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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2020.07.12 更新 ツイート

掘り出し物かもしれない海外ゲームをプレイして思ったことカレー沢薫

最近はコンテンツ自体は無料で公開して広告料で利益を出すという商売の仕方が普通になってきている。

よって、ネットサーフィンをしていても、ほぼ必ず、自分の口から肥溜めの匂いがしたり、子作りに消極的な夫にイラついたり、逆に子作りの過程だけに積極的な漫画などのバナー広告を目にすると思う。

それらの広告は邪魔に思うことも多いのだが、たまに「運命」と言っていいほどの出会いもある。

 

ネットで見かける広告というのは漫画や長茎サプリだけではなく「ゲーム」も多く、時には海外のゲーム広告が表示されることもある。

最近、私が出入りしている界隈で「興味深いゲームの広告が表示された」というタレコミがあった。

その広告に表示されていたのは、リアルタッチかつ、極めて凹凸のはっきりした顔立ちのキャラクターであり、一目で海外製のゲームとわかる代物であった。

しかし我々の目を引いたのはそのシチュエーションである。

セクシーなバスローズ姿の髭の壮年男性に肩を抱かれ、顔を赤らめる坊主頭の青年という構図で、その青年からは「彼は義父なのに……」というモノローグが出ていた。

我々は「これはとんだ拾いものかもしれない」と直ちに集合、話し合った結果「イケている嫁の父親に、今まで感じたことのないときめきを覚えて戸惑いを隠しきれないノンケ青年だ」という結論に達した。

達した結果我々は「やぶさかではない」という雰囲気になり、気が付いたら界隈の中から一名が鉄砲玉として、そのゲームをダウソしてプレイをはじめていた。

しかし、いざゲームをはじめて見ると、プレイヤーキャラは女性で、日本でいうところの所謂「乙女ゲー」のようなものが始まったという。

年の差BLと思ってクリックしたものが乙女ゲーだったら普通暴れるし、「不適切な広告」として即通報するところだが、そもそも「海外の乙女ゲー」自体、我々には馴染みがないので、興味深くはあり、そのままプレイを続けることとなった。

このゲームのヒロインは、数種類あるタイプから選べるようだが、一番薄い顔を選んでも、BoAを100人集めて1人に凝縮したような顔をしており、当然男性キャラも欧米系濃い顔のイケメン、もしくはハリウッドで活躍するアジア系スターの顔をしている。

このようにキャラ造形からして、日本人の好みとはだいぶ違うのだ。

そして成人向けではないが、17歳以上推奨、ということでかなりセクシーな内容となっている。

まず、ヒロインは金に困っており、家のローンを返済のため、金を持っている高校時代の同級生から、彼が恨みを持つ男を誘惑し変態セクロス(ほぼ原文ママ)動画を取ってこいという命令を受ける、というのが冒頭のストーリーだ。

若干刺激的だが、正直こういう話は日本のBLでもTLでも珍しくはない。

何故か受は金に困っていることが多く、そこに現れた腐るほど金を持っている攻の言うことを聞かなければいけない、というのは「晴れ時々曇りのち雨」ぐらいには良くあることである。

その後、その同級生から「男を誘惑するレッスン」を受けるというお約束展開があったり、羞恥訓練のため売春婦(原文ママ)の格好をして外を歩いたり、それを弟に見られたり、野良3Pを見かけたりと、17歳以上推奨だけあって日本とはまた異次元方向のセクシーイベント満載である。

随所に「お国柄の違い」を感じるのだが、一番違う、と感じたのはとにかくキャラがプレイヤーの「同意」を取ってくる、という点だ。

日本のように、壁ドンからキスされてそのまま、と言った風な、プレイヤーが明確にイエスと言わない内に「立ち合いは強くあたってあとは流れでお願いします」というような八百長相撲雰囲気プレイがほぼないのである。

変態セクロス(ほぼ原文)をしようかと言う時にも「どうしたい?」と必ずこちらの意志を聞き「してもいいか?」と必ずこちらのアグリーを取ってから変態するのである。

それどころか「変態ルール説明(要約)」まである始末なのだ。

変態セクロスと言うからには、SMチックなムーブも起こるかもしれない、そう言った、苦痛と快感が隣り合わせのプレイでは、何が嫌だけど良くて、何が本当にダメなのかが分かりづらくなってしまう。

よって、男性キャラがプレイ前に「本当に嫌な時はこの言葉を言ってくれ」と「合言葉」を設定してくるのである。

その合言葉とは「退却」である。

他に訳しようはなかったのか、言葉の高すぎる壁を感じるが、どれだけ盛り上がっていてもヒロインが「退却じゃ! 皆の者退けい!」と言ったら、このゲームの男は止めるし、そこまで不機嫌になることなく、ちゃんと家まで送ってくれるのだ。

おそらく日本の恋愛ものだったら「ここまで来て……退けるかよ……!」とかイケボで言ってなし崩すと思う。

このように、日本でも最近やっと重要性が論じられるようになった「性的同意」が、海外ゲームではフィクションであろうとも最優先事項として描かれているのである。

日本の乙女ゲーも昔に比べたら「ヒロインの同意表現」にこだわっていたりするのだが、未だに「こんな時間に男の部屋に1人で来て、危機感なさすぎじゃねえの?」と、未だに女が男の部屋に来たことが女の過失であるかのような表現が平気で出て来たりするので、冷やかしで覗いたこのゲームだが、正直感心してしまった。

しかし、倫理やコンプライアンスがしっかりしていることと、フィクションとの面白さはまた別次元だったりする。

「本当に嫌な時は「退却!」と言ってくれ」と事前にルール説明をしてくれる男は、コンプラ的には2兆点だが、萌え的には-5京点である。

「自分が未成年の時は気にならなかったが、大人になってから、未成年とつきあう成人キャラが受け付けなくなった」問題に代表されるように、己の加齢ともに、例えフィクションでも許容したがいものが増えて来る。

これは、心が狭くなったというより「意識が成長した結果」なので決して悪い事ではない。

しかし、全てのフィクションに対し「こんなの現実だったらありえない、許せない」とケチをつけるというのは、ハワイの寿司屋に乗り込んで「こんな寿司日本じゃありえない」と言っているのと変わらなくなってしまうし、楽しかったはずのフィクションが逆に苦痛になってしまう。

高い倫理観を持つのは大事である。

しかし、フィクションはフィクションとして楽しむという心も大事にしていかなければいけないし、作り手もコンプラを意識しながら、なおかつ面白いものを作っていかなくてはならない時代になった、と海外の変態セクロスゲーを見て改めて思った次第である。

ちなみに、我々が当初期待した「年の差BL」だが、その後、全く予想と違う話で、全員でしょんぼりしてしまう、という事態が起こったが、またそれは別の話だ、

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カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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