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稼ぐ人は思い込みを捨てる

2020.10.12 公開 ポスト

「自分は特別」「うちの会社は特殊」という思い込みがもたらす不幸坂口孝則

(写真:iStock.com/g-stockstudio)

予想もしなかったことが次々と起きる今、これまでの常識を当たり前と思い込んでしまう態度は、最大のリスクでしかありません。コンサルタントの坂口孝則さんは、日本にまつわる12の通説を広範なデータで覆し、自分の見ている現実に囚われない思考法を稼ぐ人は思い込みを捨てる。において伝授しています。その中から、一部をご紹介。自らの「思い込み」と戦う坂口さんご自身の話。

「うちは平凡で、よくある企業です」という意見には出会わない

私はコンサルタントとして多くの企業を見ている。かならずクライアントから「うちは特殊なんです」と聞かされる。何か施策を提案すると、「難しいと思う。なぜなら、うちは特殊だから」といった感じだ。

逆に、「うちは平凡で、よくある企業です」という意見には出会った経験がない。もちろん企業は矜持(きょうじ)がなければやってられないし、プライドの裏返しといえる。これは別に蔑視するべきではないし、微笑ましくもある。

また、たまに相談を受けるのが、自社や個人のブランディングだ。「こういう仕事を受けていいだろうか」「こういう発言をしていいだろうか」と質問される。なるほど、ブランドが毀損(きそん)しないか、ネット上の炎上などでマイナスのイメージを被らないかといった懸念があるようだ。

しかし、世の中のひとは、ほとんど気にしていない。もっといえば、そのひとの恋人や妻、家族であってすら、炎上していること自体に気づかないのではないだろうか。炎上している本人からすれば大事件だが、世界の大半からすれば、そもそも知らない。

 

これは、いうのは簡単だが、自覚するのは難しい。誰もが「自分は特別」だと思っている。自分が平凡で凡人だと思えば、生きにくいからかもしれない。

恥ずかしいが、私もそうだった。2011年に会社をつくったとき、集客できない事実を認められなかった。私は20代の後半から書籍を書いていて、さらに30代の前半からはテレビにも出演していた。会社をつくったら、顧客は増えるはずだった。

ホームページをつくって、電話線を引いても、何も問い合わせが来なかった。壊れていると思って、公衆電話からかけてみたり、パソコンから問い合わせページにメッセージを送ってみたりしたほどだ。誰もが「自分は特別」病に罹患するなか、事実だけを見る態度は、日に日に重要になっている。

結局、事実からは逃れられない

この事実と数字を見る態度は、しかし、それほどたやすくはない。全員が自分は特別だと思っているから、なかなか事象をそのままとらえられない。たとえば、ビジネス書を読むとする。そこに書かれた内容を実践するのは、きっと100人に一人だろう。しかし、その一人であっても、実践した内容がうまくいかないと、もう諦めてしまう。試行錯誤できるひとは稀まれだ。

たとえば、自身のビジネスに集客するために、キャッチコピーを書く。それで集客しても、ほとんど誰も来ない。こんなとき、媒体が悪いとか、集客方法が悪いと考えがちだ。ただ、誰も集客できないのであれば、そもそもその媒体が存在し続けているはずがない。悪いのは自分だ。しかし、それを直視できない。

読者のうち、何人が起業を志すかはわからない。あくまで一例として読んでほしい。

起業すると、かならずお金をかけて宣伝広告を出す必要がある。媒体はなんであってもかまわない。記憶では、私が起業したあとに、はじめて出したのは地方紙の夕刊で3万円だったと思う。仕事に役立つ冊子が請求できる広告だった。

広告のあと、電話が殺到した。しかし、それは請求の電話ではなく、それを見た他の広告代理店からだった。「うちを経由して宣伝しませんか」と誘われた。実際の資料請求は一件もなかった。

通常の会社員だったら、3万円は大金だ。無駄遣いは許されない。しかし、事業をやっている以上は、そのコストは必要経費としてつぎこむ必要がある。簡単にいえば、こういう計算だ。

一人から資料請求があるとする。その一人を捕まえるためには、宣伝広告費20万円がかかるかもしれない。10人を捕まえるのに200万円がかかる。そのうち、実際に注文してくれるのは二人で、その二人は生涯にわたって210万円分の利益をもたらしてくれるかもしれない。とすれば、10万円は利益が出る。さらに、違う顧客も紹介してくれるかもしれない。だから、見た目は200万円と大きな金額だが、宣伝広告をやらないよりも、やったほうがいい。いや、やらねば永遠に繁盛の道は閉ざされる。

ただ、この計算を冷静に見つめられる人は少ない。というのも、毎日のように銀行口座からお金が減っていくのだ。「そりゃ、長期で見ればこの宣伝広告費は取り返せるかもしれない。でも、耐えられない」というわけだ。「利益があがるかもしれない。でも、お金の流出に気が気じゃない」

こういうときに、現代ではさまざまな逃げ道が用意されている。ツイッターで拡散したらいい、インスタグラムでフォロワーを増やせばいい、TikTokでバズったら一日5000人もフォロワーが増えるらしいぜ、とかだ。それは間違いではない。実例としてもありうる。ただ、考えてみればわかるとおり、そんな奇跡はほとんどのひととは無縁だ。奇跡は起こる。ただ、私は凡人だから奇跡は求めない。

凡人は確率論の世界にいる。勝たなくてもいい。負けなければいい。そのためには事実という不愉快な数字を見つめることだ。

当たり前に考えて、当たり前に対応する

私は冒頭で書いたように、コンサルティングに従業している。友だちと数人ではじめたコンサルティング会社を経営している。私たちは、プラグマティズム(功利主義)とリアリズム(現実主義)を第一としており、何よりも現実的に物事を考えてきた。

ただしこれは後付けの自己賛美にすぎない。実際には、私たちは現実的すぎる馬鹿者で、そして何より臆病者だった。

ベンチャーブームで、資金がじゃぶじゃぶと投下されていたとき、「何か事業を拡大しようと思わないんですか」と嘲笑されながら訊かれた。「内部留保を貯めないで、いまガンガンに投資するべきですよ」ともいわれた。

しかし私たちは「いまの売上が半減したらどうするか」「いまのコストが倍増したらどうするか」ばかりを考えてきた。そのために、クライアント1社からだけ受注するのをやめた。もちろん、1社から受注しているほうが効率的だし、利益率も高くなる。

その後、本業のコンサルティングに加えて、研修事業、講演事業、さらにはオンライン講義配信やDVD販売、また原稿の執筆もはじめた。分散とともに利益率は悪化し、そして効率性とはほど遠くなった。

そして、「1年間お客から注文がなくても生き延びられるようにしよう」と話した。2年間注文がなかったら、それは社会から求められていないんだろう。しかし災害や緊急事態で1年の仕事が滞る可能性はある。それは予想の範囲のはずであり、その程度で、自分たちの自由が阻害されていいはずがない。

周りからは馬鹿呼ばわりされた。事業は再投資が基本であり、どんどん事業を拡大するのが当然だからだ。さらに利益をあげれば税金がかかる。それならば使ってしまったほうがいい。しかし、私たちは馬鹿者で、さらに利口でもなかったので、自分たちが信じることをした。

1年分の事業資金を確保し、さらに、事業も分散し、また顧客も分散した。

主張(3)「自分は間違っていてほしいと願え」

私的な話が続くのをご容赦いただきたい。私は2010年に、それまで勤めていた企業を辞めて、少人数のコンサルティング会社に転職した。その1年後に東日本大震災が起きた。

当然だが、会社で請け負っていたすべての仕事に支障が出た。コンサルティングの仕事とは、いわゆる贅沢品だ。もちろん倒産防止コンサルティングであれば火事場で需要が高まるだろうが、通常のコンサルティングはそうではない。顧客からすれば、目の前の危機を凌ぐことが重要だ。

契約が残っている仕事はまだいい。ただ、顧客からしても、その年度の業績が不透明で、なかなかコンサルティングにお金を払い続けられない。ここで、私は冒頭で書いたエピソードと同様の経験をした。

「仕事がすべてキャンセルになった」

「いまの契約が終了したら、継続はできなくなった」

これは私だけではない。多くの人たちが、おなじく2011年に経験した。稼げる仕事に集中して儲ける。これは常識だ。しかし、その常識は一定の周期ごとに再考を迫られる。むしろその常識を捨てて、ゼロベースで考えてみる。プランBをもっておくことが重要だ。少なくとも想像しておくことは必要だ

私は、東日本大震災の経験から「あ、仕事はこんなにあっさりとなくなっちゃうんだな」「まあ、そんなもんだよな」と諦観のような感情を抱くにいたった。永続するはずもないのに、事業が永続するかのような錯覚。街灯の下でカギを探していたのは私だった。

ところで、私がそうであったように、なぜ普通のひとは常識を疑えないのだろうか。そして、思い込みを排し、データや事実にあたらないのだろうか。きっと理由は二つあって、うまくいっているし忙しいから考える時間がない、のと、そもそも自分の思い込みを補強する情報しか選択しない、からだと思う。

この二つについては、多くの心理学者らが人間性として論じている。なので、ちょっと違った点から加えるならば面白がる態度が重要だ。私が小学生のころ、テレビから流れてきたザ・ブルーハーツ「情熱の薔薇」の歌詞『見てきた物や聞いた事 いままで覚えた全部 でたらめだったら面白い』が印象に残っている。

私は自分の思い込みが間違っていたらいいのになあ、という奇妙な期待感を抱いて生きている。自分の思い込みがデータと反すると嬉しい気持ちになる。間違ったら面白い、と決めておけばいい。

リスクマネジメントは空想力と同じ意味

もっとも、何かのデータを選ぶこと自体にバイアスはかかる。自分が思い込んでいる、という思い込みからも自由にはなれない。自分が思い込んでいるはずだ、という主張の補強にしかならない可能性はある。

その可能性はあるとはいえ、自分が間違っている可能性を楽しむ態度は、きっと洞察的な生活をもたらすだろう。本書は、自分自身の常識や思い込みを覆すことになった調査報告だ。日本人の生産性は本当に低いのか、などを取りあげ、多くの常識に対抗するものとなっている。

繰り返すが、どのデータを用いるかには、著者のバイアスがかかる。しかし、それを疑う態度こそが、強い事業や、危機に耐性のある個人をつくり、さらには愉悦につながる可能性を私は信じている。

現代は何が起きるかまったくわからない。リスクマネジメントとは空想力と同じ意味になった。そしてその空想力は、「見たくないものを見る態度」、そして、「自分の思い込みが間違いであることを楽しむ姿勢」から生まれる

*   *   *

続きは、『稼ぐ人は思い込みを捨てる。』をご覧ください。

また、11月5日には、石戸諭さんをお招きして、発売記念イベント「思い込みの捨て方・事実との向き合い方、そして、稼ぎ方」をロフトプラスワンにて開催します。
配信も行います。アーカイブの視聴も可能です。
詳しくは、ロフトプラスワンのページをご覧ください。お申し込みお待ちしています!

関連書籍

坂口孝則『稼ぐ人は思い込みを捨てる。 みんなの常識から抜け出して日本の真実を見るスキル』

「日本人はリスクが嫌い」「日本人の生産性は低い」「日本人に起業家精神はない」などという、日本をめぐる言説が世にはびこるが果たして本当なのだろうか?本書は、その通説を次々と覆す。"コロナや地震、水害と予想もしなかったことが次々と起きる今、これまでの常識を当たり前と思う態度は、最大のリスクでしかない。自分が見ている現実にこだわらないこと。目の前の状況は世界の一部でしかないこと。その自覚が、危機に強い、個人と組織をつくり、自分の仕事と稼ぐ可能性を広げる。テレビ・ラジオでも人気のカリスマ経営コンサルタントが常にそのことを実践してきた。本書が伝えるのは、日本ダメ論にも、日本サイコー論にも惑わされることなく、日本の事実を見る態度と方法。その先に、仕事のお金の自由が待っている。

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稼ぐ人は思い込みを捨てる

10月8日発売の『稼ぐ人は思い込みを捨てる。』にまつわる記事を公開します。

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坂口孝則

1978年生まれ。調達・購買コンサルタント、未来調達研究所株式会社所属、講演家。大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買に従業。現在は、製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書に『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ 0円iPhoneの正体』『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』『稼ぐ人は思い込みを捨てる。』(小社刊)、『製造業の現場バイヤーが教える調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。

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