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アルテイシアの熟女入門

2020.05.01 更新 ツイート

「女は年をとると価値が下がる」問題について、土俵を降りたJJが考えるアルテイシア

コロナコロナな毎日ですが、皆さんいかがお過ごしですか?

拙者は蟄居して漫画を読みまくっていたら、目が潰れそうになった。私は普段とあまり変わらない生活だが、大変なのは子どもが休校中のママさんたちだ。

小学生の息子が2人いる友人は「家にサンシャイン池崎が2人いるみたいな生活で、耳が潰れそう」と話していた。

40代は目や耳にガタがくるお年頃だが、口だけは衰えない。蟄居中もオンライン飲み会でしゃべりまくって、ストレス発散する日々である。

 

そんなJJ(熟女)人生を綴った『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』を読んだ女性たちから「年をとるのが怖くなくなった」「むしろ楽しみになった」と感想をいただく。

年をとるのが怖いのは「女は年をとると価値が下がる」という呪いのせいだろう。

ジェンダーギャップ指数121位のヘルジャパンではその呪いが強力だが、私はいざ若い女の土俵から降りた時、ものすごい解放感を味わった。

若い頃は若い女だからとナメられて、失礼な発言やセクハラをされまくったし、かと思えば「若い女だからってチヤホヤされやがって」と勝手に妬まれたりもした。

「若い女」という記号が外れたことで、「人間」として生きられるようになった。

それは想像以上に快適で生きやすく、「JJになってからが人生本番だよね!」と友人たちと寿いでいる。また「仕事において特にそれを実感する」と語るJJが多い。

大企業で管理職をする友人は「私が20代の頃は今より男尊女卑が強かったから、おじさん転がしの得意な女子が仕事で抜擢されたりしてたのよ」と振り返る。

「彼女らから『女の武器を使った方が得でしょ? なんで使わないの?』みたいな目で見られて『私は生き方を間違ったのか?』と心が折れた。何度も仕事を辞めようかと思ったよ」

ところが35歳を過ぎた頃に、変化が起こったという。

「彼女らがおじさんにはしごを外される姿を見たんだよね。結婚したら手のひらを返されたり、もっと若い女子に寵愛が移ったり……それで『自分の生き方は間違ってなかったな』とようやく認められるようになった」

地道にこつこつ実力をつけてきた友人と、女の武器を使ってきた彼女らでは、仕事で勝負にならないだろう。

正直「ザマア」という気もしなくはないが、彼女らを気の毒にも思う。男尊女卑な職場で「女の武器を使わなきゃ戦えない」と考えたのだろうから。つまり彼女らも、男社会と性差別の被害者なのだ。

一方の友人は「後に続く女子たちのために」という屯田兵マインドで、おっさん上司や性差別と戦ってきた。その姿が後輩たちから支持されて、現在は女性の多い部署の管理職として活躍している。

そんな我が友を「痛みに耐えてよくがんばった! 感動した! おめでとう!!」と抱きしめたい。ついでに巨大な優勝カップで身勝手なおっさんどもを殴り倒したい。

女の武器を使ってきた彼女らは、おっさんを利用しているつもりだったのだろう。でも相手の気分ひとつで、はしごなんて簡単に外されるのだ。
そして、若い女の土俵を下りた後の方が人生はずっと長いのだ。

男尊女卑を煮詰めたようなメディアで働くJJからは、こんな声が寄せられた。

「私が新聞社に入社した頃、若い女子が警察や官僚の取材担当をさせられたのよ。それって『女の武器を使ってネタをとってこい』と暗に指示されてるんだよね」

当時は尻や胸に触られるなどのセクハラは日常茶飯事だったという。また、彼女自身も「こんなことで傷つくのは弱い、むしろ利用するのが強い女だ」と刷り込まれていたという。

「でも実際はネタが欲しい会社とセクハラしたい取材先に、女の若さを搾取されて利用されてただけなのよ」

どれだけ地道に取材してネタをとっても「若い女だからとれたんだろ?」と正当に評価されない。性差別やセクハラ被害を受けているのに「女はイージーモードで得だよな」とナメられる。

「後に続く女子のために、こんな悪しき文化は変えなきゃダメだ、それが大人の責任だ」と、彼女も35歳を過ぎた頃に意識が変わったという。

若い女の土俵を降りた後「若い女の子たちを守りたい、どすこい!!」とシコを踏むJJは多い。私もそんなJJ力士チームの一員として、こつこつとコラムを書く日々である。

10年ほど前、私が「『フェミニズムを学ぶ』というテーマで本を出したい」と出版社に提案した時は「そんなの売れるわけがない」と見向きもされなかった。
それが今では「フェミニズムをテーマに書いてほしい」と依頼が来る。少しずつだが、時代は確実に変わっている。

ああ感激だな、ああ播磨灘、どすこい!! とシコ&韻を踏んでいた矢先、「女は30歳を過ぎると、自分の価値の8割ぐらいを剥ぎ取られるような気持ちになる」という発言を見て「90年代にタイムスリップしたのかな?」という気持ちになった。

資生堂インテグレートの「25歳を過ぎた女はかわいくない」「チヤホヤされない」というCMが炎上したのは、もう4年も前の話だ。その前年にはルミネの「男の需要に応える職場の花になれ」というCMが炎上した。

いずれも「こんな地獄は見飽きたぜ」と多くの女性が声を上げたからである。

女は年をとると価値が下がる、女は仕事の中身より見た目の華やかさが大事、そんな時代遅れで脅迫的なメッセージはもううんざりだ、いい加減にしろ!!

と顧客層である女性から嫌われたら、広告として失敗なんだから、そりゃ企業は取り下げるだろう。

これらは明らかなマーケティングの失敗だが、この時も「なんでも批判するフェミのせいで」とおなじみの声が上がった。

いやなんでもじゃないですよ、ジェンダー的にアウトだ、性差別的だと批判してるんですよ? と説明しても、先方はフェミニストを叩きたいだけなので、そもそも聞く耳を持たない。

フェミニストが声を上げるとアンチフェミからのクソリプが赤潮のように発生するが、赤潮チームの大半は男性である。

著名なフェミニストの女友達が「この男の人、毎日のようにメールしてくるのよね」と見せてくれたメールには「おまんこおまんこおまんこおまんこおまんこおまんこおまんこ……」と800個ぐらい並んでいて、脳みそ8ビットか? とめまいがした。

「コピペにしたって毎日送るのは手間だろう、どれだけ暇なのか?」と呆れる私に対して、彼女は「この彼も生まれた時はまっさらな赤ちゃんだったはずなのにね。なんでこんな風に育っちゃったのかな? と考えると、可哀想になる」と言っていて「菩薩かよ……」と手を合わせた。

アンチフェミの男性陣は「女のくせに生意気だぞ! 俺はそんな女に嫌がらせをしたい!」とシンプルでわかりやすい。

一方、あからさまにフェミ叩きをする女性は少なくて、「この人、本音はフェミニストが嫌いなんだろうな」と本音が透けて見える系が多い。

彼女らは「私も性差別には反対です」と前置きしつつ「でも、女はヒールを履いてメイクをして綺麗になりたいものでしょ? それを否定するフェミニストって幸せそうに見えない」みたいなことをおっしゃる。

#KuTooの石川優実さんは「職場でのヒールの強制に反対しているのであって、ヒールを履く女性を否定しているわけじゃない」と8万回は言い続けて、本人も飽きているだろう。

ヒールを履いてメイクをしたければ、すればいい。綺麗になりたければ、なればいい。
ただそれを他人に押しつけるな、「私はヒールを履きたくないしメイクもしたくない」という女性の選択の自由を奪うな、という明快な話なのだ。

それを本当はわかっているのに、わからないフリをしないでほしい。フェミニストを嫌うのは自由だけど、足を引っ張るのはやめてほしい。

そして公の場で発言する時は「女」という巨大主語じゃなく「私」と一人称で語ってほしい。もしくは(※個人の意見です)とちゃんと注釈を入れてほしい。

じゃないと「ほらやっぱりな!」と赤潮チームがわいてくるからだ。

たとえば「男に欲情されない女には価値がない」(※個人の意見です)と注釈を入れずに語ると、「ほらやっぱりな! 女は男に欲情されたいんだろ? それを自分の価値だと思ってるんだろ?」と誤解されて、セクハラを助長する。

『「おっぱい大きいねー!」と言った彼にこのJJコラムの感想を聞かせてほしい』は2019年フェミニズム記事人気1位だったそうで、多くの女性から共感の声が寄せられた。

“「おっぱい大きいね」「エロい体してるな、俺全然イケるわ(笑)」と本気で褒めてるつもりで言ってきて、セクハラだと気づかない。そんなふうに「普通」の男性の感覚が麻痺している、それがヘルジャパンの正体なのだ”

この記事がバズった時、10代や大学生の女の子からも「同じようなセクハラに悩んでいる」「学校に行くのがつらい」とDMが送られてきた。

これ以上、地獄を再生産するのはやめよう。大人は大人の責任を果たそうよ。

私が新入社員だった頃、優秀でも見た目が地味な女性の先輩は「女を捨ててる」と揶揄されていた。
見た目が華やかな先輩も、独身で彼氏がいないと「売り時を逃したな、もったいない」とおじさん上司に陰口を叩かれていた。

そういった言葉を聞くたび、私の心も削られた。「女」である自分が、中身のない空っぽで無価値なモノだと思わされた。

それから月日が流れ、44歳の私は「女は男に値付けされる商品じゃない、年をとろうが私の価値は下がらない、私の価値は私が決める、どすこい!!」と元気いっぱいに生きている。

そんな女を見ると、フェミ嫌いの女性は自分の生き方を否定されたように感じるのかもしれない。「モテないババアのくせに」とイラつくのかもしれない。

その気持ちはわからなくもない。だって自分の価値はどんどん下がっていくと思いながら生きるのは、つらいから。

20代の頃、飲み会で枝豆しか食べない女子に出会った。彼女は私や友人が唐揚げやピザをモリモリ食べるのを見て「よくそんなに食べるよね」とイライラした顔で呟いた。

その子はモデルのようにスリムだったけど、幸せじゃないんだろうなと思った。だからってそのストレスをぶつけんなよ! と当時の私はムカついたが、JJになった私は「つらかったら、こっちにおいで」と枝豆ガールに言いたい。
「その生き方がきつくなったら、いつでも路線変更してええんやで」と。

これ以上、母みたいな女性を再生産したくないからだ。

『母親を殺した犯人はお前だ!』に書いたが、私の母は“女の価値は美しさ”という呪いにかかったまま拒食症で亡くなった。土俵を降りられなかった母も、ミソジニー&ルッキズムでおなじみヘルジャパンの被害者なのだと思う。

「私は被害者なんかじゃない、そんな弱い女と一緒にしないで!」と言いたい女性もいるだろう。でもべつに強くなくていいじゃないか。つらかったら「つらい」と言えばいいじゃないか。

私は男尊女卑にぶん殴られて痛かったし、ビッチ時代はメンがヘラヘラでつらかった。だがJJになると目はかすむけどメンはごん太になり、かつ三次元の男やセックスに興味がなくなった。

「男にモテたい」「欲情されたい」といった欲望はもう遠い日の花火である。オナニーもめっきりしなくなったなあ……と遠くの緑を眺めつつ、老後に思いをはせている。

老後は女人だけのデンデラで、薫尼(くんに)と名乗って暮らしたい。みんなで相撲をとってちゃんこ鍋をつついて、濃厚接触したいなあ……と夢見るJJなのであった、どすこい。

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アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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