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カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄~

2020.02.12 更新 ツイート

「ファイナルファンタジー7」をやるかどうかはシド次第カレー沢薫

「ファイナルファンタジー7」が完全リメイクされると聞いてから3億年ぐらいたった気がするが、ようやく3月に発売するそうだ。
ただ、全編ではなく、途中までらしい。

古より、読者と遅筆な作家の間で繰り広げられる「完結と寿命のタイマンバトル」が始まってしまっているのではないか。
ちなみに寿命というのは、自分の寿命もあるが、作家の寿命もあるので分が悪い。

 

ただ、完全に「作者のやる気次第」な漫画などに比べゲームというのは会社が作っているので、まだ希望が持てる。

しかし、リメイクとはいえ、ソシャゲの単純作業に焼かれた脳に最新ハードのゲームは荷が重い。
よってプレイするかは未定だったのだが、PVなどを見ると様々なファイナルファンタジーとの思い出が甦ってくる。
そして、X -2のことを思い出した時点で、こめかみを押さえて再び記憶を失うの繰り返しだ。

ファイナルファンタジー7が発売したのは1997年である。
つまり今の10代は知っているどころか生まれてもいないという事実にBBAはまず1回死ぬのだが、当時私は14歳、つまりリアル中二である。

中二の時の経験というのはもはや「ふれる」というより、「ほられる」に近いのだ。

ケツをどうにかされたという意味ではない、それも忘れ得ぬ思い出になるとは思うが、尻よりももっと奥、つまりS字結腸、ではなく「心に刻まれる」という意味だ、そう簡単に消えたりはしない。

よって、すでにゲームを卒業ぎみな者ですら当時を思い出して「7だけははやらねば」と言っていたりする。

しかし、ファイナルファンタジー7は、我々、エヴァと椎名林檎を死ぬまで引きずる中年世代だけでなく、生まれてもいなかった若人がプレイしてもそこまで古臭さを感じないゲームだと思う。

ファイナルファンタジー7には、今のゲームや漫画などでも普通に見られる要素がかなりつめこまれているからだ。

まず主人公が割と冷めた性格であり、面倒事に巻き込まれそうになると普通に「何故俺が」という態度を取りがちなのだ。
しかし、主人公故に結局巻き込まれて「ヤレヤレ」となる、というかマジで「ヤレヤレ」というポーズを20年前のポリゴンで器用に何回もとってくれるのだ。

今でこそ決して珍しいタイプの主人公ではない。
むしろ、なろう系小説主人公にとっては「ヤレヤレ」など鳴き声に等しい、犬が「ワン」おキャット様が「愚かな人間よ」と言うぐらい当たり前である。

しかし、当時のRPGの主人公としては割と珍しい部類だったのだ。

またRPG故に最終的に世界の危機と戦うのだが、それと同じぐらい主人公が自分と戦う時間が長い。
これも昨今では当たり前だ、そもそもRPGの主人公は、世界とか国の運命をナップザック感覚で背負わされがちなのだから、少しぐらい悩ませてやれよと思うだろう。

だが昔のRPGの主人公は、突然背負わされた世界を「よっこいセックス!(爆笑)」と担ぎ上げてきたのである。

ファイナルファンタジーシリーズは、昔からキャラクターとその人間ドラマに重きをおいていたため、7ほど長尺ではなかったが、それ以前もそれなりに主人公の葛藤などは書かれてきた。

しかし、ファイナルファンタジーと人気を二分していた初期のドラゴンクエストの主人公は完全に「セックス!(略)」であった。

まず冒頭、王様に呼ばれ「魔王が復活したので倒して来い、なぜならお前は勇者なのだから」と言われる。
説明は以上だ、そして主人公である勇者は、その説明に納得して、本当に魔王を倒し世界を救うのである。
当時、社会現象にまでなった「ドラゴンクエスト3」ですら、そういうノリなのだ。

こういう主人公に慣れ過ぎていると「何で俺が?」とグズる主人公がウザく感じるのだが、人として当然の反応である。

むしろ「お前は勇者なんだから」という理由に納得して戦う奴の方がサイコパスみがあって怖い。
「魔王なんだから」と言われたら同じノリで世界を滅ぼすに決まっている。

つまり、ファイナルファンタジー7は、常に斜に構えている勾配32%みたいな男が、何故か複数、しかもタイプの違う女にアプローチされながら、仲間と出会い別れ、そして隠してきた己の弱さとも向き合い、最終的にデカいことを成し遂げるという、今の中二にも刺さる内容だと個人的に思っている。

よって親が「はわわわわ、塩酸、しめじ、ひらめ、出目金、セフィロス! セフィロス!」と発狂して、突然プレイステーション4を買ってきたというなら、冷ややかな目で見ずに、一緒にファイナルファンタジー7をプレイしても損はないと思う。

ちなみに、初期のRPGはキャラや人間ドラマが浅くて面白くないかというと、そんなことはない。

「自分探し」「戦う意味」「敵側の事情」など、本来ならゲームを面白くする要素が、ことごとく「うるせえ~!!!! 知らねえ~!!! FINAL FANTASY」としか感じられないこともある。

そんな時は「勇者だから」の一言で全てを説明してくれるゲームの方がありがたいのである。

結局私がファイナルファンタジー7をやるかどうかは「シド」が出てきてから決める、話はすべてそこからだ。
キャラ萌え豚であることは中二の時から何らかわっていない。

 

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カレー沢薫『カレー沢薫の廃人日記 〜オタク沼地獄〜』

だが、未だにガチャから学ぶことは多い、去年末、本コラムをまとめた『カレー沢薫の廃人日記~オタク沼地獄~』という本を出版させてもらった。 そのキャッチコピーは「人生で大事なことは、みんなガチャから教わった」なのだが、改めてこのコピーに嘘偽りはなかったと確信している、もはやガチャは人生の縮図と言っても過言ではない。

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カレー沢薫

漫画家。エッセイスト。「コミック・モーニング」連載のネコ漫画『クレムリン』(全7巻・モーニングKC)でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『もっと負ける技術』『負ける言葉365』(ともに講談社文庫)、『ブスの本懐』(太田出版)がある。

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