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100歳まで生きる手抜き論

2020.08.28 公開 ツイート

#2 100歳まで元気に生きるには「自宅をバリアフリーにしない」こと 吉沢久子

昨年3月、101歳で他界した評論家・エッセイストの吉沢久子さん。あれから1年以上経っても、彼女が遺した言葉は古びることがありません。『100歳まで生きる手抜き論』は、本人が実践してきた健康長寿のコツについて書かれた一冊。「仕方ないは魔法の言葉」「調子が悪いときはすぐ寝る」「お惣菜や市販品もどんどんとり入れる」「義理のおつき合いはしない」など、心も身体も軽くなることうけ合いです。中身を少しだけご紹介しましょう。

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「手抜き」運動のすすめ

10代の頃はバスケットボールをやっていたほどで、もともと体を動かすことは嫌いではありません。そうはいっても仕事を始めてからは日々忙しく、健康のためにスポーツにとり組むことはありませんでした。

(写真:iStock.com/mykeyruna)

日常的に心がけていたのは、外出したら、できるだけたくさん歩くことくらいです。わざわざウォーキングをするのではなく、「仕事や家の用事のついでに、体も動かしておこう」というわけです。

こうした「ついで運動」の習慣は、今でも生活の中に残っています。

牛乳を火にかけて温めるときなど、ちょっとした隙間時間でシンクにつかまってスクワットをしたり、椅子に座っているときにストレッチのまねごとをしてみたり。特別に時間をとらない「手抜き」運動でも、案外、効果はあるものです。

実は私もこれまで何度か、近所の川辺を早朝に散歩するといった習慣をつくろうかと試したことがあります。でも、1週間と続きませんでした。

無理に慣れない運動をとり入れようとするより、どうやら日常生活の中で体を動かすほうが、性に合っているようです。

あえて家に「バリア」を残す

もう一つ、私が体のためによかれと思ってやっていることを挙げるなら、家の中の段差や回り道を、そのままにしておいていることでしょうか。

(写真:iStock.com/banabana-san)

高齢になるとちょっとした動作がケガにつながることもあるのは間違いなく、周囲からは家をリフォームしてバリアフリー化したほうがよいと勧められますが、私は自分の家をバリアフリーにしようとは思いません

家の中で楽をするより、ちょっとした「バリア」を残しておくほうが、年齢とともに失われていく自分の能力を少しでも守り続けることにつながるのだと思っています。

段差に気をつけながら歩いたほうが、足腰を甘やかさずに済むでしょう。

また、わが家の台所はあえてあちこち動き回りながら作業しなくてはならないように物を配置しています。そのほうが、日々料理をする中で、自然に体を使う機会が増やせると考えているからです。

もちろん、高いところにあるものをとったり、重いものを運ぶといった動作は、無理をすると、ケガをしたり体を痛めたりすることも考えられますから、無理はしません。

でも、台車や踏み台などをうまく使えば、まだ自分でできる場面もあります

今は安定感のあるプラスティック製の踏み台が通販カタログ等にいくらでも出ていますから、そういったものを買い揃え、家のあちこちに置いてあります。

見た目は決してよくはありませんが、工夫しながら、自分を甘やかしすぎないようにしたいと思っています。

そして、そうすることが、今の年齢にちょうどいい運動になっているのです。

バリアフリー化については、もし家をリフォームしてバリアフリーにしても、一歩外に出れば、「バリア」でいっぱいなのだということも考えておいたほうがいいように思います。

そのような状況でも健やかに暮らしていくために大切なのは、自分の体の状態を知り、周囲にきちんと注意を払って動くことではないかと思います。

その意識を無理せず保ち続けるには、やはり家でラクをしすぎないほうがよいと考えています。

段差などがそのままの家では、暮らし慣れているとはいえ、うっかり転んだり体をぶつけたりすることはあります。

でも、そういったことも受け入れて緊張感を持ち続けることが、私にとってはいい刺激になっているのです。

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100歳まで生きる手抜き論

昨年3月、101歳で他界した評論家・エッセイストの吉沢久子さん。あれから1年以上経っても、彼女が遺した言葉は古びることがありません。『100歳まで生きる手抜き論』は、本人が実践してきた健康長寿のコツについて書かれた一冊。「仕方ないは魔法の言葉」「調子が悪いときはすぐ寝る」「お惣菜や市販品もどんどんとり入れる」「義理のおつき合いはしない」など、心も身体も軽くなることうけ合いです。中身を少しだけご紹介しましょう。

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吉沢久子

1918年、東京生まれ。文化学院卒業。家事評論家。エッセイスト。女性が働くことが珍しかった時代に15歳から仕事を始め、事務員、速記者、秘書などを経て、文芸評論家の古谷綱武氏と結婚。生活評論家として執筆活動や講演、ラジオ、テレビなどで活躍。姑、夫と死別したのち、66歳からの一人暮らしは30年を超えた。著書多数。

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