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アルテイシアの熟女入門

2021.01.01 更新 ツイート

JJ、元旦に習わぬラップを読んでみる アルテイシア

新年、明けましておめでとうございます。本年もJJ(熟女)コラムをよろしくお願いします。

元旦から告知で恐縮だが、1月16日に朝日新聞主催のオンラインイベントに出演する。

当日は「ジェンダーと言葉」というテーマで、人気ラッパーのあっこゴリラさんと対談させていただく。

というわけで、私もJJ古語を織り交ぜたラップを考えてみた。

俺のフェミニズム 作詞 アルテイシア

 

刻むぜリズム、俺のフェミニズム
アジェンダは何だ? それはジェンダー

冗談じゃねえわ、今は令和
我慢も欺瞞もいらねんだわ
忍耐は限界、タイムズアップ!

女の敵は女? そんなバナナ
わけわかめ、黙れバカめ
真のエネミーはミソジニーなGUY

Stop joking!
Fuckingな連中、くだせ天誅!

HEY MEN! 貴様の棺桶、準備はOK?
HEY MEN! 貴様は老害、CHANGE OR DIE

男尊女卑ダンジョン、ヘルジャパン
起こせアクション、叫べパッション

やったぜベイビー、奴らにバイビー
ブイブイいわせてダイジョーV

我はJJ、気分上々
ヘルなジャパンでも気分はヘブン
シスターフッドでレッツラゴー!

我ながら拙いライムだが、そのぶん伸びしろを感じる(前向き)

帰国子女の女友達が「アメリカの小学校では、国語の授業でラップを作るんですよ」と教えてくれた。

私は小学生の時、国語の授業で俳句を作った。だから日本人は五七五にまとめるのが得意で、アメリカ人は韻を踏むのが得意なのかもしれない。

昨今、大学ではジェンダーの授業が大人気だそうだ。若い頃にジェンダーやフェミニズムを学んだ世代が増えれば、社会は変わっていくだろう。そのことに希望を感じる我である。

今回は「私とフェミニズムの出会い」について書きたい。

女子校育ちの私は、共学の大学に進んで男尊女卑にぶん殴られた。

サークルもゼミも「男がトップで女はサポート役」が当たり前で、自分の意見を言うと「女のくせに目立つな」「生意気だ」と叩かれた。男子からの見た目イジリやセクハラにもさらされた。

女子校では「人間」として生きられたが、大学では「女」として差別されて、それに怒りを感じたけれど、当時は生き延びるのに必死だった。

広告会社に就職した後も、男尊女卑に殴られ続けた。でも20代前半の私は「セクハラされても笑顔でかわすのが賢い女」と洗脳されて、感覚が麻痺していた。

自分の痛みや怒りに蓋をしたまま、自尊心を削られていき、不眠や過食嘔吐に苦しんでいた。

そんな私に声をかけてくれたのが、Mさんという先輩だった。彼女はとびきり仕事のできる2つ年上の女性で、ポンコツ社員だった私をよく助けてくれた。

当時はパソコン画面をセミヌードの女性の画像にしている男性社員が多かったが、感覚が麻痺していた私は何も感じなかった。

彼らに「それって環境型セクハラですよ」と指摘していたのがMさんだった。

アメリカの高校と大学を卒業した彼女は、おじさんたちに「あいつはガイジンだから(笑)」と陰口を叩かれていた。

彼女が田嶋陽子さんの本を借してくれたことが、私とフェミニズムの出会いである。

そこから上野千鶴子さんや小倉千加子さんや斉藤美奈子さんの本を読み始めて、自分を苦しめていたものの正体がわかって「私、怒ってよかったんだ」と気づいた。

Mさんに出会っていなければ、私の人生は違っていただろう。彼女のような先輩のいる会社に入社できた私はラッキーだった。

ジャニーズはジェンダー担当に拙者を雇ってはどうか」のコラムの中で「彼らもファンを悲しませる気はなかったはずだ。まともな性教育を受ける機会がなかったことが、こんな悲劇を招いたのだろう」と書いた。

性教育やジェンダーについて学ぶ機会がなかったことは、本人だけの責任じゃない。小学校で俳句よりフェミニズムを習えればよかったのに。

石川優実さん責任編集『エトセトラ』で、石川さんは次のように書いている。

『フェミニズムに出会うまでの約30年間、私はずっと自分を信じられなかったし、自分は間違っているんじゃないかと思ってきたし、自分のことが大嫌いだった。ずっとずっと、女性差別というバックラッシュを受け、まんまとその効果通りの自分で生きてきたのだった。でも、フェミニズムと出会った今はもう違う』

わかる(わかる)と膝パーカッションが止まらない。ワイもフェミニズムの響きだけで、強くなれる気がしたYO!

20代の女友達は「フェミニズムと出会って、視力が良くなった感じがします。見たくないものも見えてしまうけど、見えなかった時には絶対戻りたくないじゃないですか」と話していた。

私もフェミニズムに出会う前は、誰かにぶつかられても何にぶつかったのかわからなくて「私が悪いのかな」と自分を責めていた。

「こんなの痛くない」「怒ってもしかたない」と感情を押し殺していた当時を「終わらない悪夢を見ているようだったよ」とユミル顔で振り返る我である。

そこから20年の月日が流れ、44歳の私は性差別やセクハラにバチボコに怒っていて、それが文章を書く原動力になっている。

「怒りじゃ何も変わらない」「怒ってばかりで疲れませんか?」的なクソリプも来るが、ダブルピースで元気いっぱいに生きている。

むしろ怒りを言葉にして表明することで、私は俄然生きやすくなった。自分の苦しみと向き合い、その根底にある怒りを解放することで、人は楽になれるのだ。

また、読者の女性たちから「アルさんの文章を読んだことが、私とフェミニズムの出会いです」と言っていただき「我が生涯に一片の悔いなし!!」とラオウ顔で拳を突き上げている。

今生でこんな嬉しい言葉をもらえたなら、来世はチンアナゴでオッケーだ。

Mさんとは現在も交流があって「なんか右肩が痺れるんだよね」「私は左腕が痺れてますよ」とJJトークに花を咲かせている。JJはいつもどこかが痺れているお年頃。

彼女は小学生の娘さんを育てながら、今もバリバリ働いている。広告会社を退職した後にアメリカの企業で働いて、数年前、日本の企業に管理職として転職したそうだ。

その時、会社の男尊女卑すぎる体質に愕然としたという。

「男性の部下がミスした時に注意すると、大声で逆ギレされるのよ。『私が男性だったら同じように怒鳴る?』と聞いたら『だってMさんは女性じゃないですか!』と開き直られて……結局、女の下で働くのが気に食わないだけなんだよね」

そんなことが積み重なって「仏の顔もスリータイムズやぞ」と嫌気がさした彼女は、ふたたび外資系企業に転職した。

男尊女卑にうんざりして、優秀な女性たちが離れてしまう。たたでさえ人手不足の日本なのに、泣きっ面にビーである。

それで「女性活躍」なんて、どの口が言う? Fuckingな連中、くだせ天誅!

「娘には自分みたいな地獄を味わってほしくない。だからできれば海外の学校で学んでほしいし、海外で仕事してほしい」とMさんは言っていた。周りの子持ちの女性達も同じように話している。

また「この国で子どもを産み育てるのがムリゲーすぎる」と、子どもを産まない選択をする女性も多い。「この国で育つ子どもが可哀想だと思うんだよね、女の子だったら特に」と彼女らは語る。

子どもの頃から痴漢にあって、女というだけで入試で減点されて、女は子どもを産むからと就職で差別され、産休育休を取っても迷惑がられる社会で「じゃあ子どもを産まない」と女が選択すると「けしからん、ワガママだ」と責められる。

職場では「女には期待しない」「がんばっても無駄だ」と頭を押さえつけられ、がんばらないと「やっぱり女は仕事ができない」とナメられる。

そんな中、決死の思いで出産しても保育園に入れない、保育園に入れてもワンオペ育児で疲労困憊、日本の子持ち女性の睡眠時間は世界一短いと言われている。

おまけに選択的夫婦別姓は後退する、同性婚も認められない、性交同意年齢は引き上がらない。

そんなヘルジャパンで「文句があるなら結婚するな、子どもを産むな」と言われたら「そうします!」と食い気味に答えたくなるだろう。

2年前、大相撲の春巡業で土俵上にいた市長が倒れた時、看護師の女性がすばやく救命処置を行った。その間「女性は土俵から下りてください」というアナウンスが何度も流れた。

あの映像を見て、これが日本だと思った。伝統を守りたいおじさんたちのせいで、人が死ぬ。おじさんのおじさんによるおじさんのための政治によって、国が滅びる。

日本は本音と建前の国と言われるが、我々はとっくに彼らの本音に気づいている。おじさんたちは男尊女卑を守りたいのだ、その方が自分たちにとって都合がいいから。

夫婦別姓を認めない日本の男性リーダーの女性蔑視思考とは」という記事で、井田奈穂さんが次のように語っている。

『私が選択的夫婦別姓制度の導入に向けた活動のため、最初に政治家と名の付く人、つまり地元や国会の議員さんに会い始めたのは2018年のことでした。

このとき言われて衝撃的だったのが、「選択的夫婦別姓というものを許してしまうと、女性が男性と同じ権利を持っていることに国民が気付いてしまう」「それを許すと女性天皇が生まれる機運をつくってしまう」「八百万の神に守られた日本は男性の系譜でずっと来ていたにもかかわらず、それを崩すことになる」という言葉です』

「貴様の棺桶、準備はOK?」とエドモンド本田のようにスーパー頭突きをキメたい。だが「貴様は老害、CHANGE OR DIE」と迫っても、おじさんたちに変わる気はないだろう。

だったら空っぽになった国で相撲でも取っていればよい。

私も本気で無理になったら日本から出ていくつもりだが、もうしばらくはこの国の行く末を見てみたい。

日本全体が巨大な男子校みたいなものだけど、私は女子校みたいな世界で生きていて、若い頃よりは生きやすい。

昔は男尊女卑に対する怒りをシェアできる仲間が少なかったけど、今はフェミニズムに目覚める仲間がどんどん増えている。

10年前に「フェミニズムを学ぶというテーマで本を出したい」と出版社に提案しても「そんなの売れるわけない」と見向きもされなかったが、今は「フェミニズムをテーマに書いてほしい」と依頼が来る。

そして田嶋陽子さんが再評価されて、フェミニズム関連の書籍が売れまくっている。そうした変化を目の当たりにして、絶望の中にも希望を感じているから。

だから俺は歌うんだYO! 精一杯、韻を踏んで。というわけで、皆さんのラップも聞かせてもらえると嬉しい。

【告知】1/16(土)14時~朝日新聞主催のオンラインイベントに出演します。登録すれば参加無料だそうです。観客の皆さんとフリートークする時間もありますYO!

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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