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アルテイシアの熟女入門

2020.05.26 更新 ツイート

ナイナイ岡村やおじさん芸人にJJが伝えたいことアルテイシア

「朝、豆腐屋よりも早く目が覚める」「夕方になると目が見えない」など、JJ(熟女)のSF(すこしふしぎ)現象は多々あるが、「股関節が外れそうになる」もラインナップに加えたい。

拙者はもう一生、松葉崩しはできないだろう。松葉崩しができなくても困らないが、四股が踏めなくなるのは困る。

老後のデンデラ(おばあさんシェアハウス)で相撲をとるために、「相撲健康体操」を始めた私。

これは日本相撲協会の公式チャンネルが配信している動画で、甲山親方が12種類の型をレクチャーしてくれる。股割り(180度開脚)しながら前屈する親方を見て「ぽっちゃりしたダルシムみたい!」と感動した。

 

この体操はダイエットにも効果的なので、興味のある方は試してほしい。ただし無理すると股関節が外れたり、ズボンの股の部分が裂けるので注意しよう。

最近は相撲健康体操とハンドクラップダンスを交互に行っているが、JJになると美容よりも健康目的で運動するようになる。

健康なRJ(老女)にはなりたいものの、「若者には負けんぞ」的なクソ意地はなく、肉体の老化を受け入れている。ただし、精神面のアップデートは怠りたくない。

有名人の失言が炎上すると「今の時代はアウト」とよく言われるが、本当は昔からアウトだったのだ。
批判の声が見える化したことで、燃えるべきものが燃える時代になった。その点はネットが普及してよかったと思う。

とはいえ女性差別発言が炎上した際の定型文、『不適切な発言によって不快な思いをさせて申し訳ありません』にモヤる女性は多いだろう。

我々は単に謝ってほしいんじゃなく、ちゃんと勉強してほしいのだ。

そしてその発言がなぜ不適切なのか? なぜ多くの女性が傷つき怒りを感じるのか? を理解してほしい。その根っこの部分がわからないと、また同じような差別が再生産されてしまうから。

アップデートできなさ加減でいうと、バラエティ番組などは特に感覚のズレにめまいがする。

3年前、とんねるずの番組で保毛尾田保毛男が炎上した時に「まだこれがオッケーだと思ってるんだ、面白いと思ってるんだ……!」と衝撃を受けた。

保毛尾田保毛男が流行ったのは30年前、私が中学生の時である。当時は私もおもしろキャラだと認識して、同級生とモノマネしたりしていた。

それは、私が無知な子どもだったからだ。セクシャリティ差別に傷つく人々の現実を知らなかったし、「この教室の中にもセクシャリティに悩む人がいるかもしれない」という想像力もなかった。

それを知った後では絶対笑えないし、人権を踏みにじる表現に怒りを感じる。かつて自分が無自覚に差別する側だったことを反省して、だからこそ声を上げなきゃと思う。

「今はすぐにネットで叩かれる」とぼやく声があるが、我々は「人を叩いて傷つける笑いなんか見たくない」と批判している。だって自分たちもさんざん叩かれてきたから。

俺の考えた最強の老後計画』に書いたが、私の初めての性被害は5歳の時だった。

子どもの頃から何度も被害に遭い、大人になっても痴漢やセクハラやストーカーに遭う。これが多くの女性が生きている現実なのだ。

ナイナイ岡村が風俗発言で謝罪した後、2014年にラジオでした発言が話題になった。

彼は痴漢に遭う女性を責めるような発言をした後に「時効ですけど」と前置きして、「(流れるプールで)僕もものすごく痴漢しましたからね」と話していた。

その件をネットで見た女友達が「私も小学生の時にプールで痴漢に遭って、それ以来プールに行けなくなりました」と話していた。

彼女は岡村の発言によって当時のリアルな感触がよみがえり、過呼吸になって涙が止まらなくなったという。

「そんなトラウマになるようなことをネタとして話す男性がいる、それを笑って楽しめる人がいる、それが本当に許せなくてつらいです。私は二度と彼が出てくる番組は見ません」

私も『麒麟がくる』を見ながら「岡村キター」とプーチン顔になっている。本音を言えば、性暴力をネタにするような輩は地下数百メートルに埋めて地層処分してほしい。

けれども彼1人を降板処分にしても、あまり意味がないと思うのだ。それよりも性暴力や性差別について学んで、今後、彼に発信していってほしい。

その発信は、私のコラムの2兆倍は効果があると思うから。それは知名度だけの問題じゃなく、基本、男は男の話しか聞かないから。

正確にいうと、ミソジニー(女性蔑視)が染みついた男性は、女性の言葉に耳を貸さないからである。

企業でセクハラ研修をしている弁護士の友人がいる。

彼女に「実際にセクハラするようなおじさんは研修を受けて改善するの?」と聞くと「正直難しいよ。長年染みついた価値観は変わらないし、むしろ悪くなるという研究もある。『セクハラだと? 女のくせに生意気な!』と逆ギレして、ミソジニーが強化されるんだよね」

その言葉を聞いて「おい、この世界は地獄だで」とアルミンと蟹工船が混ざった顔になった。

では男の言うことしか聞かない彼らに、注意してくれる男性はいるのか?

20代の頃、通勤電車で痴漢に遭ったことをおじさん上司に報告したら「顔射されたのか? (笑)」とイジられた。別の女性の同僚は「痴漢に触られて興奮した? (笑)」と聞かれたという。

強盗に遭った男性に「スリルを感じて興奮した?」と聞くだろうか?「そんな高そうなスーツを着てるからだ」と責めるだろうか?「男には性欲があるから」と言うけど、空腹時に美味そうな弁当があったら万引きするだろうか?

と反語責めで注意してくれる男性は、1人もいなかった。私もショックを受けつつ、何も言い返せなかった。だって相手は自分より立場が上の上司だから。

子どもの頃、テレビでドリフの痴漢コントが流れていた。性暴力を娯楽として消費する文化によって、感覚が麻痺している男性は多い。

バラエティ番組で武田鉄矢が「セクハラは必要悪」と語っていたが、「昔は気軽にお尻に触られてよかったわ~」と回顧する女性は見たことがない。

彼らは「昔は大らかで自由でよかった」と言うが、その自由は誰かの犠牲の上に成り立っていたのだ。それを理解できない老害が、偉そうにドヤ顔で説教してんじゃねえ。

みたいなことを、指原莉乃が武田鉄矢に言えるだろうか?(反語)

同様に、大御所のおじさん芸人に「その感覚ヤバいですよ」「時代遅れだし、つまんないですよ」と本音で教えてくれる人はいないだろう。つまらなくても空気を読んで笑ってくれるから、彼らはダンゴムシ師匠になってしまったのだ。

くさやダンゴムシ師匠は『ダウンタウンのごっつええ感じ』に出てきた、時代遅れのオワコンだけど、それに気づいてない大御所芸人キャラである。

若手にドヤ顔で説教する姿は、アップデートできない老害、裸の王様の象徴のようだった。かつての私はそれを見て爆笑していたし、今ネットで動画を見返しても面白かった。

おじさん芸人たちも本当は気づいてるんじゃないか。

「コーンフレイクか否か」というネタで爆笑をとる若手を見て、人を傷つける笑いはもう古い。人権感覚をアップデートしないと、もう誰も本気で笑ってくれないと。

スローすぎてあくびが出るが、このヘルジャパンでも人権意識が広まりつつある。人権を無視した表現、差別的な表現を見ると不快感や怒りを感じる人々が増えている。

性差別、性暴力、セクシャリティ、人種、外見、年齢、非モテ独身……などをネタにされても不愉快なだけで笑えない。そんな意見は昔からあったが、ネットのお陰で可視化されるようになった。

「だったら明確なルールを作ってくれ」とおじさん達は言うが、それこそが思考停止である。
時代が変わればルールも変わる。人権感覚をインストールしておけば、自分の頭で考えて判断できるようになるのだ。

そもそも、日本人はまともな人権教育を受けていない。

母親を殺した犯人はお前だ!』に書いたが、スウェーデンでは保育園から子ども達に「性別、民族、宗教、セクシャリティ、障害に関わらず、人間には全員同じ価値がある」と教えるそうだ。

ルッキズム(容姿差別)についても教えるため「人を見た目でジャッジしない」が子どもでも知ってるモラルの基本で「人の容姿について何か思ったとしても、口に出すのはマナー違反」が常識だという。

そうやって保育園から徹底的に人権教育するのは、真っ白な状態の時に教えておかないと、世間やメディアに間違った価値観を刷り込まれてしまうから。

という話を聞いて「スウェーデンに生まれてフェルゼンと美童が出てくる夢小説を書きたい人生だった」と俺は思った。

いやまだ終わらんよ。私は少しでもこの国を良くしたい、下の世代のために責任を果たしたいから。

「人権? 何それ美味しいの?」みたいな国民の方が、権力者にとっては都合がいい。
文句を言わず、権利を主張せず、思い通りに従うように奴隷教育すれば、自分たちが好き勝手やっても「自己責任」と政治に無関心でいてくれる。

一方、スウェーデンでは「政治を批判するのは国民の義務だし、むしろ良いことだとされている」という。

今からスウェーデンに転生するのは無理でも、人権を学ぶことはできる。
大御所芸人なんてお金持ちなんだから、本だって買い放題だし、専門家のレクチャーだって受けられるだろう。

自分の人権がわからないと他人の人権もわからないし、尊重なんてできない。本気で彼らが変わりたければ、まずは人権を学ぶところから始めるべきだ。

かつ、自分が強者だと認めるべきだと思う。

テレビで明石家さんまに「抱けと言われたら今晩でも抱きますよ」と言われた上沼恵美子が「私がイヤやわ」と真顔で返していた。それができるのは、えみちゃんだからだ。

これが後輩の芸能人だったら「嬉しい~」とリアクションするしかないし、「(セクハラされても)私だったら笑いで返します」と柳原可奈子も言っていた。

そうしないと生き残れない、まさに一般社会のハラスメントと同じである。そんなものをテレビで見せられても不愉快でしかない。

差別やハラスメントは基本、強者から弱者に行われる。ゆえに強者は己のパワーを自覚して、敏感でいなければならない。

けれども強者であるおじさんが「俺は差別なんかしてない! むしろ俺が差別されてるんだ!」と逆ギレするのは、なぜなのか?

若い頃、仕事関係のおじさんから「俺は貧乏で学歴もなかったけど、苦労してここまで来た」トークを聞かされた。

私は「それ何十年前の話ですか? 今は金も地位もあるのに、いつまで弱者ぶってるんですか? つかその話つまんないんですけど」と思いつつ「すごいですねー(棒)」と返していた。

おまけにその手のおじさんは「きみの家に行きたい」とか言うてくる、こちらがイヤでもハッキリ断れない力関係を利用して。

にもかかわらず「俺は差別される側だ! 叩かれる弱者なんだ!」と主張して、頑なに強者だと認めようとしない。それはかつて彼らが叩かれて、傷ついてきたからだろう。

先輩からしごきや体罰を受けた人間は、大体2種類の生き方に分かれる。

1つは「後輩に自分みたいな思いをさせたくない」としごきや体罰をなくそうとして、悪しき文化を変えようとするパターン。

もう1つは「俺だって苦労したんだ、おまえたちも我慢しろ!」「この程度で傷ついたとか言うな、俺はもっと殴られたんだ!」と、悪しき文化を継承していくパターンである。

後者の「自分は傷つけられたんだから、他人を傷つける権利がある」という認知の歪みをなおすには、まず傷ついた自分を認めて、その傷をなおす必要がある。
それで恨みや憎しみや苦しみの感情を手放せれば、「人を傷つけてはいけない」と心から理解できるだろう。

私は問題を起こした芸能人に必要なのは謝罪や処罰よりも、人権教育とカウンセリングだと思う。

芸能界のような弱肉強食の超スパルタな世界で生き延びるには、心に相当なストレスがかかるのだろう。

「校則が厳しいスパルタな学校はいじめが多い」というデータがある。強い者が弱い者を叩き、弱い者がさらに弱い者を叩く。
「ここは天国じゃないんだ、かといって地獄でもない」とブルーハーツは歌っていたが「いや地獄だで」と私は思う。

そして「人間よ、もう止せ、こんな事は」と高村光太郎顔で言いたい。

76年神戸生まれのアルテイシアは、小学生の時『4時ですよ~だ』に夢中になり、中学生になるとヤンタン木曜日に葉書を送り、『夢で逢えたら』を録画して何度も見ていた。

それから二丁目劇場に通い始めて、天然素材でブレイクする前のナイナイ岡村から手売りのチケットを買ったこともある。『怒涛のくるくるシアター』『爆笑ブーイング』といった番組の観覧にも何度も行った。

それだけお笑いを見るのが好きだったのに、今は「見たくないもの」になってしまったことが悲しい。さっきダンゴムシ師匠の動画を見たらやっぱり面白くて、本気でちょっと泣きそうになった。

私が涙もろい中年のおばさんになったように、あの頃見ていた芸人たちは中年どころか、ぼちぼち老年の域である。

だから、いつまでも子どもぶってるんじゃない。「男はガキだから」とか言って無知な子どものまま逃げ切ろうとせず、ちゃんと大人の責任を果たそうよ。

「Remember, with great power comes great responsibility.」(忘れるな。大いなる力には、大いなる責任が伴う)

『スパイダーマン』の有名なセリフだが、ピーターもなんやかや失敗してるし、私は失敗しても更生できる社会がいいと思う。本気で更生するためには、適切な教育やカウンセリングを受けるチャンスが必要だと思う。

拙者はそういう意見なので、ナイナイ岡村を罰したいとか、吉本興業に馬の生首を送りたいとか思ってない。むしろ義によっては助太刀いたす。

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アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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