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性犯罪者の頭の中

2020.09.08 公開 ポスト

結婚式の数日前にも…。性犯罪者の止められない欲望鈴木伸元

著名な漫画原作者やタレントが逮捕されるなど、日々メディアを騒がせている性犯罪。こうした行為に手を染めるのは「粗暴で不気味な人」と思われがちですが、実態はかなり異なるようです。『性犯罪者の頭の中』(2014年5月刊行)は、そんな彼らの意外な素顔と、心の闇に迫った渾身のルポルタージュ。恐ろしい犯罪から自分やわが子を守るためにも読んでおきたい本書より、一部を抜粋してお届けします。

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やめたくてもやめられない……

A受刑者はおよそ5年間にわたって性犯罪を繰り返していたが、実は、その最中に結婚し、伴侶を得ている。

しかも結婚式の数日前にも犯行に及んでいるのだ。

(写真:iStock.com/Nastco)

犯行当日、結婚式の準備を終えたA受刑者は、いつものように住宅街を回って、襲う相手を探していた。しかし、適当な相手が見つからなかったため、半年ほど前から目をつけていた、ある少女の自宅を見に行った。

少女の自宅は、電気がついていなかった。A受刑者は「留守だ」と判断し、犯行に及ぶには好都合だと考え、少女の帰宅を待つことにした。そして、帰宅したところを、自宅に押し入り、背後から襲いかかって、強姦に及んだのである。

 

結婚という人生の一大イベントを数日後に控えているにもかかわらず、なぜ犯行を思いとどまれなかったのか。妻との絆は、A受刑者の性犯罪の歯止めとはならなかったのか。刑務所の面会室では、この辺りの疑問について繰り返し質問をした。

「正直言うと、結婚したときも心の底で、いつかこの関係は終わるだろうと思っていました。この頃になると、自分で性犯罪をやめたくてもやめられなかったのです

「大切な家族のために、犯行をやめるというのが普通だと思います。自分も妻との関係は崩したくないと思っていました。でも、そうさせない“裏の自分”がいました。表の自分が止めようにも、どうにも止められなくなっていました」

A受刑者の説明は、一貫してそんな内容だった。そうしたやりとりの中で、先のビデオカメラでの撮影の話も出てきたのだった。

「誰かに止めて欲しかった、というのが正直な気持ちです。わかってもらえないかもしれませんが……VTRで充足感が得られず、結婚しても犯行がやめられないとわかったとき、ああ、これは自分の力ではやめることはできないなと諦めました

 

逮捕直後の新聞では、結婚式当日、A受刑者は笑顔で職場の同僚や友人たちに囲まれていたと報じられている。盛大な結婚式だった。

一方で、被害者となった少女は、「大きな精神的ショック」を受けたと裁判資料には書かれている。A受刑者が立ち去った後、息も絶え絶えになりながら、自力で110番通報をし、救急車で病院へ運ばれたという。

ついに「裏の自分」が消えた

「自分ではやめたくても、やめられなかった」

そう語るA受刑者が、遂に逮捕される日を迎える。

(写真:iStock.com/YakobchukOlena)

その日も仕事を終えた後、事前に下見をしてあった住宅街を原付バイクに乗って走り回り、誰を襲おうかと考えていたという。カバンの中にはいつものように、犯行の際に使うビデオカメラやローションを忍ばせていた。

そして、帰宅途中だった20歳前後の女性に目をつけ、尾行し始める。

女性が自宅のマンションに入ると、その後を追って金網フェンスのついたブロック塀を乗り越え、敷地内に侵入しようとした。部屋に入る瞬間を先回りして待ち構えようとしたのだった。

ところが、別の住民に見つかってしまった。現場から逃げ去ろうとするが、その場で、取り押さえられる。

そのまま警察に連れて行かれ、住居侵入の罪で逮捕された

当然、警察は他にも余罪があるのではないかと追及した。だが、取り調べに対してA受刑者は当初、過去の数々の犯行については口にしなかった。逮捕当時の新聞では、警察の追及に対して「あいまいな説明を繰り返した」と報じられている。

 

実は警察はこの頃、地域一帯で発生していた少女を狙った連続わいせつ事件の犯人を追っていた。数年の間に、小学校高学年の少女が次々と襲われていたため、警戒を強めていた。

すでに、それぞれの事件現場に残されていた遺留物のDNA鑑定が進められていたのだ。そして一つのDNAの型が共通して検出されており、同一人物の犯行であることが突き止められていた

A受刑者が住居侵入で逮捕された現場は、警察がDNAの解析を進めていた事件現場から10キロ以上離れていた。だが、原付バイクで移動しているA受刑者は疑わしい存在であった。所持品にも、ビデオカメラなど不審な点があった。

警察は、A受刑者のDNAと過去の事件のDNAとを照合した。そして、その型が一致した。その一方で、A受刑者の自宅のパソコンからは、過去の事件を録画した動画データが次々と発見された。こうした事実を突きつけられたA受刑者は、全面的に犯行を認めた

住居侵入による逮捕ののち、さらに過去の度重なる性犯罪の疑いで再逮捕されることになる。

 

A受刑者は、当時の心境をこう振り返っている。

「大変なことをしてしまった、という思いはもちろんありました。ただ一方で、これでようやく終わった、という感覚も少しありました。自分ではどうにもならないところまで拡大していた“裏の顔”が遂に消えたのです」

関連書籍

鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』

平成24年、警察に届けられた強姦は1240件、強制わいせつは7263件。だが実際の被害は約10倍とも言われる。性犯罪者は「外見も気持ち悪い人」と思われがちだが、実は身なりも会話も普通で結婚しているケースも多い。そんな彼らはなぜ性犯罪をし続けるのか? 「強姦するたびに自分がレベルアップしていく感覚があった」と十数件の性犯罪を繰り返す者もいれば、性犯罪をやめられない自分を苦に自殺する者もいる。共通するのは日常生活での“満たされなさ”。その感情がどう変化していくのか。彼らを性犯罪へと駆り立てる心の闇を赤裸々に綴った一冊。

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性犯罪者の頭の中

著名な漫画原作者やタレントが逮捕されるなど、日々メディアを騒がせている性犯罪。こうした行為に手を染めるのは「粗暴で不気味な人」と思われがちですが、実態はかなり異なるようです。『性犯罪者の頭の中』は、そんな彼らの意外な素顔と、心の闇に迫った渾身のルポルタージュ。恐ろしい犯罪から自分やわが子を守るためにも読んでおきたい本書より、一部を抜粋してお届けします。

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鈴木伸元

1996年、東京大学教養学部卒業。同年NHK入局。報道番組ディレクター。「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」などを担当。ギャラクシー賞の奨励賞を二度受賞。著書に『新聞消滅大国アメリカ』『加害者家族』(ともに幻冬舎新書)、『生活保護3兆円の衝撃』(共著、宝島SUGOI文庫) がある。

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