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アルテイシアの熟女入門

2020.12.01 更新 ツイート

プレJJ期に人生見直したら幸福度が爆上りした件 アルテイシア

先日、トイレに行ったら漆黒のウンコが出て仰天した。

「ウンコ 漆黒」でググろうとした瞬間、前日にイカスミパスタを食べたことを思い出した。

ウンコを持参して病院に駆け込まないために、イカスミを食べた日はカレンダーにメモろうと思う。

「忘れっぽいんでな、メモってたんだ」とジョジョの承太郎は言っていたが、JJ(熟女)はメモったことも忘れるのが問題だ。

 

その代わりイヤなこともすぐ忘れるので、「忘却力が上がった」と前向きに捉えている。

フリーランスの物書きをしていると「スケジュール管理はどうしてるんですか?」とたまに聞かれる。それに対する答えは「スケジュール管理が必要なほど働いてない」である。

ここ数年、ありがたいことに仕事の依頼が増えてきて「すみません、忙しくて……」と断る機会も増えた。でも実際は全然忙しくないので、申し訳なく思っていた。

なので最近は「私のキャパが激小なので」と本当の理由を言うようにしている。

こんなゆるゆるの働き方なので、永遠に金持ちにはなれないが、私にはこのペースが合っているのだ。

アダルト業界では25歳以上が熟女らしいが、私は40歳以上が熟女本番で、30代後半はプレJJ期だと思っている。

プレJJ期、40代を迎えるにあたって、人生を見直すことにした。

そして「40歳になったら子宮をとろう」と決意した。その経緯は『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』に綴っている。

当時は子宮筋腫のため月の半分以上は股から出血していて、つねに体調が悪かった。

子宮を断捨離したことで生理がなくなり貧血も治って、44歳の今の方がずっと元気だし体力もある。
好きな時に好きな場所に行けるようにもなって、人生の幸福度が爆上りした。

また、39歳の時に引っ越しを決意した。

「我が人生で本当に欲しいもの……それは居心地のよい家!」と結論が出たため、35年ローンで中古マンションを購入して、自分好みにリフォームした。

“つらかった子ども時代に憧れていた家”がコンセプトの我が家は、友人たちからAC御殿と呼ばれている。

かつ、40歳になる前に仕事を整理した。30代はゲームのシナリオを大量生産していたが、それを全部やめたのだ。

というのも「もし今余命宣告されたら?」と考えた時に「あんなに仕事ばっかりするんじゃなかった」と後悔すると思ったから。

当時は2ヶ月ぐらいカンヅメでシナリオを書くこともあった。その間、試しに眉毛や産毛を剃らずにいたら、山賊みたいな顔になった。

当時は「こんな締切に追われる生活はイヤだ……もっと余裕がほしい……」と布団の中で泣いたりしていた。

そのおかげで多少は貯金ができたし、貴重な経験もできたし、後悔はしていない。でも今後も同じような生活を続けたら、絶対に後悔すると思ったのだ。

それゆえ、ゴムパッチン教から脱会しようと決めた。

かつての私は電撃ネットワークのゴムパッチンみたいに、限界ギリギリまで頑張らないと自分を許せなかった。

それは「期待に応えないと愛されない」という毒親育ちの影響もあるし、広告会社時代の洗脳もあると思う。

新卒で入社した広告会社は「仕事のために心臓を捧げよ」みたいな社風で、ポンコツ社員だった私は「なんの成果も得られませんでした……!!」と号泣する日々だった。

今でも当時の悪夢を見て、汗びっしょりで目覚めては「ベトナム帰還兵かよ……」と呟く。

元同僚のFacebookを見ると「期末まで全力で駆け抜ける!」とか書いていて「まだゴムパッチンやってんのか、すげえな」と感心する。「まだ消耗してるの?」と冷笑するんじゃなく、本気ですごいと思うのだ。

働き方は人それぞれで、私は全力で走り続けるのは無理だった。限界まで頑張るんじゃなく、余裕のある生活をしたかった。

ゲームの仕事を辞めた後、しばらくは罪悪感や居心地の悪さを感じたが、数か月で慣れた。その後はゆるゆるライフを満喫しつつ「あんな働き方は二度とできない」と実感している。

ちなみにゲームの仕事を辞めたら、もともと書きたかった女性向けコラムの依頼が増えたので、人生とは珍奇である。

また時間的にも精神的にも余裕ができたことで、新しいことも始められた。

41歳の時に「アルテイシアの大人の女子校」を作って、それが今ではライフワークになっている。
女子校メンバーとオフ会やイベントをしたり、芋掘りや椎茸狩りに出かけたりと、人生の大きな楽しみができた。

振り返ると、20代はピチピチギャル(JJ古語)なのに、いつも疲れていた。

整体や鍼灸にいくら課金しても疲れがとれず、「ガビーン、冗談はよし子さん」と思っていた。その頃より今の方が元気いっぱいで「だいじょーV」とダブルピースしている。

それは、そもそも疲れない生活をしているからだ。

バリキャリのJJたちは「わかる!」と膝パーカッションして、「私もコロナで体調が良くなった」と証言する。

コロナでリモート中心になり、打合せや会食が激減した。自宅で粗食を食べて酒もあまり飲まず、睡眠をたっぷりとって、人間関係のストレスも激減。

という生活の変化によって、めきめき健康になったという。

「私も整体や鍼灸に通っても疲れがとれなくて、加齢のせいだと諦めていた。でも疲れない生活をしたら、疲れないんだね」と彼女らは語る。

世の中にはリモートが向いてない人もいるし、バリバリ働くのが好きな人もいるだろう。

バリバリとゆるゆる、どちらが良い悪いじゃなく、自分に合った方を選べばいい。もしバリバリやるのに疲れたら、いつでもシフトチェンジすればいいのだ。

このように拙者がゆるゆるでいられるのは、子なしだからである。子持ちの友人たちは仕事と育児に追われて「毎日、風呂に入る余裕もない」とゼエゼエしている。

そんな彼女らを見ていると、暇なのに風呂に入らない我が申し訳なくて、お布施したくなる。

去年、某女性誌の広告が炎上したが、そこにはこんなコピーが並んでいた。

「忙しくても、ママ感出してかない!」
「ママに見えない、が最高のほめ言葉♡」
「えっ!? お子さんいらっしゃるんですか!?」
「働く女は、結局中身、オスである。」

この件について、拙者は以下のようなコラムを書いた。

 

『この広告は読者層であるワーママを応援したい、という意図で作られたのだろう。

だが「育児が大変でも女を捨てちゃ駄目だゾ♡」とプレッシャーをかけるのは、エンパワメントとは真逆の方向だ。

また「ママに見えないママが最高」→「ママに見えるママは駄目」というメッセージは、女性たちの分断につながり、シスターフッド(女性の連帯)とも真逆の方向である。

読者を応援したいなら「どんなママでも最高!」「息してるだけで偉い!」「みんなで助け合っていこうな!」というメッセージを発信するべきじゃないのか?

極めつけが「働く女は、結局中身、オスである。」

「男は仕事、女は家事育児」という性別役割分業を強化するメッセージに「自民党のおじいさんが考えたのかな?」と疑惑が浮かんだ。

(略)ターゲット層の女性に嫌われたら、広告として失敗である。

「ママになってもブイブイいわせちゃうぞ! ヒューヒューだよ!」的な昭和ノリもやばいが、ターゲットが見えてないことが一番やばい。

日本の子持ち女性の睡眠時間は世界一短い、とも言われている。そんな疲弊しているママたちに「美容やおしゃれもがんばルンバ♡」とハッパをかけるのは、控えめに言って鬼だろう。

私だったら「お風呂入ったの? えらーい!」とコウペンちゃん流にスタンディングオベーションしたい。かつ「働くママにスーパーウーマンを求めるな!!」と暴れ太鼓をポンポコしたい』
 

広告会社時代は「子どもがいることを言い訳にしたくなくて、必死のパッチでがんばって、トップ営業マンになりました!」みたいなスーパーウーマン系の先輩に「そこに痺れる憧れるゥ!」と後輩たちがスタンディングオベーションしていた。

その中で「この世界は地獄だ……」とアルミン顔で震えていた私。

自分はそんなにがんばれないし、一瞬で過労死しそうだし、この会社で働き続けるのは無理……と思ったからだ。

そこから20年たって「特別な女性だけが活躍できるんじゃなく、普通の女性が普通に働ける社会になるべき」という声が高まっている。

けれども、スーパーウーマンを責めるのも違うと思う。

子持ちでバリバリ働くJJたちは「後輩女子のために道を切り開こう」「そのために女性の管理職を増やさなきゃ」と、男社会で必死に戦ってきたのだ。

そんな友人の1人が「後輩女子から『私は○○さんみたいにはなれない』と言われてショックだった。娘が大きくなったら『ママみたいにはなりたくない』って言われるんだろうな……」としょんぼりしていた。

必死で戦ってきたのにそんなこと言われたら「そりゃないぜ~~」とルパンの声で言うだろう。ちなみに我々世代はクリカンじゃなく山田康雄だ。

私は彼女らを心から尊敬しているし、「お疲れ様! 来世に向けて徳を積んだね!!」と最大のスタンディングオベーションを送りたい。

大して徳を積んでない私の来世はチンアナゴだろうか、それはそれで楽しそうだ。

先日、アラフォー向け女性誌の取材を受けた時、編集さんから「うちの読者は『妻として、母として、女として完璧でなければ』というストイックな女性が多い」と聞いた。

本人が心から望んでいるならいいが、「完璧じゃなきゃダメ」「世間が求める役割に応えなきゃ」と思っているならつらいだろう。

彼女らがプレッシャーを受けているなら「完璧じゃなくてええやないの」と言いたい。

私は完璧からほど遠いチンアナゴだが、そのぶん他人に完璧を求めない。「私、失敗しないんで」よりも「私、めっちゃ失敗するんで」と思っている方が、他人の失敗にも寛容になれる。

また私はマルチタスクが苦手で、同時にいろんなことができない。できるのは本を読みながらウンコするぐらいで、それも本に集中するとウンコの存在を忘れる。

そのかわり家にこもって文章だけ書いているのは得意だ。

毎日風呂に入るのは苦手だけど、子宮全摘手術で入院した時、5日間シャワーを浴びられなくても平気だった。

苦手なことが多いぶん「俺にできないことを平然とやってのけるッ!」とすぐに人のことを尊敬する。

苦手にもプラス面はあるし、人それぞれ苦手と得意があって、デコボコしているのが人間だろう。

日本は「このキュウリは曲がりすぎ」「このカボチャは形が悪い」と規格外は排除する、品質管理社会だ。

会社員時代は「自分はポンコツの欠陥品だ」と劣等感に苦しんだが、人には向き不向きがあるし、適材適所がある。
それぞれ得意分野で助け合えるのが、みんなが生きやすい社会だろう。

拙者は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』という本を出しているが、プレJJ期は迷いの多い時期だった。「若い女」の土俵にまだ片足のっていて、メンタルがぐらぐらと不安定だった。

そこから完全に降りたら楽になったが、それも実際に40歳を過ぎてみないとわからなかった。

プレJJ期に人生見直して、自分に合った方向を模索して、気づくと生きやすくなっていた。他人の評価や視線が気にならなくなり、メンがどっしりと安定した。

現在はバカボンのパパより年上になり「俺は俺だ、これでいいのだ」と全肯定の精神で生きている。

先述の女性誌の編集さんが「うちの読者は、おばさんと呼ばれたくない人が多いと思う」と話していた。

関西人の我が思うに、関西は「おばちゃん」に悪いイメージが少ないんじゃないか。

子どもの頃は、中年女性のことを親しみをこめて「おばちゃん」と呼んでいた。

豹柄パンチパーマの「大阪のおばちゃん」は人類最強の部族っぽくて憧れるし、アベンジャーズの一員になってほしい。

ちなみに『じゃりン子チエ』のおバァはんは「正拳イスぶち抜き」などの必殺技を持つ、ヤクザもぶちのめす宇宙最強のババアだ。私もあんな強いババアになりたい。

そんな我としては、「おばさん」「おばちゃん」がポジティブな言葉になると嬉しい。

先日、20代の女子校メンバーに「あいつは脳みそにカルメラが詰まってるな」と言うと「カルメラ??」と怪訝な顔をされたので、「じゃりン子チエのカルメラ兄弟って知らない?」と聞くと「じゃりン子チエさん、名前は聞いたことあります」と言われた。

また「月光仮面も人気だったんですよね?」と聞かれたが、それはもうちょい上の世代だ。

JJになって、若い女の子たちと交流するのがますます楽しくなった。今後もシスターフッドを満喫しつつ、最強のRJ(老女)を目指したいと思う。

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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