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減税が経済を動かす

2021.05.13 更新 ツイート

#1

税金は下げられる 渡瀬裕哉

日本経済が低迷し、苦しい生活から抜け出せないのは、取られすぎの「税金」のせい。話題の『税金下げろ、規制をなくせ』(光文社新書)の中で、「大減税」と「規制廃止」で復活した米国経済を喝破した渡瀬裕哉氏による、日本政治と経済を立て直すための集中講座。衆院選が近いいま、有権者が現実を理解するとき――。『税金下げろ、規制をなくせ』序章から試し読みをお届けします。

*   *   *

現在では、「少子高齢化が……」「社会保障が……」に加えて「未曾有の災害が……」も増税の口実に使われています。

日本は世界に先駆けて少子高齢化が進んでいる社会でありながら、地震・火山・台風などに毎年襲われる災害列島でもあります。こうした困難を抱えている社会では、「増税はやむなし」なのでしょうか。言い切りますが、これはプロパガンダです。そうした情報に流されて、税金や規制のことなど、あまり考えていない人でも(あるいは、あまり考えていないからこそ)、税金は上がるものと信じています。消費税にしても、どうせ上がっていくものだと思っているので、実際に増税されるとあきらめてしまう人が多い。

しかし、あきらめないでください。税金は下げられるのです。税金が本当に下がるかどうかは、理屈ではなく政治力の問題です。

以前はこれを説明するのにかなり苦労しましたが、2020年4月、誰の目にも明らかな形で、それが実証されました。それは公明党の反逆です。

コロナ対策として、安倍内閣が第一次補正予算を組みました。ところが、閣議決定までしたその予算に、公明党が「すべての国民に一律10万円の給付を」と異議を差し挟み、決定を覆しました。公明党の得票率は10%程度です。それでも、閣議決定をひっくり返すパワーがある。

少数派であっても、政治を動かすことができる。国民の51%の得票は必要なく、たった10%で影響力を持てる。少数のまとまった塊が意味を持つ。そのことが、これ以上はないほどよくわかる事例でした。

一律10万円とは10兆円程度の予算規模に相当します。言い換えれば、消費税5%分です。10%の政治力で、一瞬にしてそれだけの予算が動くのです。

つまり、減税派が有権者の10%をなし、大きな声を上げれば、税金は確実に下げられます。繰り返しますが、減税ができる・できないは、政治力だけの問題なのです。

潜在的な減税派は10%などというものではなく、はるかに多いと思いますが、残念ながらその数が、今のところ見える形になっていません。だから、税金が上がっているのです。減税派が連帯し、その活動を強烈にアピールすれば、税金は必ず下げられます。

寸借詐欺と減税詐欺

貸し主「そろそろ貸したお金を返してくれませんか」
借り主「もう少し待ってください。返せるアテはあるんです」
貸し主「もう少しだけですよ。ちゃんと、返してくださいね」

こんなことが続いたら、この借り主は詐欺師と呼ばれても仕方がありませんし、信じる貸し主はお人好しすぎます。しかし、これが現在の日本の有権者と政治家の関係です。政治家は公約をします。しかし「公約と書いてウソと読む」と言われるほど、政治家の約束は薄っぺらいものです。

(写真:iStock.com/SKETCHIT)

安倍政権は消費税増税に関して「リーマン・ショック級の出来事がない限り、現行の8%から10%に引き上げる予定だと繰り返し申し上げており、この方針に変わりはない」と言いながらも、どこか増税見送りを匂わせる態度を繰り返してきました。

そして、実際には二度消費税を上げました。2014年4月に8%、そして、2019年10月には10%に。「安倍さんは増税派の財務省と戦ってくれる」と支持者が勝手に思い込み、騙されたのは自業自得ですが、そのイメージを政治的に利用してきた安倍政権の策士ぶりには感心させられます。

自民党の議員の中には、「消費税を上げません」と言っていた人がたくさんいます。増税後、彼らは言いました。

「私は、本当は減税をしたいと思っています。でも、状況が許さないのです」

また、太鼓持ちのような代弁者たちは、

「あの人は、心の中では増税に反対なのだ。本当は消費税を下げたいと思っている。けれども、財務省が許さないんだ。悪いのは財務省だ~」

「あの人」のところには、思い浮かんだ政治家の名前を入れてください。

しかも、安倍政権の場合は三党合意をしていましたから、詐欺の計画は事前に決まっていたのです。三党合意とは、2012年の民主党政権時代に民主党、自由民主党、公明党で取り決めた合意のことです。「社会保障と税の一体改革」の名のもとに八法案が成立しました。そこで消費増税へのレールがすでに敷かれていたのです。

「金を返す」というのを信じていたが、騙されていた。「返さないのではないか」と薄々思いながら、それでも金が戻ってくると根拠なく信じていたけれども、やっぱり金は返ってこない。いっこうに返そうとしない当の借り手が、「本当は、お金を返したかった」と言ったところで、あなたは信じて待ちますか。せいぜい「今からでもいいから早く返せよ」と言ってやるところでしょう。

政治家の「私は“本当は”増税に反対なのです」という言葉を信じる人は、友情を巧みに利用して他人を食い物にする詐欺師の餌食になるだけです。「まさかあいつがオレを騙すはずがない」と思いたい気持ちはわかりますが、手遅れになる前に縁を切るなり、訴えるなりしたほうがいい。まして、さらにお金を貸すようなことは言語道断です。

個人がお金をどう使うかは人それぞれの価値観ですから、それでも信じたい人はどうぞご自由に。しかし、有権者と政治家の関係は、そんなウェットなものではありません。思っているだけではダメ、行動がすべてです。

「“本当は”増税に反対」、僕はこれを「お気持ち詐欺」と呼んでいます。増税に反対する「気持ち」はあるのだが……という論法で、人を騙す。そんな「お気持ち」があろうが、なかろうがどうでもいい。国会議員は一人一票を持っていますから、単に国会で投票すればいいだけです。「党議拘束(党の執行部に従って投票しなければいけないルール)があるから」と議員は言うでしょう。しかし、それは、そちらの都合。本当に増税に反対なら、造反するか、離党すればいい。もしくは他の「お気持ちでは増税に反対」の議員を党内で説得したらいい。有権者は、単純に「減税しろ」だけでOKです。有権者を煙にまく政治家の余計な話は無視しましょう。

 

※次回「税金は余っている」5月14日(金)公開

渡瀬裕哉『税金下げろ、規制をなくせ』(光文社新書)

1980年代、日本は世界で最も勢いのある経済大国だった。しかし、90年代に入ってバブルが崩壊、経済は停滞して「失われた10年」と呼ばれた。その後も不況から脱出できず、もはや「失われた30年」になろうとしている。その原因は何か――。すべては「税金と規制」の問題に集約される。だが、日本は世界に先駆けて少子高齢化が進み、財政状況も悪化。社会保障費は増え、自然災害も毎年のように日本列島を襲う。であれば「増税はやむなし」なのか?上がる一方の税金と規制に苦しむ日本が打つべき手とは?俊英の政治アナリストが、私たちに刷り込まれた「洗脳」を解く。

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減税が経済を動かす

増税はいらない。税金は下げられる。いま下げないと、日本はこの低迷から永遠に抜け出せない――。米国経済の復活の土台となった「大減税」「2対1ルール」を例に、俊英の政治アナリストが説く日本のための減税論。2021年の衆院選で減税政治家を大量に送り出すために知っておきたいプレ講座。

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渡瀬裕哉

1981年東京都生まれ。国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。創業メンバーとして立ち上げたIT企業が一部上場企業にM&Aされてグループ会社取締役として従事。著書に『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか―アメリカから世界に拡散する格差と分断の構図』(すばる舎)などがある。

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