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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2020.06.27 更新 ツイート

老害BBAオタクとして言っておきたい「悪役令嬢」案件についてカレー沢薫

漫画や小説にも流行というものがある。

「転生しても天パだったし金はさらになかった」というような異世界転生ものは今でも人気であり、ネットサーフィンをしていると、セックスレス漫画の次に広告漫画を見かける。

そんな異世界転生ものの中でも最近は「悪役令嬢」を扱ったものをよく見るようになった。

 

悪役令嬢とは、乙女ゲーに出てくる、ヒロインであるプレイヤーに意地悪をしてくるような女性キャラの総称みたいなものである。

逆にその悪役令嬢を主人公に据えた作品が流行っているようだ。

乙女ゲー者として気にはなるのだが、乙女ゲー者ゆえに、子ども3人連れて実家に帰還した小姑のごとく小うるさくなってしまうことが目に見えていたし、何より売れている作品を読むと体が一瞬で赤紫色の臭い粘液になってしまい、ご近所に迷惑をかけるのであえて見ないようにしていた。

だが最近、乙女ゲーとか全然知らないけど、悪役令嬢ものを見たら面白かった、という人に出会った。
簡単な概要を聞くと、主人公はヒロインに意地悪の限りを尽くすが、ゲームの最後には悪事が露見し破滅してしまう「悪役令嬢」に転生してしまう。
しかしその展開を知っているがゆえに同じ轍を踏まないように振舞っていくという話らしい。

その時点で私の中の、子ども三人(全員男子)いる小姑が起床してしまった。

本物の乙女ゲーにそんな「悪役令嬢」は滅多に存在しないのだ。

悪役令嬢系作品を否定する気はない、読んだたら面白いのはわかっている。

しかし、乙女ゲーを知らない人が悪役令嬢作品を見て、乙女ゲーにはこういう自分の身分を鼻にかけ、最後罰せられて当然の性格が悪いライバルキャラの女が良く出てくるんだなと思われるのは困る。

いや、困らない、全然困らない。
就職面接官が、強火の古の乙女ゲーマーでない限りは困らないし、悪役令嬢を誤解している、という理由で落とす奴がいる会社にはむしろ入らない方が良い。

よってここからの話は「老害BBAオタクが突然怒り出した」というよくある現象だと思っていただければ幸いだし、命の母を用意していただければさらに助かる。

確かに、乙女ゲーにも、颯爽とヒロインを助け出す男キャラのスチルを表示させるためだけに、ヒロインを卑怯な手で陥れようとして、懲らしめられる悪役女キャラはいないこともない。

しかしそれは「モブ女」のムーブなのだ。
乙女ゲー作品のキャラクター紹介ページで肝である男性キャラ紹介の後のしんがりを務め「主人公のライバル」として出てくる女性キャラはそんなに小物ではない。

確かに、この位置にくるキャラは、庶民であることが多いヒロインに対し、それこそ令嬢であったり、何らか上の立場であるため、最初ヒロインを見下した態度をとってくることが多い。

しかし、卑怯なことをしてくることはあまりなく、努力しているのにヒロインの「主人公力(りき)」に圧倒され、嫉妬からヒロインに当たることはあるが、最後は謝罪し友達になったり、男そっちのけで、ライバルと親友になって終わるルートだって乙女ゲーには珍しくない。

つまり「悪役」と断言できるほど悪く、最後破滅するようなヒロインのライバル女キャラというのは乙女ゲーにはほとんど出てこないのだ。

元祖乙女ゲーである「アンジェリーク」には、ヒロインのライバルとしてまさに「悪役令嬢」的なキャラが出てくる。
もしかしたら、ここから乙女ゲーのヒロインのライバルと言えば悪役令嬢というイメージがついたのかもしれない。

確かに、初期の乙女ゲーというのは現在に比べて、若干手心がないので、令嬢のヒロインに対する当たりはきついのだが、それを言うなら男キャラのヒロインに対する態度もなかなかにコンプライアンスがなっていない。
令嬢がこの程度で罰せられるべきというなら、男キャラにも二度と転生しないレベルの天罰を下した方が良い。

しかしこの令嬢はだんだん高飛車だが世話好きで、抜けているヒロインのことを放っておけず、しかし令嬢としてのプライドからヒロインの力に嫉妬したりと、次々とエモーショナルな動きを繰り出し、最終的にヒロインの無二の親友となっていくのだ。

よってこの悪役令嬢はプレイヤーに嫌われるどころか「このキャラでプレイしたい」という声が多かったのか、この令嬢を主人公にしてプレイできるバージョンも発売している。

つまり、今流行っている、悪役令嬢側を主人公に据えるという方式をアンジェリークは20年以上も前にすでにやっているのだ。
今「20年前」という数字に気を失いかけたが、命の母ホワイトを痛飲したので心配はいらない。

このように、乙女ゲーのヒロインに敵対するキャラというのは、根は善人であり、むしろ良い子であるヒロインより別の意味でチャーミングであったりもする。

今悪役令嬢ものが流行っているのも、そんなライバル側が活躍する話を読みたいという、需要あってのことかもしれない。

しかし乙女ゲーを知らない人にも「悪役令嬢」という概念をわかりやすくするために、実際の乙女ゲーには出てこないような悪役然とした悪役令嬢の設定を出しているという可能性はある。

ただし乙女ゲーというのは、男キャラは大体メンヘラ、ヒロインは度を越した天然なため、一番常識人なのがこの「悪役令嬢」である場合も多い、ということも覚えておいてほしい。

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カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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