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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2020.07.27 更新 ツイート

アンジェリーク新作から考える人間のままならなさについてカレー沢薫

乙女ゲーの先駆け「アンジェリーク」の新作が発売すると発表され、界隈はいろんな意味で騒然としている。

しかし沸き立っている層の8割が30代以上、40オーバーも普通にいるので、急に立ち上がると尿漏れの恐れがある。
よって、そっと立ってからのマウンドへ猛ダッシュだ。

 

少なくとも、初代アンジェリーク現役プレイヤーは30代以上である、何故ならアンジェリークはもう26年前のゲームなのだ。
もし二十代の現役プレイヤーがいるとしたら、幼稚園年中ぐらいでプレイしてないと計算が合わない、さすがにそれは飛び級が過ぎる。

アンジェリークの新作が話題になったのは、ただ単に乙女ゲーのパイオニアの新作が出るからというわけではなく、設定が旧作と大きく変えられているところに大きく注目が集まった。

一番話題になったのはプレイヤーの分身たるヒロインの設定である。

アンジェリークのヒロインは「17歳の普通の女子高生」で彼女が突然宇宙の女王候補として召集される、というところから話が始まる。

まさに「乙女ゲーの歴史が、今始まったのである」という銀河万丈の声が聞こえてきそうな設定だ。
この後発売される乙女ゲーのヒロインもこの年代が非常に多い。

だが今回、発売決定したアンジェリーク新作のヒロインは25歳の社会人、しかも社会に疲れ気味の25歳なのだ。

この設定には賛否両論起こっている。

ヒロインと言えば、ティーン女子という設定には辟易しているのでこのぐらいの年齢でちょうどいいという声もある。

だが一方で「乙女ゲーの世界にまでリアルを持ちこむでない、本当に当時のリアルプレイヤーを意識するならヒロインは最低でも39歳とかでないとおかしい、25歳なんてアンジェリーク発売時生まれてもいないんだぞ、いい加減にしろ。」という、凄まじい勢いで自分の体を切り刻みだす怒りの抗議自殺をするものもいた。

どちらの意見も一理ある。
アンジェリークが乙女ゲーをこの世に広めたことは確かだが、何せ四半世紀前のゲームである。
プレイヤーも、もう十分、これ以上は結構、というぐらい成長し尽くしているし、世の中も随分変わった。

いつまでもJK歴20年というベテランの懐かしみだけをターゲットにしているようでは先がない、今の時代や価値観に合わせた変更も必要と言える。

しかし、時代に合わせることが乙女ゲーとして良いかはまた別の話である。
そうは言っても乙女ゲーは夢とファンタジーを楽しむゲームなので、現実的な設定より、17歳の普通の女子が突然何かに抜擢されてイケメンに囲まれるという話の方がやっぱり良かったということになる可能性はある。

ともかく吉と出るか凶と出るかは実際ゲームをプレイしみてみないとわからない。

ところで、古の乙女ゲープレイヤーというか、初代アンジェリークプレイヤーにはある特徴がある。

それは老人がことあるごとに戦争が如何に辛く、今の若者がどれだけ恵まれているかを語りだすように、昔のアンジェリーカーは「どれだけ昔の乙女ゲーがひどかったか」を隙あらば語り始めるのである。

「酷かった」というのはゲームシステムとか、グラフィックとかそんなチャチな問題ではない、出てくる男が「人間的に酷かった」のである。

良く知らない人からすると、乙女ゲーというのはイケメンキャラにチヤホヤされるゲームという認識かもしれないが、決してそんなぬるいものではない。

何せゲームなのだ、最初からキャラが落ちているようではゲームにならない、最初はそっけない態度のキャラと徐々に親密になり、最終的に「落とす」ことにカタルシスがあるのだ。

しかし、何せ乙女ゲーの歴史の1ページ目である、他に手本がなく全てが手探りなのだ。
その結果「そっけない態度」がただの暴言と理不尽になっていたり、ヒロインへの愛情の示し方が「頼まれてもないのにライバルキャラに嫌がらせをする」という、俺が親だったらこんな男たちとは死んでもつきあわせないという仕上がりになってしまっているのだ。

たとえ恋が成就しなくても昨今の乙女ゲーなら割と感動的なシナリオにしてくれているのに対し、初代アンジェリークは「好きです!」と告ったら「私は違うな」の一言で切り捨てられ、逆にこちらが振ったら「この私を振ったことを後悔するがいい」という捨て台詞を吐かれるのである。

しかし、砂糖が高価な時代、サツマイモだけが貴重な甘味だけだったように、乙女ゲーが他になかった時代、我々戦前の乙女ゲーマーはこれを、うめえうめえと食っていたのである。

アンジェリーク新作の話題が出たことにより、ツイッターにはやはり、昔の物資不足を乗り越えた戦士たちにより「昔の乙女ゲーはこんなに激辛だった」という昔話の花が咲いている。

それと同時に「新作アンジェリークも初代アンジェリークのノリにしてほしい」という意見も散見された。

やはり人間には、子ども達には同じ苦しみを味あわせたくない、そう思う気持ちがある一方で、「後続を同じ地獄に落さねば気が済まない」という気持ちがあるのである。

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カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

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コメント

不悪口ムラヤマ  まあ、砂糖でなくサツマイモが至高の甘味であるという派閥のかたもいらっしゃるでしょうしね アンジェリーク新作から考える人間のままならなさについて|カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~|カレー沢薫 - 幻冬舎plus https://t.co/T3dpWQ0QIF 6日前 replyretweetfavorite

オトメチカ  アンジェリーク新作から考える人間のままならなさについて|カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~|カレー沢薫 - 幻冬舎plus https://t.co/ubNoDbfJhG 9日前 replyretweetfavorite

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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