
「カプリコ」をかじったときのあの食感を人はどのように表現するのか。
カフカフ
カルカル
モカモカ
ガコガコ
オノマトペ大好きジャパンにおいても、アレの表現は一筋縄ではいかぬだろう。個人的には「カ」は入れたい。サクサクの「サ」ではないんやよな、なのである。
子供時代のわたしにとってカプリコは謎なやつだった。
見た目はアイス、でもお菓子。お菓子っていうかチョコレート?
形状から鑑みて冷凍庫に入れてみたこともあった。凍らせればアイスになるんじゃないかと思ったのだがカプリコは微動だにしなかった。
カプリコには芸術性もあった。前歯だけで作るカプリコ彫刻。ガジガジ削りオリジナルの形を目指した。母に「やめなさい」と呆れられるまでがカプリコ派の芸術だった。
カプリコ。
久しぶりに食べたくなってコンビニへ。何年ぶりだろう? いや何十年ぶりか?
一軒目のコンビニ。ない。
二軒目のコンビニ。ない。
わたしの心は固まった。あるまで帰れま10である。
三軒目。あった。いちご味。
わたしのイメージではカプリコは陳列棚にぶら下げられているお菓子であったが、コンビニのカプリコは棚に寝かされていた。
家に帰ってさっそく紙をはがす。子供の頃は大きなお菓子と思っていたが、大人の手ににはそれほどでもなく、
「カプリコよ 我は大人に なりにけり」
脳内で会話しつつ、いざカプリコ。
めくるめく不思議な食感。おいしくて翌日も買って食べた。
そしてわかったことがある。カプリコを買ったあとの帰り道はなんだかちょっと幸せで、口の中がすでにカフカフ、カルカル、モカモカ、ガコガコなのだった。
うかうか手帖

ハレの日も、そうじゃない日も。
イラストレーターの益田ミリさんが、何気ない日常の中にささやかな幸せや発見を見つけて綴る「うかうか手帖」。
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