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プーチンの戦争

2023.07.22 公開 ポスト

意外ともろい「日米同盟」 もし廃棄されたら日本もウクライナのようになるのか?中川浩一

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって、まもなく1年半がたちます。いまだに終わりの見えない戦争の現状とこれからの展開、そして日本が向き合わざるをえないシビアな現実とは……。安倍晋三元総理の通訳をつとめた元外務省交渉官・中川浩一さんによる注目の新刊『プーチンの戦争』から内容の一部をご紹介します。

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日米同盟は決して盤石ではない

日本とアメリカは日米安全保障条約(日米安保条約)を締結し、軍事同盟を結んでいます。日米安保条約は、日本への攻撃はアメリカへの攻撃とみなし、米軍が日本防衛のために共同で敵と戦うという枠組み。日本を侵略しようとする国は、アメリカとの戦争を覚悟しなければなりません。

(写真:iStock.com/bee32)

その条約を遂行するために、北海道から沖縄まで、全国各地に130カ所の米軍基地が置かれていて(純粋な米軍専用基地は81カ所で、他は自衛隊と共用)、一国内における米軍基地の数と規模としては、世界最大です。

「米軍に基地のための土地を無償で提供しているから、日本有事のときは、米軍がともに戦ってくれるし、基地のある日本を米軍が見捨てるわけがない

もし、あなたがそう思っているなら、そして、日米同盟が盤石で未来永劫続くと信じ切っているなら、日米安保条約第10条を読むと驚くかもしれません。

「日米いずれか一方の意思により、1年間の予告で廃棄できる」

と記してあるからです。

 

国同士の関係も、人間関係と同じで、双方の信頼と努力が必要で、双方どちらかの信用や信頼を失ったら、日米同盟といえども破綻する仕組みです。

2019年6月26日、トランプ前大統領はG20大阪サミットの前のインタビューで、

「日本が攻撃されれば、アメリカは第3次世界大戦に参戦し、アメリカ国民の命をかけて日本を守る。いかなる犠牲をはらってもわれわれは戦う。だが、アメリカが攻撃されても、日本はわれわれを助ける必要がない。ソニー製のテレビで見るだけだ」

と述べました。

日本は憲法上、集団的自衛権つまり他国のために戦うことを自ら禁じているので、アメリカが攻撃を受けたとき、日本はアメリカのために戦えない。「片務的な同盟関係」といわれるゆえんです。

強固な日米同盟にも、もろさと落とし穴があるのです。

尖閣諸島を守るためにすべきこと

第5条には、アメリカの日本に対する防衛義務を定めており、日米安保条約の中核的な規定です。

この条文は、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「平和及び安全を危うくする共通の危険に対処するよう行動する」と規定しています。

ここで、重要な点は、「日本国の施政の下にある領域」と記されている点です。

(写真:iStock.com/BeeBright)

尖閣諸島はわが国固有の領土ですが、領海内に中国の海警局の艦船が頻繁に侵入を繰り返しています。事態がこれ以上常態化すると、「尖閣諸島は本当に日本の施政の下にあるのか」が国際的に問われかねません。

尖閣諸島は日本の領土である、と常に国際的にアピールすることが重要です。対する中国は、日本の主権を無視し「釣魚島群島(中国が使用している尖閣諸島の名称)は中国の領土である」と世界に向けて発信を続けています。

 

中国が尖閣諸島を自国の領土と宣言するのは、彼らなりの理由があるようです。

1992年、中国は「領海法」を制定して、尖閣諸島や台湾を含む7つの島々を一方的に自国領土として宣言し、2012年に「海洋強国」宣言を行いました。

この時点で、すでに中国は一方的に、日本の固有の領土・尖閣諸島を中国国内の領土に編入しているのです。

そして、中国は2009年、尖閣諸島も対象とする「島嶼保護法」を制定。

人民解放軍の兵士たちは「釣魚島群島を日本が不法占拠している」と信じ込んでいて、尖閣諸島を奪取するのは、兵士たちにとって当然の行為なのです。

台湾、日本有事で、中国軍が台湾とともに尖閣諸島を奪取しようと迫ってきたとき、海洋での日中間の戦闘が現実のものとなる可能性があります。

これこそが日本にとっての最大の危機で、日本政府は戦後初めて、戦死者を出す覚悟をもって、自衛隊に防衛出動を下令する事態となります。

 

そうならないためにも、政府は、領海に侵入した中国の海警局の艦船を追い払うことに加え、沖縄県石垣市が製作した「石垣市字登野城尖閣」と刻印した尖閣諸島の標柱を、魚釣島など5島に設置しなくてはなりません。また、自国の領土であることを示すためには、何より公務員を島に常駐させることが必要です。

しかし、それができない日本は、総理大臣が新しく就任するたびに毎回、「尖閣諸島は日本の施政の下にある領域」である旨をアメリカの大統領に直接伝えて、米軍の尖閣諸島防衛を約束させなくてはならないのです。

まるで、アメリカの属国であるかのように、アメリカの大統領から「尖閣諸島は有事の際、米軍が守る」とのお墨付きをもらって初めて、日本国の総理大臣として承認されたかのごとく、その後の記者会見で嬉々としてその承認された旨を述べ、日本国民を“安心”させるというセレモニーが毎回繰り返されます。

その様子は、悲哀を通り越して、屈辱的ですらあります。

関連書籍

中川浩一『プーチンの戦争』

日米同盟があるので大丈夫……などと思っていませんか。 その理屈が通らないのは、ウクライナを見ると明らかです。 私たち一人一人が、その現実に目を背けず、向き合うことでしか、この危機を乗り越える道はありません。

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プーチンの戦争

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって、まもなく1年半がたちます。いまだに終わりの見えない戦争の現状とこれからの展開、そして日本が向き合わざるをえないシビアな現実とは……。安倍晋三元総理の通訳をつとめた元外務省交渉官・中川浩一さんによる注目の新刊『プーチンの戦争』から内容の一部をご紹介します。

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中川浩一

1969年、京都府生まれ。慶應義塾大学卒業後、1994年外務省入省。1995年~1998年、エジプトでアラビア語研修。1998年~2001年、在イスラエル日本大使館、対パレスチナ日本政府代表事務所(ガザ)、アラファトPLO議長の通訳を務める。2001年~2004年、条約局国際協定課、2004年~2008年、中東アフリカ局中東第2課、在イラク日本大使館、2001年~2008年、天皇陛下、総理大臣のアラビア語通訳官(小泉総理、安倍総理〈第1次〉)。2008年~2011年、在アメリカ合衆国日本大使館、2012年~2015年、在エジプト日本大使館、総合外交政策局政策企画室首席事務官、大臣官房報道課首席事務官、地球規模課題審議官組織地球規模課題分野別交渉官を経て2020年7月、外務省退職。2020年8月から国内シンクタンク主席研究員、ビジネスコンサルタント。著書に『総理通訳の外国語勉強法』(講談社)。

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