
前回の『お客さんは久しぶり?』、「センパイが変わってしまって悲しい」との言葉にしゅんとしていた私。たくさんの反響をいただきました。同じような経験をされた方、経験者のアドバイスに救われたという方。「経験がない人には老犬の魅力は理解できないのでは?」という方も。
じくじたる思いに駆られたり誰かの言葉に助けられたり、ペットとの暮らしの中でみんなそれぞれの切なさを抱え、いのちと向き合っているんですよね。励まされました。感想やご意見をくださったみなさん、ありがとうございました。
そんな折、今年もセンパイコウハイカレンダー発売の季節となりました。13年前にアートプリントジャパンという印刷会社から声がかかり、それをきっかけにはじめて制作したカレンダー。おかげさまで好評をいただき、少しずつカタチを変えながらも細々と続けてくることができました。北海道から沖縄、海外からも毎年リピートしてくださる方がいて、本当にありがたいことです。
自身で宛名を書くときには、注文リストを受け取ったらお名前をしみじみ眺めます。覚えのある名前があると「お元気かな」「あ、この方引っ越したのかな」。申し込み者とお届け先が違うと「娘から母へのプレゼント?」などと想像し、歯科医院からの注文には「待合室にでも飾ってくださっているのかな」なんて。
江別ではもうそろそろ雪? 今、人吉市の日暮れは何時頃? 被災した石巻の風景、今はどんなふうになっているんだろう……、発送作業を手伝いながら空想旅行をしています。知らなかった地名にもだいぶ馴染みが増えてきました。
「センパイがおばあちゃんになりすぎて、やっと生きているみたいで見るのがつらい」カレンダーを叔母に送ったらそう言われ、またどよんとしてしまいました。やっぱりそう思うんかーーーい。
リビングやキッチン、自分の部屋など身近かな場所にかけて、毎日のように見るカレンダー、やっぱりもっと明るく軽やかな気分になる写真がいいのかな。そりゃそうか。だとしたらごめんね。
凹みかけた気持ちを立て直し、魔法の言葉を声に出して言いました。「かわいさは日々積もる。かわいいけれどかわいそうじゃないよ!」
小心者の私、直接叔母に言えなくて葉書を出しました。「センパイは今日も一生懸命生きてます。犬を飼うということは、楽しい、かわいいばかりではないことセンパイを通してたくさんの人に知ってもらいたいと思っているの。人も犬も若さが消えてからが本番だよね! いつもありがとうございます」
2匹のカレンダーはコウハイがやって来た次の年からで今年で11年。当時は、またピカピカに元気だったセンパイと子猫の面影を残したコウハイの、(たぶん)誰が見ても「かわいい」と感じてもらえるような写真が何枚もあって、その中からどれを載せるか頭を悩ませていました。今思えば、しあわせな悩みでした。
年月を重ね、数年前からは身近な人からも「センパイも年を取ったわねぇ……」なんて感想も聞こえるようになりました。それは当然のこと。写真からはコウハイとの関係性も滲み、遠い親戚みたいな気持ちでその変化と滋味も含めて味わっていただだけたらと作り続けています。
叔母に書いた「センパイ通して、ペットを飼うこと、どうぶつと暮らすということは楽しい、かわいいばかりではないということを感じてほしい」というのもほんとうの気持ち。その覚悟を持ってどうぶつと暮らすことをはじめれば「引っ越すから」「病気になったから」「年を取ったから」などという理由で遺棄することがなくなると思うのです。ただ「かわいい」だけをペットに求めるのならば、自分好みのぬいぐるみと暮らせばいい思う。
先日、センパイは久しぶりに動物病院を受診しました。血液検査の結果、貧血気味だったので鉄分補給の注射と皮下点滴を。問診中に「おしっこの量が増え、水分摂取も多くなった気がします」と伝えると、「それは腎臓の具合が進んでいる症状です」と先生。私もそんな気がしていました。
が、検査の結果は前回よりも改善されていて「ソフトランディングというよりソフトクルージングですね!」と笑い合いました。そして「しっかり様子を見ながら安心して年越しができるようにしましょうね」。来年のことを言ってももう鬼も笑わない時期になってきました。
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