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時をかける老女

2023.04.28 公開 ポスト

#51

ついに迷子事件が起きた中川右介

2022年2月1日 火曜日

〈介護463日〉

デイサービスへ。

11時過ぎまで執筆。都心での試写会へ。情報解禁日が先なので、何を見たかも書けない。

16時過ぎに帰宅。母は16時40分に戻ってくる。

テレビは石原慎太郎が亡くなったとのニュース。「あら、慎太郎、死んじゃったんだって」「知ってるの」「知ってるわよ。私より若いはずよ」「89だって」「私は92」

一応は関心があるらしく、じっと見ている。画面が最近の慎太郎になると、「あら、こんなお爺さんになっちゃって」

話題が他のものになると、すぐに忘れる。入浴はせず18時半に就寝。

2月2日 水曜日

〈介護464日〉

ついに、迷子事件が起きた。

今日はデイサービスが休みなので、三鷹のメモリークリニックへ連れていき、昼になったので、駅近くのビルの4階にある三崎港で寿司のランチ。

食べ終わり、レジで会計が終わり、ふと見たら、母がいない。フロアをざっと見たが、いない。店の人に頼み、女子トイレも調べてもらったがいない。

館内放送を頼んでも、耳が遠いので聴こえないだろう。ほっとけば、自分で交番へ行くだろうか。そうすれば、私の携帯の番号を書いた紙を持っているはずなので、連絡がくるか。だがそれを待っているといつになるか分からない。

(写真:iStock.com/SiberianArt)

15時までの約束の原稿があり、帰ったらすぐに書くはずなのに、とあれこれ考える。

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時をかける老女

91歳の母親と、33年ぶりに一つ屋根の下で暮らすことになった。この日記は、介護殺人予防のために書き始めたものである。

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中川右介

一九六〇年東京都生まれ。編集者・作家。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務の後、アルファベータを設立し、音楽家や文学者の評伝や写真集を編集・出版(二〇一四年まで)。クラシック音楽、歌舞伎、映画、歌謡曲、マンガ、政治、経済の分野で、主に人物の評伝を執筆。膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、データと物語を融合させるスタイルで人気を博している。『プロ野球「経営」全史』(日本実業出版社)、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『国家と音楽家』(集英社文庫)、『悪の出世学』(幻冬舎新書)など著書多数。

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