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稼ぐ人は思い込みを捨てる

2020.10.08 更新 ツイート

GoogleもFacebookも画期的なアイデアでないのだから「自分は起業できない」の思い込みは捨てていい 坂口孝則

Photo by Thomas William on Unsplash

予想もしなかったことが次々と起きる今、これまでの常識を当たり前と思い込んでしまう態度は、最大のリスクでしかありません。10月8日に稼ぐ人は思い込みを捨てる。を発売した著者の坂口孝則さんがビジネスの現場で感じてきた「思い込みの罠」とそこから自由になることのおもしろさをご寄稿くださいました。

3万円くれたら何でもやります

私はコンサルタントで企業に入り、プロジェクトを組んで目標達成に猛進する。この仕事をはじめて10年になろうとしている。私は思い込みがあった。コンサルタントになる前は、自分の知識と理論があれば解決策を導けると思っていた。

困っている人がいる。解決策を与える。しかし、現実は違った。というのも、困っている人はいないのだ。奇妙に感じるかもしれない。困っていたり問題意識を有したりしているのは企業のトップだ。現場には問題意識はさほどない。

トップから「困っている」と聞かされて、現場に入ると「困っていない」といわれる。だから最初の仕事は、現場の社員に理解してもらうところからはじまる。いや、極端な話、動いてもらうのが大半の仕事になる。

そして、もはや古い手法ではあるが、現場の社員と打ち合わせや食事を重ねると、じょじょに本音を話してくれるようになる。そこで私が「なぜそんなに非協力的なんですか」と質問する場合がある。すると「やっても給料があがらないから」といわれる。
これは素直な意見で尊重するべきだ。あくまで一人ひとりの社員は自分の合理性で動いている。経験は給料よりも貴重だ、という意見には私も納得するものの、大半はそうではない。

私は続けて「それなら、いくら給料があがったらやるんですか。部長か役員に私が相談してみましょうか。少なくとも、匿名でそのような意見があったと言ってみましょうか」と提案する。そうすると口ごもったあとに「そうですね……。じゃあ月に3万円とか5万円とか」といわれる。

私は3万円とか5万円が取るに足らない金額とは思わない。しかし、その差がゆえに、仕事をやりたくない、とは思わない。これも私の思い込みで、ちょっとのインセンティブで人は動いたり、動かなかったりするのだ。

自分に起業はできない、という根拠ない確信

私は、その続きで「いやー。その3万円とか5万円を動機にできるのであれば、いっそうのこと、起業すればいいのではないでしょうか」と提案する。そうすると、「私なんか無理ですよ」と返ってくる。

そのときに「私はできない」という根拠なき自信を披瀝される。その理由のトップ3は、次のとおりだ。

1. 起業のアイディアがありません
2. やってもすぐに潰れる
3. そもそも日本人は起業しない

まずは1.だ。

メディアは、革新的なアイデアをビジネスに結びつける起業家の姿が報じる。あのような記事を読むと自分には無理だと思い込む。もちろん世界的な経営者になろうという野望があれば別だが、ほとんどの起業は革新的ではなくてもかまわない。

一見、革新的だと思える事業も、かならずしも奇跡的なアイデアで成り立っているわけではなく、改善や改良を繰り返したものだ。

Googleは最初の検索エンジンではなかった。Facebookも世界初のSNSではなかった。iPadも初のタブレットではなかった。一説によると、Googleは12番目、Facebookは10番目、iPadは20番目だったという。重要なのは画期的なアイデアではなく、先駆者のモデルをブラッシュアップすることだ。

この事実は私にとって安心感を与える。

いまでは行くことがなくなったものの、夜の街あたりに出かけてみればいい。「社長!」と声をかければ7割くらい振り向くに違いない。あくまでも私の肌感覚だが、新宿歌舞伎町あたりには不動産業の社長が多い。ビジネスモデルを訊いてみると、あまり差別化できているものではなく、営業力で仕事を獲得している。

誤解しないでほしい。営業力が無意味といいたいわけではなく、むしろ逆だ。営業力という古くて普遍的なスキルでじゅうぶん起業できるのだ。

10年で会社は潰れるのはほんとうか

そして「2.やってもすぐに潰れる」だ。

SNSなどでは、起業を勧めるセミナーや教材であふれている。必ずといってもいいほど、宣伝文章に「せっかく起業しても10年後に生き残るのはたった数%です。だから正しい起業法を学びましょう」などと書いてある。

また、現在の私には起業家の知人が多いため、「今年でついに会社設立10年目を迎えます。これで1割に残りました」といった書き込みを見かける。

しかし、もちろん、倒産する企業はあるといえども、10年で9割が消えるとは、なんとなく実感にあわなかった。事業承継や放漫経営によるものはある。しかし、それなりに努力しているひとたちは、会社組織を作ったあと、かなりの割合が食えている。

そんなに会社は倒産するだろうか。

中小企業白書は、たまにこの話題を扱う。大手企業の存続年数を計算するものがあるが、もっとも面白いのは、2006年版だ。やや古いデータだが紹介してみたい。

ここでは創業後1年経った時点での生存率、2年経った時点での生存率……と平均値が書かれている。もちろん、個人事業所や会社では率が異なる。さらに時代背景にもよる。しかし、中小企業白書に記載されている、会社の数値生存率値を使って計算してみると、10年経った時点での会社の生存率はなんと36%にもなった。

さまざまなひとが起業しているはずで、そこには玉石混交、有象無象、海千山千が入り交じる。勉強熱心ではない人もたくさんいるはずだ。そのなかで、10年が経っても、3分の1以上の確率で生き延びて食っているとしたら、これは希望の数字ではないだろうか。少なくとも私にとってはそうだ。

日本人は捨てたものではない

最後に「3.そもそも日本人は起業しない」だ。

統計を見ると、開業数を見てみると、24万件となる(法人だけではなく個人を含む)。そして、米国は60万社となる。もっとも、国によって、こまかな会社の定義も異なるため、厳密な比較はできない、と各種統計も語っている。この数字をあえて使えば、次のようになる。

  日本:人口1億2000万人、24万社→一人あたり開業率は0.2%
  米国:人口3億3000万人、60万社→一人あたり開業率は0.2%

上記のようになる。なお労働人口で計算してみると次のようになる。

  日本:人口6720万人、24万社→一人あたり開業率は0.4%
  米国:人口1億6200万人、60万社→一人あたり開業率は0.4%

意外な結果だが、米国人と日本人の起業率にさほど変化がないと結論づけられる。

なお、この結果にたいして、「開業率は、個人の開業する小商いではなく、多人数の会社で比較するべきでは」といった意見もあるかもしれない。しかし、いくつかの先行研究でも、日米差は見られない(たとえば松本和幸さんの「企業数と新規開業率の国際比較」では「従業員 5人以上の事業所の新規開業率は低く日米で大差はない」としている)。

さらに「その多くが美容室、学習塾、飲食店、小売店などであれば意味がなく、ITなどの業種ではないといけない」という意見もあるかもしれない。私はこの意見にとくに反論はない。

ただ、大企業の美容チェーン、学習チェーン、小売チェーンも、さいしょは小さな一軒からはじまっている。また、特定の業種だけを持ち上げる気には、私はなれない。

思い込みから脱した先にあるもの

この世の中には思い込みにあふれている。もしかすると、冒頭で紹介した社員は「私はこういうものだ」という思い込みにがんじがらめになっているかもしれない。

そして私もいまだに思い込みをたくさんもっていると思う。しかし、それに自覚的なことによってこそ、思い込みを少しずつでも剥がしていけたらと考えている。そしてじょじょに自分が規定した枠から脱することが、私にとって自由を意味する

起業に限らず、社会、政治など、ネットには思い込みにあふれている。自分の考えすらもどこまでも疑うような態度。そして自分の考えが間違っていたとわかったときの愉悦。

新刊稼ぐ人は思い込みを捨てる。では、まさにその愉楽を私は発している。

関連書籍

坂口孝則『稼ぐ人は思い込みを捨てる。 みんなの常識から抜け出して日本の真実を見るスキル』

「日本人はリスクが嫌い」「日本人の生産性は低い」「日本人に起業家精神はない」などという、日本をめぐる言説が世にはびこるが果たして本当なのだろうか?本書は、その通説を次々と覆す。"コロナや地震、水害と予想もしなかったことが次々と起きる今、これまでの常識を当たり前と思う態度は、最大のリスクでしかない。自分が見ている現実にこだわらないこと。目の前の状況は世界の一部でしかないこと。その自覚が、危機に強い、個人と組織をつくり、自分の仕事と稼ぐ可能性を広げる。テレビ・ラジオでも人気のカリスマ経営コンサルタントが常にそのことを実践してきた。本書が伝えるのは、日本ダメ論にも、日本サイコー論にも惑わされることなく、日本の事実を見る態度と方法。その先に、仕事のお金の自由が待っている。

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稼ぐ人は思い込みを捨てる

10月8日発売の『稼ぐ人は思い込みを捨てる。』にまつわる記事を公開します。

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坂口孝則

調達・購買コンサルタント/未来調達研究所株式会社取締役/講演家。
2001年、大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買、資材部門に従業。
製造業を中心としたコンサルティングを行う。
著書に『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ 0円iPhoneの正体』『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』(小社刊)などがある。

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