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礼はいらないよ

2022.05.21 更新 ツイート

イーロン・マスクに「日本消滅」と言われた国は「シン・ニッポン」“Always3丁目の夕日”国家で行こう ダースレイダー

(写真:iStock.com/gyro)

円安はどこまで続くのか? 岸田総理は「インヴェスト・イン・岸田!(岸田へ投資を!)」と珍しく大見栄を切ったが、同時にイーロン・マスクからは日本消滅を突きつけられる。

 

投資先が消滅しちゃ敵わねえ! とざわめく人もいれば、いやいや日本は良くやってるのだ! とあらためて強く出る人もいる。

外形的にはすでに30年経済成長しておらず、労働生産性も実質賃金も上がらず、国際競争力は落ちる一方。少子化は止まらず、貧困は広がる。おっと、それくらいにしてほしい。そんなに悪く言うことはないだろう? 

ただ、本気で国家百年の計を見据えたインヴェスト、投資先は考えた方が良いのでは? どこかに良いところはあるだろう。次のBTSは? それこそ次のイーロン・マスクやジェフ・ベゾスは? 次のクレイジーリッチなエイジアンは? 次の、次の、次の……えっと順番待ちだとして今何番目だろう。先頭にいて自分の後ろに続いていたはずの行列もいつの間にか前にずらりだ。

そこで周りを見てみるとシン・ゴジラ、シン・ウルトラマンにシン・仮面ライダーだ。こうしたコンテンツはそっちの行列に並ぶのはやめようと誘ってくる。いや、マーヴェルだってDCだって昔のコンテンツを新しく見せてるじゃないか! そう。ただ、そうしたクリエイターの挑戦とは別のムードが漂ってはいないか? 

こっちにおいでよ、こっちはシン・ニッポンだよ。

僕はいろんなところで言うようにしていることがある。日本の未来は「Always3丁目の夕日」国家で行くしかない、と。

概念的な大枠の話だけで進めるがこれは昭和の真空パックだ。今、政治や社会、文化に至る言論空間は、何を言っても敵味方に分かれての罵倒合戦だ。これは綿野恵太氏による道徳部族の概念で見ると、だいぶわかりやすくなる。それぞれの道徳規範に基づいて部族化した集団が自分達の道徳に抵触する相手と罵倒合戦を続ける。SNSがそれをさらにブーストさせている。

こうした道徳部族たちが合意できるプラットフォームを新たに構築するよりも、かつて合意できていた(かろうじて幻想も込みだとしても)プラットフォームに戻る方が現実的ではないか? 

それが「古き良き昭和」の景色だ。「あの頃は良かったよ」なんてセリフは下手したら平成生まれの人にすら共通の記憶として埋め込まれている。映画「Always3丁目の夕日」の景色であり、「こち亀」の両津勘吉の少年時代であり、ゴジラ、ウルトラマン、初期の仮面ライダー、ドラえもん、サザエさんである。日本はこうした景色を保全することに全額インヴェストする方が良いのではないか?

全国各地に特区として昭和エリアを指定し、そこに現存する昭和的なもの及びアーカイブに基づいて再設計された昭和をデザインする。こうしたガワを維持、保全するための技術を開発する。運営には再生可能エネルギーを充てるのも良い。ただし特区内はWi-Fiはなく、例えばピンクの電話や掲示板が連絡手段だ。服装も当時のデザインのものをドレスコードにして区内でも販売。車や電車、バスのデザインも戻す。エネルギー問題などへの配慮からガワだけのものと実際に使用するものが混在することにはなるが生活実感としては”昭和”だ。商店街では揚げたてのコロッケや新鮮な魚を買って家に戻ればブラウン管型のテレビで”当時”の番組を観る。時間軸の設定も特区の1年目を昭和30年に設定、実時間で25年進み、昭和55年になったらまた昭和30年に戻る。

昨今話題のカジノも賛否はさておき、そもそも外資系にお金を流すのではなく、「仁義なき戦い」で松永と大友が対峙したような”賭場”を作ればよい。こうした特区が海外からのインバウンドを呼ぶ最大の売り物になる。Youは昭和を体験しに来たんだね? もちろん大麻は違法だよ。

実はこうした試みはすでに劇場版クレヨンしんちゃんの「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」で描かれている。これは2001年の作品でしんちゃんたちの活躍でオトナ帝国は失敗に終わる。でもそれから20年経った今、果たして同じ結末が現実的だろうか? 

敢えて肯定的に考えれば大阪万博だ、札幌五輪だと新しいイベントのフリをして何も新しいものが作れない絶望を感じ続けるよりも最初から新しい行列を離れて”永久に変わらぬ日常”に閉じこもる。特区として作ったはずが気づけば全国的に広がる昭和の真空パック、シン・ニッポン。アメリカでは赤いキャップの男が似たようなことを叫んでいた。

でも、日本はこの点では”先進国”だ。率先して老人の郷愁をエンタメにしようではありませんか! どんどん閉ざして籠もっていこう。そのうち海外に行くなんて値段が高すぎて出来なくなるんだし。

だいぶ後ろ向きじゃないかって? そりゃそうだ、前にはもう何も残ってないんだから。

関連書籍

ダースレイダー『武器としてのヒップホップ』

ヒップホップは逆転現象だ。病、貧困、劣等感……。パワーの絶対値だけを力に変える! 自らも脳梗塞、余命5年の宣告をヒップホップによって救われた、博学の現役ラッパーが鮮やかに紐解く、その哲学、使い道。/構造の外に出ろ! それしか選択肢がないと思うから構造が続く。 ならば別の選択肢を思い付け。 「言葉を演奏する」という途方もない選択肢に気付いたヒップホップは「外の選択肢」を示し続ける。 まさに社会のハッキング。 現役ラッパーがアジテートする! ――宮台真司(社会学者) / 混乱こそ当たり前の世の中で「お前は誰だ?」に答えるために"新しい動き"を身につける。 ――植本一子(写真家) / あるものを使い倒せ。 楽器がないなら武器を取れ。進歩と踊る足を止めない為に。 イズムの<差異>より、同じ世界の<裏表>を繋ぐリズムを感じろ。 ――荘子it (Dos Monos) / この本を読み、全ては表裏一体だと気付いた私は向かう"確かな未知へ"。 ――なみちえ(ラッパー) / ヒップホップの教科書はいっぱいある。 でもヒップホップ精神(スピリット)の教科書はこの一冊でいい。 ――都築響一(編集者)

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礼はいらないよ

You are welcome.礼はいらないよ。この寛容さこそ、今求められる精神だ。パリ生まれ、東大中退、脳梗塞の合併症で失明。眼帯のラッパー、ダースレイダーが思考し、試行する、分断を超える作法。

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ダースレイダー ラッパー・トラックメイカー

1977年4⽉11⽇パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、浪⼈の時期に⽬覚めたラップ活動に傾倒し中退。2000年にMICADELICのメンバーとして本格デビューを果たし、注⽬を集める。⾃⾝のMCバトルの⼤会主催や講演の他に、⽇本のヒップホップでは初となるアーティスト主導のインディーズ・レーベルDa.Me.Recordsの設⽴など、若⼿ラッパーの育成にも尽⼒する。2010年6⽉、イベントのMCの間に脳梗塞で倒れ、さらに合併症で左⽬を失明するも、その後は眼帯をトレードマークに復帰。現在はThe Bassonsのボーカルの他、司会業や執筆業と様々な分野で活躍。著書に『『ダースレイダー自伝NO拘束』がある。

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