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血圧を最速で下げる

2020.09.14 公開 ツイート

月曜午前は高血圧「魔の時間帯」 奥田昌子

食事や運動、生活習慣によって血圧を正しく効率的に下げる方法を説く『血圧を最速で下げる』(奥田昌子氏著)が発売即重版となり話題を呼んだ。ここでは本書の一部をご紹介する。今回は、ストレスからくる高血圧を改善する方法を探る。

*   *   *

(写真:iStock.com/wildpixel)

月曜午前は「魔の時間帯」

日常生活にひそむ目に見えないストレスは血圧を想像以上に押し上げます。
たとえば、会社勤めの人が心筋梗塞をはじめとする心臓病で亡くなる危険は、週のなかでも月曜日がもっとも高いことが示されています。
仕事を再開するストレスで血圧が上がり、心臓に負担がかかるからでしょう。とくに月曜午前は発生数が多いことから、「魔の時間帯」と呼ばれています。

こういう話を聞くと、「血圧がもともと高い人たちだったんだろう」と考えそうになりますが、それは少しちがいます。
健康診断で正常血圧と判定された会社員およそ160人について、日々の血圧の変動をくわしく調べた研究があります。
すると、全体の半数近くがじつは高血圧であり、17%が仕事中に血圧の高い状態が続く「職場高血圧」でした。

この人たちは血圧が上がるたびに血管が傷つき、心臓に負担がかかっていますが、血圧が正常値まで下がることもあるため、健康診断だけでは発見が困難です。
本人もまさか自分が高血圧とは思いもせず、なんの対策も取ろうとしません。
その結果、こういう人は一般的な高血圧患者さん以上に脳血管障害や心臓病を起こしやすいことがわかっています。

週のスタートをおだやかに切るために、「魔の時間帯」に仕事を集中させないよう意識して業務計画を立てましょう。いきなりエンジン全開で走るのではなく、ウォームアップにあてるためです。

 

気をつけたいのが週末の飲酒です。大量に飲酒すると翌日まで影響が残るため、ストレスが少ない人でも月曜朝の血圧はほかの曜日より高いことが知られています。
飲酒は就寝する3時間前までに切り上げましょう。

(写真:iStock.com/taa22)

睡眠時無呼吸症候群の2人に1人が高血圧

昨今増えているのが睡眠時無呼吸症候群です。無呼吸といっても呼吸が完全に止まるわけではなく、眠っているあいだに10秒以上止まると「無呼吸」と判定されます。


呼吸がひと晩に何十回も停止して、それが何年も続くとなれば、体にとって重大なストレスです。
慢性的な睡眠不足におちいるだけでなく、血管の壁をしっかり修復することもできません。

呼吸を再開させるときに心臓が強くはたらくことも明らかになっています。
これにより、睡眠時無呼吸症候群の人は約半数が高血圧で、心臓のリズムが乱れる不整脈の危険は一般の人の2倍、脳血管障害は4倍も高くなります。
深夜から明け方までのあいだに心臓に異常をきたして突然死する人の割合も約2.6倍高いのです。

(写真:iStock.com/paolo81)

肥満しているせいで息の通り道が狭くなって発症する例が多いものの、日本人を含む東アジア人はもともと喉の作りが小さいために、肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群になることがあります。

せまくなった喉を空気が無理に通ると「いびき」が発生するため、いびきをかいているとか、呼吸が止まっていると家族に指摘されたら要注意です。
また、こういう状態は口呼吸になりやすく、一人暮らしの人は、朝起きたときに口やのどが乾燥しているのを手がかりにして睡眠時無呼吸症候群が見つかることもあります。

血圧の薬を飲んでいて、生活習慣も改善したのに効果が不十分という場合に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることも珍しくありません。
これらの症状が気になる人は、耳鼻科、呼吸器科、専門の睡眠時無呼吸クリニックなどで一度調べてもらいましょう。

休日の朝寝坊は1時間半までに

(写真:iStock.com/Nattakorn Maneerat)

ストレスはあの手この手で血圧を上げます。
血圧が通常は午前中にもっとも高くなるのは、交感神経が活動を開始する時間だからです。ストレスが続くと交感神経ばかりが活発にはたらいて、血圧が下がらなくなってしまいます。
一方の副交感神経はリラックスのための神経です。おもに夜になるとはたらいて、心臓の収縮をやわらげ、血圧を下げます。
血圧を安定させるには、性質のことなる2つの神経が一日を通じてバランスよくはたらくようにすることが大切なのです。

といっても、難しいことではありません。体は便利にできていて、規則正しい生活を送っていれば、いつもの時間になると2つの神経が自動的に切りかわり、交感神経の暴走をおさえられるようになります。

基本は、平日と休日の起床時間が大きくズレないようにすることです。
平日は朝6時に起きるのなら、休日も7時半ごろには床を離れましょう。

朝も入浴するかシャワーを浴びると、皮ふにあたる湯の刺激で副交感神経から交感神経におだやかにバトンが渡ります。
日中はできるだけ体を動かして、起きているときと寝ているときの活動にメリハリをつけましょう。
昼寝は30分にとどめ、15時までに起きるようにすれば、夜の睡眠に影響を与えにくいようです。

関連書籍

奥田昌子『血圧を最速で下げる 老化を防ぐ「血管内皮」の鍛えかた』

「減塩すれば血圧は下がる」「少し高いほうが長生きする」「上と下の差が大きければ大丈夫」は全部ウソ! 本書では血圧を最速で下げる方法を最新研究から明らかにする。また血圧が上がると血管内部の膜(血管内皮)が傷つき劣化して、それが生活習慣病や全身の老化を招くとわかってきた。血管内皮を再生させて血圧を下げる食事や運動、生活習慣をていねいに解説。

奥田昌子『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』

消化管の病気を抱える日本人は1010万人にのぼる。最も多いがんも消化管のがんだ。ところが軽い胃もたれや下痢は「そのうちよくなるだろう」と見過ごされがちで、悪化はがんをはじめ重大な病気に直結する。最新の研究でわかった、強い消化管をつくるために欠かせない食事や生活習慣、ストレス対処法を解説。「管」のすべてが腑に落ちる。

奥田昌子『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』

内臓脂肪をほうっておくと高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、さまざまながん、さらに認知症の原因になることがわかってきた。だが、体質だからと諦めるのは早い。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、普段の食事や生活習慣の改善が減量に直結する。肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを、最新の論文をもとに解説。

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血圧を最速で下げる

2020年7月29日発売『血圧を最速で下げる 老化を防ぐ「血管内皮」の鍛えかた』(奥田昌子・著)の最新情報をお知らせします。

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奥田昌子

京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。愛知県出身。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察にあたる。航空会社産業医を兼務。著書に最新刊『血圧を最速で下げる』のほか、10万部を突破した『内臓脂肪を最速で落とす』や、胃腸を最速で強くする欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』『日本人の病気と食の歴史などがある。

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