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減税が経済を動かす

2021.05.24 更新 ツイート

#7

トランプ大統領の最大の功績は「2対1ルール」 渡瀬裕哉

日本経済が低迷し、苦しい生活から抜け出せないのは、取られすぎの「税金」のせい。話題の『税金下げろ、規制をなくせ』(光文社新書)の中で、「大減税」と「規制廃止」で復活した米国経済を喝破した渡瀬裕哉氏による、日本政治と経済を立て直すための集中講座。『税金下げろ、規制をなくせ』第一章から試し読みをお届けします。

*   *   *

僕はアメリカ共和党保守派の人に次のように尋ねたことがあります。

「トランプ大統領のやったことで、今までで何が一番すごかった?」

すると、開口一番、こう答えました。

「減税だよね」

そして、もったいぶったように間を置いた後、勝ち誇ったように、こう続けました。

「ふふん。でも、お前、日本人だから知らないと思うんだけど、トランプ大統領の一番すごい功績は、2対1ルールなんだぜ」

 

「2対1ルール」を聞いたことがない人が多いと思うので、説明します。

これはトランプ大統領が就任直後に出した大統領令で、一言で言うと、「新しい規制を1つ作りたかったら、いらない規制を2つ廃止しろ」というルールです。つまり、トランプ大統領は、規制廃止をアメリカ各省庁の役人にやらせたのです。

役人というのは、細かいことを延々と議論する性質を持った人々です。

日本で、2017~18年にかけて「国家戦略特別区域制度」の名のもとに加計学園グループの岡山理科大学の獣医学部の新設が進められたことに関して、延々と、すったもんだの議論が繰り広げられていたことは記憶に新しいと思います。そもそも、獣医学部を1つ作るかどうかの何が「国家戦略」なのか、大いに疑問です。そして、このやり方をやっている限り、いたずらに時間と労力を浪費し、新しく出来上がる規制を、廃止する規制が上回ることは困難でしょう。

「規制を廃止しろ」と言うと、役人は、ひとつひとつの規制が、なぜ必要なのかを、とうとうと語り始めます。それは日本もアメリカも同じ。しかし、1つ新しい規制をどうしても作りたいのなら、いらない規制を2つ持ってこいと言うと、役人は、どれがいらないか白状するのです。

役人がなぜ規制を作りたがるか。それは自分の実績になり、出世や天下りにつながるからです。作成者は、その規制や関連法案に関するエキスパートですから、その分野の専門家として一目置かれることになります。

役人がなぜ規制を守ろうとするか。それは先輩の功績だからです。今現在、先輩がそれで飯を食っているかもしれませんし、まして規制を廃止して先輩の面子を潰すことなど怖くてできません。

そのため、放っておけば、役人は今ある規制を守りながら、新しい規制を作り出します。しかし、2対1ルールがあれば、自分の実績を作るために、過去のいらない規制廃止に取り組みます。それが役人です。たとえ先輩を裏切ることになっても、背に腹は替えられません。

そういう役人の習性をうまく利用して、2対1ルールを徹底させ、トランプ大統領は次々と規制を廃止・延期しました。

写真を見てください。「こんなに規制を廃止してやるぞ」と、山積みの書類とともにトランプ大統領が写っています。

規制に関する紙の束の前で赤いテープをカットするトランプ大統領。赤いテープは規制の象徴。同政権は、1000以上の規制をキャンセル、または延期したことを記者会見でアピールした。(2017年12月14日) 出典:THE DAIRY SIGNAL. December 15 , 2017 “4 Big Singns of  a Trump Economic Recovery”

この「2対1ルール」ですが、実は、1つ新しい規制を作るために、2つどころか、はるかに多くの規制を同時に廃止しています。

というのも、「2対1」は規制の数だけでなく、規制の経済効果で測られているからです。厳密に言うと、「新しく作る規制の経済損失は、廃止する古い規制の経済損失以上であってはならない」という話なのです。

あるとき、トランプは豪語しました。「新しい規制1つにつき22の規制を廃止した」。

これはホワイトハウスの自己申告の数字ではありますが、数え方によって数字自体はマチマチです。2017年から2019年までの合算で、新設1つにつき8個の規制が廃止されています(*2)。

(*2 Regulatory Reform under Executive Order 13771: Final Accounting for Fiscal Year 2019)

このことからも、役人は、それなりのインセンティブを与えてやれば、自ら進んでいらない規制を探してくれるということがわかります。

そして、規制廃止だけではなく、トランプが減税にも励んだことは言うまでもありません。しかも、アメリカ史上、最も減税率が大きく「トランプ減税」と呼ばれます。

「レーガンを超えた(オレは偉大だ!)」とトランプの声が聞こえるようです。

 

※次回<来るべき衆院選で「税金下げろ連合」ができること>5月25日(火)公開

渡瀬裕哉『税金下げろ、規制をなくせ』(光文社新書)

1980年代、日本は世界で最も勢いのある経済大国だった。しかし、90年代に入ってバブルが崩壊、経済は停滞して「失われた10年」と呼ばれた。その後も不況から脱出できず、もはや「失われた30年」になろうとしている。その原因は何か――。すべては「税金と規制」の問題に集約される。だが、日本は世界に先駆けて少子高齢化が進み、財政状況も悪化。社会保障費は増え、自然災害も毎年のように日本列島を襲う。であれば「増税はやむなし」なのか?上がる一方の税金と規制に苦しむ日本が打つべき手とは?俊英の政治アナリストが、私たちに刷り込まれた「洗脳」を解く。

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減税が経済を動かす

増税はいらない。税金は下げられる。いま下げないと、日本はこの低迷から永遠に抜け出せない――。米国経済の復活の土台となった「大減税」「2対1ルール」を例に、俊英の政治アナリストが説く日本のための減税論。2021年の衆院選で減税政治家を大量に送り出すために知っておきたいプレ講座。

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渡瀬裕哉

1981年東京都生まれ。国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか―アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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