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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2020.01.27 更新 ツイート

オタク趣味をカミングアウトするか否か問題カレー沢薫

旦那さんへのカミングアウトはどうしていますか?

ごくたまにされる質問、もしくは聞こえる幻聴である。

カミングアウトというのは、ソシャゲに年間50万ぐらい使ったこと、という話ではない、それなら墓まで持って行くと決めているし、バレたら「一括払いだから」という点を推して乗り切るつもりだ。

そうではなく自分が「オタク」であること自体についてのカミングアウトである。

 

そもそも「オタク」であることは「カミングアウト」などと言う大きな言葉を使わなければいけないほど重大なことなのだろうか。

確かに「使った金額」に関しては、松たか子がドアップになるぐらい「告白」という言葉がぴったりになるのだが、言ってみればオタクというのはただの趣味の1つである。

「オレ、皇居周りを走る癖が(へき)あるんだ」と、わざわざ家族を集めて発表したりするだろうか。

ただ、これに「全裸で」などの形容詞がつくなら「告白」になるし「通院」や「出頭」という言葉も同時に出てくる。

例えば、オタクであるが故に、夏と冬になると苦悶の表情で何か描き物をはじめ、ろくに寝てないのに、目が光っており、その内3日ぐらい姿をくらます、というなら、家族に対し説明責任がある。

さもなければ、確実にクスリをやっていると思われるだろう。

もしくは、自然界にない色の頭髪に、何故か胸と股間周りしか隠れてない甲冑を身にまとい人前に出て「ツイッターにあげていいですか?」という質問に対し「御意」と言ってしまう人も、一応説明しておいたほうがいいかも知れない。

つまり、家族の生活に影響を及ぼしたり、心配やショックを与える恐れがある、という場合は一応「事前申告」はしておいた方が良い気がする。

しかし、無課金でソシャゲを嗜み、小遣いの範囲でアニメや漫画を楽しみ、後はピクシブ毎日ぐーるぐる、推しカプ無エ、タグも無え、キャラ単体でもそれほどねえ、投稿はあるけれど、オラ以外を見たことねえ。

オラこんな村いやだ、オラこんな村いやだ、メジャーカプさいくだ。

……とは全く思いませんね、だってこの二人つきあってますし、ビッグサイトさ行って推しカプのDB(ドスケベブック)買うだ、と言いたいところですが「行ってもない」のはわかってますので、いきません、という人がわざわざそれを家族に言う必要があるだろうか。

オタクは全く後ろめたいことではないし、家族に影響がないならわざわざ「告白」などする必要はないし、まして家族から「許し」など得なければいけないものではないはずだ。

しかし、別に後ろめたく思っているわけではないが、家族にオープンにしておきたいという人もいるだろう。

その場合はちょっと注意した方が良い。

「自分は全く趣味を恥じていないからオープンにしたい」「家族には何事もオープンにした方がいい」という考えはあくまで自分のお気持ちであり、オープンにされた方がどう思うかは全く別の話なのである。

「オープンになりたい」という自分の意志を尊重し、股間をオープンにした露出狂に、見せられた側が「大事なところをオープンにしてくれてありがとう」と思わないのと同じだ。

私は夫に「拙者、二次元の男が大好き侍と申す」と改めて言ったことはない。

だが、特に隠してもおらず、クローズゼットを開けると、まずDBの表紙に描かれている推しのケツと目があう仕様になっている。

しかしそこまでしておいて、実は「夫は私がオタクなことに気づいていない」と最近まで思っていた。

元々世間に疎いところがあり「映画デビルマン」を「おもしろそうだったから」とレンタルビデオ屋でジャケ借りしてきたり、最近になって「知人に面白いと聞いた」と言って「アウトレイジ」を借りてくる人である。

きっとこの世にそんな趣味があるということすら知らない、とさえ思っていた。

しかし、最近それが間違いであったことがわかった。

詳細は省くが、先日我が家に大量の「TENGA」が届いた。

いつもは、私の荷物などに興味を示さない夫であるが、何故かその時だけ「何これ」と箱の中に手を入れ、こともあろうに、一番スタンダードなオレンジと白のストライプTENNGAをつかみ取ったのである。

アウトレイジを知らない男は日本に12人ぐらいいるかもしれないが、TENGAを知らない男児はおそらくゼロだと思う。

夫もさすがにそれが何かわかっただろう。

そして夫の行動は「一言も発さず、箱に戻し、去る」だった。

それが全てを物語っていた。

夫は気づいてないわけではなく「気づいていても何も言わない人」なのだ。

「告白」などするまでもなく、家族は全部気づいており、その趣味に対し全く理解もできないけど、別に迷惑かけるわけでもないからいいやと、すでに「黙殺」を決めている場合もあるのだ。

それなのに、改めて本人から「実は」と告白されたら、そのよくわからない趣味に対し、何らかコメントや、それに対する自分のスタンスを表明しなければいけなくなる、正直面倒でしかないだろう。

愛の反対は憎しみではなく「無関心」「無視」だと、マザーテレサじゃない誰かが言ってたし、1つの真理である。

だが、趣味に関してだけは「無視」こそが最善な場合もあるのだ。

気づかないふりをしてくれている人に対し「これがワイの趣味や」とわざわざ見せつけるのは露出狂を越えて強制わいせつなので、控えた方がいい。

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カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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