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食べる量が少ないのに太るのはなぜか

2020.07.30 公開 ポスト

時計遺伝子を整え、命の回数券「テロメア」を減らさない生活とは香川靖雄

糖質制限や断食、サプリメントに頼ったダイエットは間違いだった……。

長年、栄養学に携わってきた香川靖雄先生によると、ダイエットの基本は1日に3食とること。著書『食べる量が少ないのに太るのはなぜか』には、極端な食事制限なしに、無理なく痩せられ、太りにくい身体を作るというダイエット法が書かれています。1日のうちでどのような時間に、どのような速度、順序で食べるのが効果的か、その一部をご紹介します。

寿命を決める「テロメア」とは?

私たちの身体には時計遺伝子があり、朝日と朝食によって1日24時間のリズムにリセットされるようになっています。まるで振り子のように時を刻むことから、時計遺伝子と命名されました。

これに対して、私たちの一生の時を刻む働きをするのが「テロメア」です。

テロメアとは、細胞のDNAの末端についているひものようなもので、遺伝子情報を保護する大切な役目を持っています。

テロメアは、アメリカの3人の研究者により発見され、2009年にノーベル医学生理学賞が授与されました。

テロメアについて、もう少し詳しく説明しましょう。

(写真:iStock.com/eag1e)

私たちの身体はおよそ60兆個の細胞でできていますが、これらの細胞は絶えず生まれ変わっています。それを細胞分裂といい、毎日6000億もの細胞が死んでいます。髪の毛や爪は死んだ細胞の集まりであり、皮膚をこすると出てくる垢あかも細胞がはがれ落ちたものなのです。

これらの細胞分裂の回数は約50回と限りがあり、細胞のDNAの末端にあるテロメアが細胞分裂の数を覚えていて、分裂のたびに短くなります。そして、最後には細胞分裂できなくなるのです。

細胞分裂できなくなると、新しい細胞が再生されなくなるため、老化が進んでいきます。そして、すべての細胞の分裂が止まると、老化で人間の寿命も尽きてしまうのです。

 

そのためテロメアは、別名「命の回数券」とも呼ばれています。定期券ではなく、回数券と呼ぶのは、使用期限が決まっていないからです。大事に使えば、寿命も長くなるし、雑に扱えば、寿命も短くなるのです。

つまり、時計遺伝子が1日の長さを変えることができないのに対し、テロメアはどういう生活を送るかによって、命の時間を変えることができるのです。

この時計遺伝子とテロメアには関連性があります。時計遺伝子を無視した生活を送れば、テロメアに悪い影響を及ぼし、寿命を短くしてしまうのです。

健康で長生きしたいなら、体内時計を乱し、テロメアを短くするような生活をしてはいけないのです。

不摂生をすると早死にするワケ

命の回数券といわれるテロメアは砂時計のようなものです。たとえば、3分間の砂時計をひっくり返すと、なかに入っている砂がサラサラと落ちてきます。そして、3分きっかりに砂が尽きてしまいます。

人間の寿命も同じような構造になっています。テロメアの単位は塩基ですが、私たちは生まれたとき、約1万塩基のテロメアを持っています。それが細胞分裂によって短くなっていき、5000塩基になると寿命が尽きるのです。

普通に暮らしている場合、年間に平均して50塩基ずつテロメアが減るといわれています。

 

普通に暮らしている場合というのは、朝食を食べて時計遺伝子をリセットさせ、暴飲暴食をせず、適度に運動をし、夜更かしせずにしっかり睡眠をとる生活のことです。

こうした規則正しい生活をしていれば、テロメアの減り方は年間に50塩基となり、少なくとも100歳までは生きられることになります

これはあくまでも自然の寿命の場合で、事故死やガン、感染症には当てはまりません。しかし、普通に暮らしていれば、みな100歳くらいまでは寿命があるはずなのです。

(写真:iStock.com/yacobchuk)

ところが、普通の生活なら7年間で350塩基しか減らないテロメアを、1000塩基も減らしてしまった人たちがいます。彼らは、朝食抜きの生活や暴飲暴食、睡眠不足などの不規則な生活でテロメアを短くしてしまったのです。

こうした人たちを調べたところ、心筋梗塞や脳卒中になる確率が、普通に生活している人の約3倍にまで増えていることがわかりました。

つまり、時計遺伝子は直接テロメアに作用するので、時計遺伝子を乱すような生活をしていると、将来的に高血圧や糖尿病を引き起こし、それがテロメアの残り時間を縮めてしまうことになるのです。

肥満は放っておくと高脂血症になり、血管の内皮細胞がコレステロールで破壊され、それを補う細胞分裂が進んで、テロメアが短縮するのです。そのため動脈硬化が進んで心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが高まります。健康的に痩せることは、テロメアの砂時計の落ちるスピードを遅くすることでもあるのです。

ダイエットは将来の寿命にも大きくかかわってくるのだと心しておきましょう。

関連書籍

香川靖雄『食べる量が少ないのに太るのはなぜか』

「少食にしているのになぜ痩せないの?」と不思議に思うことはないだろうか。実はこれには生体リズムをコントロールしている「時計遺伝子」が大きく関わっており、その鍵となるのが「朝食」である。たとえば朝食を食べない人は、食べている人に比べてなんと5倍も太りやすいのだ。また朝食で発する熱量は夜食の4倍大きいなど、朝食は大きく代謝を上げることが明らかに。我慢をせず、好きなものを食べて痩せたいという人に、時間を活かした画期的なダイエット手法を、女子栄養大学の副学長が伝授。

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食べる量が少ないのに太るのはなぜか

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香川靖雄

女子栄養大学副学長。自治医科大学名誉教授。一九三二年東京生まれ。一九五七年東京大学医学部卒業。聖路加国際病院、東京大学医学部生化学助手、米国コーネル大学生化学分子生物学客員教授、自治医科大学生化学教授などを経て、現職。専門は生化学、分子生物学、人体栄養学など。

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