお願い致します。
この時の経験から、ドラマでも主演させてもらう作品のときには必ず先に監督とプロデューサー陣とお会いして、撮影現場が少しでも働きやすい環境になるよう、自分なりの心掛けを広めてもらいたいお願いをするようになった。
これは私が20年この仕事をやってきたから、耳を傾けてもらえるようになったことのひとつだと思う。
主演というものが苦手だという意識は昔から物凄く深く持っていた。本来、真ん中に立つよりも、脇でプレッシャーなく気楽に演じている方が性に合っている。しかし、主演となると、耳を傾けてもらえることが増えるのだと知った。話し合いの機会を与えてもらえるなんて。
もしかしたら今までだって、主役じゃなくたって、先に話してみたいと言ったらそういう機会をつくってくれる組もあったかもしれない。しかし、そんな手間のかかることを依頼するなんて、考えたこともなかった。
こっちの気持ちを伝えるなんて、そんな選択肢は持っていなかった。与えてもらった仕事に全力をつくす。その精神で育ってきたから、なんでもYESで取り組むのが普通の感覚になってしまっていたのかもしれない。デビュー当時はオーディションを沢山受けて。受かって役がもらえて、やっと役者として現場に立てる。その積み重ねな訳で。今では、オーディションではなくオファーを頂けるようになったけど、やっぱりその当時の感覚のまま、受け身前提になってしまっていたような気がする。
もちろん、ワガママを言いたい訳ではない。昔ながらの体質は、異常なことも多いと気付けるよう、映画もドラマも、とにかく働きやすい環境にしていきたいだけ。
怒鳴っている人、キツイ言い方をしている人が居たら声かけをする、心が健やかに働けるよう、楽しい現場にする。ロケ場所をお借りしている意識を持つ。通行人の方の邪魔にならないようにする。花壇に入らない。草花を大切にする。
このあたりは現場から出来ることかなと思う。
本当は長時間労働をしないとか、安全への配慮等、もっと改善したい部分はあるが、そこは予算があれば解決するとか、昔からのやり方がやりやすい世代もまだ多いとか、現場レベルよりは業界レベルでの規模感になってしまうので、もちろん、改善していけるようにという心持ちはあるが、まだまだ時間はかかると思う。
だから、自分が出来る一歩から。
みんなで1つの作品をつくるという意識、それぞれを尊重してフォローしあう意識。撮影現場は少しでも楽しく心が健やかであるに越したことはないと思っている。苦しんだ方が良い作品が生まれる気がする。この感覚を持っている人は多いと思う。しかし、その苦しみは、色んな種類があるはずだ。睡眠時間がないことを、武勇伝のようにするのは違うと思う。スタッフキャストが風通しよく、コミュニケーションを取れて、作品についてしっかりディスカッションしていける方がいいと思う。
内容で出演を決めるのが普通かもしれない。でも私は、みんなで一つの作品をつくるという部分が好きだから。内容よりまず先に、またご一緒したいと思う人たちとのご縁を大切にしてきたから。そういう出会いが出来る組を増やしていきたい。
観てくださる方には、現場の雰囲気なんて関係ないと思う。内容が、作品が、重要だと思う。
だから本当にただのいち俳優の戯言という感じで、ここまで読んでくださって有難いですが、どうぞ私の戯言は忘れてください。
気になる作品、好きな作品を選んで、よかったら映画館に映画を観にきてください!
映画館は誰でも受け入れてくれる、素敵な素敵な場所です。

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いつまで自分でせいいっぱい?

自分と向き合ったり向き合えなかったり、ここまで頑張って生きてきた。30歳を過ぎてだいぶ楽にはなったけど、いまだに自分との付き合い方に悩む日もある。なるべく自分に優しくと思い始めた、役者、独身、女、一人が好き、でも人も好きな、34歳のリアルな日常を綴る。