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時をかける老女

2021.11.28 更新 ツイート

#17

「あなたもかわいそうね。こんなバカになった母親の面倒をみて。本当にごめんなさいね」 中川右介

91歳の母の介護生活をスタートさせてから、2ヵ月があっという間に過ぎた。会話のくり返しも慣れてはきたが、深くは考えないようにする。デイサービスがない日、近所の特別養護老人ホームでショートステイの面接があり、母と出かけた。

(写真:iStock.com/Svetlana Shamshurina)

 

1月10日 日曜日

<介護76日>

テレビで緊急事態だとずっと言っているので、「外へ出ない方がいい」とは分かっている。

そのせいか、冒険や探検はなく、午前は部屋にいる。午後は庭で枯葉の掃除をしてくれる。

だがそれも終わり、アルバムを見る。

1時間ほどして、「笑わないで聞いてほしいんだけど」と、深刻そうに、「わたし、ここへ来る前のことが、何も思い出せないのよ」「前からだよ」「そうなのね。あなたがそれを知っているのなら、いいわ」

あまり深刻には考えないようにしよう。テレビをなんとなく見てたら、木村拓哉の日産のコマーシャル。「あ、この人、知ってる」名前は思い出せないが、顔は知っていると言う。

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※毎月13日、28日更新

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時をかける老女

91歳の母親と、33年ぶりに一つ屋根の下で暮らすことになった。この日記は、介護殺人予防のために書き始めたものである。

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中川右介

1960年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部文芸科卒業。2014年まで出版社アルファベータ代表取締役編集長。映画、歌舞伎、クラシック音楽、歌謡曲、漫画についての本を多数執筆。最新刊に『アニメ大国建国紀1963-1973 テレビアニメを築いた先駆者たち』(イースト・プレス)。その他の主な著書に、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『カラヤンとフルトヴェングラー』『昭和45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』(幻冬舎新書)、『山口百恵』『松田聖子と中森明菜』(朝日文庫)、『大林宣彦の体験的仕事論』(PHP新書)等。

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