思えば歌舞伎町の中に入っていく時の私は、この先に人間が一般的に幸福と呼ぶような事態が待ち受けていないのを知っていたわけで、その見えきった不幸の確信を代償としてまで辿り着きたい境地があったとも思わない。進学のように「進む」でも、登校のように「登る」でも、入社の「入る」でも、出世や出陣の「出る」でも、昇進の「昇る」でもなく、堕ちていくという表現が何故使われるのかということも、ごく自然な予感として持っていた。
そう考えると何か目標のために犠牲や危険を厭わない、という男の好きそうな論理はそこになく、堕ちることそれ自体、不幸の確信それ自体こそが衝動を支えていたということになり、そんな狂った態度に男たちの理解が及ぶはずもなく、数多のフィクションや研究と称されるものの言葉が私たちを捉えきらないのも無理はない。
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夜のオネエサン@文化系
夜のオネエサンが帰ってきた! 今度のオネエサンは文化系。映画やドラマ、本など、旬のエンタメを糸口に、半径1メートル圏内の恋愛・仕事話から人生の深淵まで、めくるめく文体で語り尽くします。
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