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性犯罪者の頭の中

2020.09.15 更新 ツイート

他とは何かが違う…性犯罪者に共通する「毛穴が詰まった感じ」とは 鈴木伸元

著名な漫画原作者やタレントが逮捕されるなど、日々メディアを騒がせている性犯罪。こうした行為に手を染めるのは「粗暴で不気味な人」と思われがちですが、実態はかなり異なるようです。『性犯罪者の頭の中』(2014年5月刊行)は、そんな彼らの意外な素顔と、心の闇に迫った渾身のルポルタージュ。恐ろしい犯罪から自分やわが子を守るためにも読んでおきたい本書より、一部を抜粋してお届けします。

「薄い膜のようなものが覆っている」

西日本で活動しているベテランの保護司H氏は、刑務所での服役を終え、社会に戻ってきた性犯罪者の面倒を数多く見てきた。地元では熱心に活動する保護司の一人として、有名な存在だ。そのH氏に取材をしたところ、性犯罪者のことを、一風変わった表現で形容した。

「彼らは、毛穴が詰まっている感じがします。内向的という意味ではありません。身だしなみを小ぎれいにしていたりして一見普通なのに、周囲とは打ち解けようとしない、薄い膜のようなものが彼らの体全体を覆っている。うまく表現できないですが、まさに“毛穴が詰まっている”のです」

(写真:iStock.com/francescoch)

保護司とは、保護観察下にある犯罪や非行をした人たちの就職などの生活支援をしたり、困りごとの相談に乗ったりする民間のボランティアのことである。H氏と夫人はともに元教師で、退職後に地元で保護司として活動を始めた。

以来、15年近く様々な元受刑者の社会復帰を支援してきた。折に触れて自宅に招いて面接をしたり、バーベキューをしたりするなどの交流会を開催することで、元受刑者たちと打ち解け、心を開かせることに腐心している。彼らに社会での居場所を提供し、再犯に至らないようにするためだ。

ところが性犯罪者だけは、そうした方法をとっても、なかなか打ち解けることができないという。他の犯罪者とは何かが違う、とH氏は考えている。その違いを形容するのが、「毛穴が詰まっている」という言葉だ。

そんな状態のまま社会に溶け込めず、孤立したり自暴自棄になったりして、再び性犯罪を繰り返してしまうことをH氏は恐れている。

出所した性犯罪者の末路

刑務所を出所した性犯罪者の多くは、「自分はまた性犯罪をしてしまうのではないか」という再犯のリスクに怯えながら、ひっそりと暮らしている。

仮釈放となってから2年というC元受刑者は、見た目はどこにでもいそうな30代の男性だった。髪にはパーマをかけ、糊のきいたワイシャツを着て、小ぎれいな恰好で現れた。強制わいせつを繰り返し、懲役6年の刑に服していたようには見えない。ただ、先の保護司H氏の言葉を借りれば、「毛穴が詰まったような感じ」は確かにある。

(写真:iStock.com/tuaindeed)

「正直に言うと、また性犯罪を繰り返してしまうのではないか、と常に不安な状態で暮らしています。1日24時間のうち、8時間は働いていて、8時間は寝ている。とすると、残りの8時間はずっと性的なことを考えてしまうのです

終始一貫して、やや伏し目がちに話していた。社会に居場所を見つけられないでいる状況を如実に物語っていた。

 

仮釈放となり、刑務所を出てから数日間は、見るもの聞くものに体が異常反応したという。道を歩けば、スピードを出して走り去る車が怖かった。夜、コンビニエンスストアの照明が異様にまぶしく感じた。女性とすれ違うと、動悸がした。6年ぶりに戻った社会は、何もかもが違って見えた。

家族との関係もすっかり変わってしまった。逮捕前に一人暮らしをしていたアパートは引き払ってしまったため、両親の暮らす実家に同居することになった。ところが、母親は息子とどう向き合ったらいいかわからず、いつもそわそわし、また何かしでかすのではないかと怯えているのが手にとるようにわかった

「出かけようとすると、“え? どこで何をするの?”と聞かれました。明らかに不信の目で見られていました。やはり女性として、僕がやったことを信じられなかったのでしょうね」

 

実家にいづらくなったC元受刑者は、必死になって仕事を見つけ、両親のもとを離れて、一人暮らしをするようになった。「もう家族には頼らず、自分の力で生きていこう」と決意したのだった。

ところが、自分の時間・自分の空間ができたことで、性的なものを求める感情がC元受刑者の心を再び占めていった。仕事をしているときと寝ているとき以外は、一度そのことを考え始めると止められなくなってしまうという。

頭の中が性的な妄想でいっぱいになり、いかがわしい動画サイトを見たり、マスターベーションをしたり、風俗店に行ったりして、「性犯罪に結びつかずに、何とか毎日を乗り切っているという状態です」と言う。

 

性的なことを考えるきっかけは様々だ。職場で仕事上の失敗をして、落ち込んだ状態でアパートに帰ったときだったり、自分は犯罪者でこれからどう生きていけばいいのか考え、投げやりな気分になったときだったりする。

職場の同僚には、性犯罪の前科があることを話してはいないが、心を開いて何でも話せるような仲間もいない。ちょっとした言葉遣いなどで、自分がさげすまれているような感覚に陥ったときも危ない。

「結局、この状態から抜け出す方法を身につけずに社会に戻ってきてしまった。毎日ひやひやしながら生きていくなら、むしろ刑務所にい続けていたほうが、平穏に過ごせていたのではないかとすら思います」

関連書籍

鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』

★今ならポイント30倍★ 平成24年、警察に届けられた強姦は1240件、強制わいせつは7263件。だが実際の被害は約10倍とも言われる。性犯罪者は「外見も気持ち悪い人」と思われがちだが、実は身なりも会話も普通で結婚しているケースも多い。そんな彼らはなぜ性犯罪をし続けるのか? 「強姦するたびに自分がレベルアップしていく感覚があった」と十数件の性犯罪を繰り返す者もいれば、性犯罪をやめられない自分を苦に自殺する者もいる。共通するのは日常生活での“満たされなさ”。その感情がどう変化していくのか。彼らを性犯罪へと駆り立てる心の闇を赤裸々に綴った一冊。

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性犯罪者の頭の中

著名な漫画原作者やタレントが逮捕されるなど、日々メディアを騒がせている性犯罪。こうした行為に手を染めるのは「粗暴で不気味な人」と思われがちですが、実態はかなり異なるようです。『性犯罪者の頭の中』は、そんな彼らの意外な素顔と、心の闇に迫った渾身のルポルタージュ。恐ろしい犯罪から自分やわが子を守るためにも読んでおきたい本書より、一部を抜粋してお届けします。

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鈴木伸元

1996年、東京大学教養学部卒業。同年NHK入局。報道番組ディレクター。「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」などを担当。ギャラクシー賞の奨励賞を二度受賞。著書に『新聞消滅大国アメリカ』『加害者家族』(ともに幻冬舎新書)、『生活保護3兆円の衝撃』(共著、宝島SUGOI文庫) がある。

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