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感情バカ

2020.09.12 公開 ツイート

グレーを認められない「二分割思考」がうつ病を引き寄せる 和田秀樹

「感情の動物」と呼ばれる私たち。喜びや楽しみがあるからこそ、人生は豊かになります。ところが怒りや不安などのネガティブな感情、あるいは自分でも気づかない服従、同調、損失回避といった感情のせいで、どんなに知的な人でもバカな判断をすることがあります。そんな「感情バカ」のメカニズムを解き明かし、バカにならないためのコツを教えてくれるのが、精神科医の和田秀樹さんが贈る『感情バカ』です。その中から、とくに私たちが陥りやすい感情をご紹介しましょう。

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「かくあるべし」に縛られる人たち

「感情的判断ではなく、正しい判断だと思っている」ということ自体が、実は感情的な判断であるというパターンもあります。

その代表的なものが「should thinking」とか、「かくあるべし思考」などと呼ばれるものです。

(写真:iStock.com/taa22)

これは、“かくあるべし”という枠の中でしか判断できないというものです。たとえば「人間は働かなければいけない」と思っている人たちは、自分がうつ病になって働けなくなったときに、「ああ、オレはもうダメな人間なんだ」と考えてしまいます

そういう人たちが、「人間は誰にでも、心の状態や体の状態によって働けなくなることがあるので、生活保護のような社会保障のシステムが制度化されているのである」という当たり前のことに気付いていれば、そんなに悲観的にならずに済みますが、“かくあるべし”という思考に囚われているので、身動きができなくなり、自分で自分を縛ってしまうのです。

かくあるべし思考の人は、自分がその“かくあるべし”の状態でないと苦しみを感じますし、他人に対しても、“かくあるべし”でない人は許せないという怒りを感じます。その点でも、感情的になりやすいと言うことができます。

 

たとえば「人間は働かなければならない」というかくあるべし思考を持っていると、有給を取って会社を休む人や、残業をしない人を見たら、「こいつは全く働く気のないヤツだ」とか、「いい加減なヤツだ」と腹を立て、「会社に雇われている以上は、どんなに自分の都合があっても、有給など取らず、残業もすべきだ」などと、他人にも押し付けようとします。

生活保護バッシングも、このような「かくあるべし思考」によって起こるのではないかと私は考えています。

また、かくあるべしでない人に対して、いったん「あいつはいい加減だ」などとレッテルを貼ってしまうと、その人がたとえば会議で正しい発言をしても、「お前みたいなサボリ屋が何を偉そうなことを言っているんだ」といった怒りの感情が出てきて相手の言うことを認めることができず、ますます判断がゆがめられてしまいます。

このように、「かくあるべし思考」は、何重の意味でも好ましくない判断・思考パターンだと思います。

グレーを認められない「二分割思考」

かくあるべし思考のように、人間の判断をゆがめてしまう思考パターンを「不適応思考」と言います。

不適応思考というのは、認知療法を生み出したアーロン・ベックの後継者に当たるアーサー・フリーマンという心理学者が、うつ病になりやすい人の特徴としてまとめたものなのです。そのフリーマンが、「かくあるべし思考」のほかに、不適応思考の代表として挙げているのが、「二分割思考」と言われるものです。

二分割思考というのは、味方でなければ敵、正義でなければ悪というように、二分割する、物事を白か黒かにはっきりと分けるような極端な考え方です。

(写真:iStock.com/Geerati)

この考え方がまずいのは、白と黒の中間には当然グレーの部分があるのに、その中間部分が見えなくなっている点にあります。

たとえば、味方だと思っていた人がちょっとでも自分の批判をすると、「こいつは敵になった!」と怒りに駆られて判断したり、逆に敵だと思っていた人に褒められたとたんに、味方だと思い込んだりしてしまいます。通常は、どちらかというと、味方を敵にしてしまうことが多いので、こういう思考パターンの人は孤立しやすいと言うこともできます。

また完全主義の人の場合は「完璧でなければ失敗」という捉え方をするので、仕事でちょっとミスをしただけで、「オレはダメなんだ!」と落ち込んだりします。このような点から、二分割思考の人は、うつ病になりやすいのです。

二分割思考をする人は、「あいまいさ耐性」が低いと言い換えることができます。あいまいさ耐性とは、白と黒の間のグレーの部分をどれだけ認められるかということです。

たとえば相手を見るときに、「まあ8割ぐらいは味方だろうけど、2割ぐらいは敵の要素があるな」と思えれば、冷静に話を聞くことができるわけですが、それができないので、「あいつは敵だ」と、感情的になってしまいます。

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この続きは幻冬舎新書『感情バカ』でお楽しみください。

関連書籍

和田秀樹『感情バカ 人に愚かな判断をさせる意識・無意識のメカニズム』

喜びや楽しみの感情があるから人生は豊かになり、怒りや哀しみも生きるバネになる。だが、感情が過剰になり理性とのバランスを失うと、どんなに知的な人でも、信じられないほど愚かな判断をする「感情バカ」になる。しかも怒り・不安のような意識できる感情だけが問題なのではない。自分では気づかず無意識のうちに感情的になることで、「服従」「同調」「損失回避」など心のクセが働き、判断はゆがんでしまうのだ。「感情バカ」のメカニズムを解き明かし、感情のせいで苦しむ・損する人生を抜け出す方法をアドバイス。

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感情バカ

「感情の動物」と呼ばれる私たち。喜びや楽しみがあるからこそ、人生は豊かになります。ところが怒りや不安といったネガティブな感情や、自分でも気づかない服従、同調、損失回避といった感情のせいで、どんなに知的な人でも「バカな判断」をすることがあります。そんな「感情バカ」のメカニズムを解き明かし、バカにならないコツを教えてくれるのが、精神科医・和田秀樹さんの『感情バカ』です。その中でも、私たちがとくに陥りやすい感情をご紹介しましょう。

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和田秀樹

一九六〇年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『バカとは何か』『感情バカ』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。

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