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2021.04.11 更新 ツイート

「人類」vs「地球外生物」との死闘で、人型兵器を操る兵士同士の感動的な連帯!竹良実『バトル グラウンド ワーカーズ』(小学館) 中条省平

私は手塚治虫文化賞というマンガ賞の選考委員を務めています。

毎年、選考の時期になると、軽く100冊以上の候補作を読まなければならなくなるので、けっこうきつい仕事なのですが、一緒に選考委員をしている方々が筋金入りのマンガ好きなので、推薦してくれる作品に見逃していた優秀なものが多く、いつもその新発見を楽しみにこの仕事を続けています。

今回ご紹介する竹良実『バトル グラウンド ワーカーズ』は、同じ選考委員の秋本治さんから教えていただいた作品で、あまりの面白さに既刊の6巻を一気読みしてしまいました。

 

舞台は、近未来と思われる世界で、未知の生物である「亞害体」が地球に襲来して、それと戦う軍隊として「人類連合」が組織されています。

人類連合は、「ライズ」という人型の兵器を用いて亜害体と戦闘をおこなうのですが、このライズは、ガンダムやエヴァンゲリオンのように人間がじかに兵器の内部に乗りこむのではなく、人間と神経接続をおこなうことによって、遠隔地にある無人の人型兵器(巨大ロボット)を、操作者の脳の働きどおりに動かして戦うというものです。

ですから、遠隔地で戦うライズが損傷しても、それを操作する人間は痛みを感じるだけで肉体的な損傷はないのですが、ライズのすべての動きを統御する中枢の「通信器」を破壊されると、操作者の人間も死んでしまいます。

しかし、通信器が破壊される前に、操作者が首に刺さったプラグを引き抜き、ライズとの神経接続を強制終了すれば、操作者は生き延びることができるのです。

ただし、この強制終了は人間の神経への負担があまりにも大きいので、5回までしか行うことができません。このあたりは、マンガ評論家の南信長さんが指摘しているように、何シーベルト以上被曝すると生命が危険にさらされるという原発での作業を髣髴させるところでもあります。

じっさい、ライズを遠隔操作して亞害体と戦う人類連合の兵士たちは常時命を危険にさらしているのですが、そのおかげで安楽に生きているそれ以外の人類の大多数は、そんなことをまったく考えもせず、能天気に生活を送っているのです。

それはともかく、本作は、ライズを操作する兵士たちの、地味な、しかし危険できつい仕事の現場を活写するところから始まります。まずは、その淡々としてリアルな細部に、このマンガのオリジナリティがあります。

ところが、読み進むにつれて、亞害体と人類の戦いの背後には驚くべきカラクリがあることが明らかになり、物語は一気に政治的・社会的な意味あいを色濃く帯びていくのです。

ライズを操作する兵士同士の連帯が感動的に描かれ、また、ドンデン返しも巧みにちりばめられ、どんなふうに完結へと導かれるか、いまから楽しみでたまりません。

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中条省平

1954年神奈川県生まれ。学習院大学フランス語圏文化学科教授。東大大学院博士課程修了。パリ大学文学博士。著書『中条省平は二度死ぬ!』『文章読本』など。翻訳書最新刊はロブ=グリエ『消しゴム』。

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