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性犯罪者の頭の中

2020.09.29 公開 ポスト

よき家庭人、リーダー気質、おしゃれでモテる…性犯罪者の意外な素顔鈴木伸元

著名な漫画原作者やタレントが逮捕されるなど、日々メディアを騒がせている性犯罪。こうした行為に手を染めるのは「粗暴で不気味な人」と思われがちですが、実態はかなり異なるようです。『性犯罪者の頭の中』(2014年5月刊行)は、そんな彼らの意外な素顔と、心の闇に迫った渾身のルポルタージュ。恐ろしい犯罪から自分やわが子を守るためにも読んでおきたい本書より、一部を抜粋してお届けします。

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アメリカでは、41人の連続的性犯罪者のプロフィールを分析し、犯行の形態を手掛かりにして、犯人像を4つに分類した研究がある。

(写真:iStock.com/stevanovicigor)

・パワー主張型(power assertive)

パワー主張型の性犯罪者は、女性を支配し、犯行を通して自分が“男らしい”ことを誇示したいという潜在的な欲求があると考えられている。

結婚していたり、ガールフレンドがいたりしており、そこで支配関係を築きながら、さらにそれ以外にも性犯罪を通して女性を支配しようとするのである。普段はスポーツカーなどのお洒落な車を乗り回し、身だしなみもきちんとしている

また、犯行時間は夜7時から深夜1時にかけてが多いとされる。バーなどで飲みながら、ターゲットとなる女性を物色し、店を出てから犯行に及ぶ。その犯行は残忍で、被害者の衣服をはぎとり、あらゆる方法で暴力をふるう。分析によれば、一つの犯行から次の犯行に至るまでの周期は20~25日程度だとされている。

パワー主張型の犯行の根底には、低い自己評価がある。その自己評価を打ち消すかのように、もう一人の“強い”自分をつくり出し、そのイメージの具体化の一つとして、性犯罪に至る。普段の日常生活ではあり得ない“自分”をそこでつくり上げるのだ。

 

・パワー再確認型(power reassurance)

パワー主張型は、妻やガールフレンドがいるのに対して、パワー再確認型は、両親や母親と一緒に暮らし、ガールフレンドがいない独身者が多い

パワー再確認型の犯行は、徒歩で移動する場合が多い。自宅や職場の周辺で犯行に及びやすいという傾向もあり、車などの移動手段をもっていたとしても、活動範囲は広がらないという。

ターゲットとなる女性が決まれば、何日も行動を観察し、犯行のタイミングを待つことになる。犯行時間は、深夜0時から早朝5時にかけてが多い。夏の暑さなどで開け放したままの窓から侵入する。

パワー再確認型の犯行では、被害者の女性に対して、自分で衣服を脱ぐように求めたり、犯行後に被害者のことを気にして家に電話をしたり、再び同じ被害者を相手に犯行に及ぼうとする。

(写真:iStock.com/spukkato)

・怒り報復型(anger retaliatory)

怒り報復型の場合は、犯行に至る動機の根源的な部分に、女性に対する強い「怒り」があるとされている。

子ども時代に、離婚などの理由で母親との関係が引き裂かれてしまったり、母親の再婚によって新しい家族と生活せざるを得なかったりした経験をもつケースが多い。ただ逆に、母親と一緒に暮らしながら虐待を受けていたというケースも、このタイプに多いとされている。いずれにせよ、母親からの愛情に対する強い渇望感がある

彼らは、自分を強い男と感じたがっている。普段の生活でも人づき合いがよく、集団の中でもリーダーシップをとることが多い。“内気なオタクのような性犯罪者”というイメージは、ここでも存在しない。むしろ、スポーツ選手のように行動的である。

プロファイリングでは、結婚していたとしても、他に愛人がいることが多い。女性に受け入れられたいという願望が根底にあるからだろうか。

繰り返し犯行に至る周期は、短くても半年程度。もしくはそれよりも長いとされている。この4分類の他の3タイプと比較すれば、頻度は低いといえるだろう。

犯行の対象となるのは、自分と年齢の近い女性。年少の女性を襲うことは少ないという。常に場当たり的で、周到な計画を立てずに思いつきで犯行に至ってしまう。

 

・怒り興奮型(anger excitation)

4つ目の分類が、怒り興奮型と訳される、最も攻撃的で危険な性犯罪者だ。そして、最も「洗練された」性犯罪者でもある。

プロファイリングによれば、このタイプは結婚して家庭生活を営んでいることが多く、しかも普段は社交的でごく平均的な社会人のように見える。近所からは「よき家庭人」のようにすら見られていることが多い。

しかし、その裏で、彼らの犯行は極めて用意周到に行われる。ターゲットの女性が決まると、時間があれば尾行して生活パターンを知るところから始まる。そして誰にも目撃されることなく犯行に及ぶため、捜査は困難を極めることになる。犯行も暴力的で、被害者に対する感情はほとんどうかがえないという。

そして、被害者が傷ついている姿を見て喜ぶ。しかも、その後、殺人にまで及ぶことがある

このタイプの犯行は、他の分類に比べて、あまり周期的ではない。一度犯行を行えば短期間に次々と重ねることもあれば、1年以上犯行に及ばないこともある。

 

こうして4分類のプロファイリングを見ると、現代アメリカでは、性犯罪が「性的・衝動的」な理由だけで繰り返されているわけではないと考えられていることがわかる。その人物の社会的な人間関係などが問題の基盤にあって、その中から性犯罪というゆがんだ願望が生まれてくると考えられているのだ。

関連書籍

鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』

平成24年、警察に届けられた強姦は1240件、強制わいせつは7263件。だが実際の被害は約10倍とも言われる。性犯罪者は「外見も気持ち悪い人」と思われがちだが、実は身なりも会話も普通で結婚しているケースも多い。そんな彼らはなぜ性犯罪をし続けるのか? 「強姦するたびに自分がレベルアップしていく感覚があった」と十数件の性犯罪を繰り返す者もいれば、性犯罪をやめられない自分を苦に自殺する者もいる。共通するのは日常生活での“満たされなさ”。その感情がどう変化していくのか。彼らを性犯罪へと駆り立てる心の闇を赤裸々に綴った一冊。

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性犯罪者の頭の中

著名な漫画原作者やタレントが逮捕されるなど、日々メディアを騒がせている性犯罪。こうした行為に手を染めるのは「粗暴で不気味な人」と思われがちですが、実態はかなり異なるようです。『性犯罪者の頭の中』は、そんな彼らの意外な素顔と、心の闇に迫った渾身のルポルタージュ。恐ろしい犯罪から自分やわが子を守るためにも読んでおきたい本書より、一部を抜粋してお届けします。

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鈴木伸元

1996年、東京大学教養学部卒業。同年NHK入局。報道番組ディレクター。「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」などを担当。ギャラクシー賞の奨励賞を二度受賞。著書に『新聞消滅大国アメリカ』『加害者家族』(ともに幻冬舎新書)、『生活保護3兆円の衝撃』(共著、宝島SUGOI文庫) がある。

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