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アルテイシアの熟女入門

2019.11.01 更新 ツイート

「おっぱい大きいねー!」と言った彼にこのJJコラムの感想を聞かせてほしいアルテイシア

顔や二の腕は膨らむのに、乳はしぼむ。これもJJ(熟女)のSF(すこしふしぎ)現象だ。ちなみに背中も膨らむので、ブラのアンダーがきつくなる。

私は二十代から体重はほぼ変わっておらず、ぽっちゃり人生をのしのしと歩んできた。体重は変わらなくても、加齢によって「締まりのあるデブ」から「ダルダルのデブ」へとデブの種類が変わるのだ。この2つはフドウとハート様ぐらい違う。

とはいえ世紀末に住んでるわけじゃないので、デブの種類が変わっても困らない。脂肪が多い方が飢饉に強い・水に浮くなどのメリットもある。

 

しかしブラが合わないのはしんどい。よって「40歳を過ぎてブラを全部買い替えた」「わかる! 若い頃は高級ブラに凝ったりしたけど、今後の経年変化を考えてお手頃ブラにシフトした」と語るJJたち。

「もうブラジャーはしんどくて無理、ブラトップを愛用中」「そのうち腕が後ろに回らなくなって、フロントホックになるかもな?」など、女同士の下着トークは盛り上がる。

子持ちのJJたちは「授乳後、乳がしぼんで消滅した」「私はしぼまなかったけど、乳輪の面積拡大がすごい」「陥没乳首だったけど、赤子に吸われまくって乳首が出現した」など、知らない世界の話を教えてくれる。

とある子持ちのJJからは「授乳中に乳首が十字に裂けた」と聞いて「十字に! ヒイッ」と震撼した。
赤ちゃんが乳首を吸う強さは、マックシェイクを吸えるほどの馬力らしい。それで1日何度も吸われたら十字に裂けもするだろう。

彼女は血のにじむ乳首を吸われるたび、ヤスリでこすられるような激痛だったそうで、後輩妊婦に「妊娠中に乳首マッサージした方がいいよ!」と力説していた。

「母乳を出すためのおっぱいマッサージが死ぬほど痛かった」「全力でガシガシ揉まれて、気絶するかと思った」という話もよく聞く。

ひょっとすると男性の多くはお忘れかもしれないが、女性の乳房&乳首は赤ちゃんを育てるための大切な部品なのだ。

男性陣も金玉を全力でガシガシ揉まれたり、亀頭が十字に裂けたりすれば「こんなに大変なのか……!」と実感できるかもしれない。

女子校時代、同級生たちと乳輪の直径を定規で計って面積を求めたことがある。なぜそんなことをしたかというと「なんか面白そうだったから」。実際みんなでゲラゲラ笑って盛り上がった。

男の存在しない世界では、乳は「エロいもの」ではなく「単なる体の部品」だった。「女」ではなく「単なる人間」として生きられる世界は居心地がよかった。

「貧乳女子が巨乳女子をやっかむ」みたいなやつは二次元オンリーの話だ、と女性陣は声をそろえるが、私も現実でそんな目に遭ったことは一度もない。現実世界では、男にイジられることが圧倒的に多かった。

初対面の男に「すごい迫力だね(笑)」「目のやり場に困る(笑)」と言われたり「胸を強調してるの?」と聞かれたり。鼻の大きい人に向かって「鼻を強調してるの?」とは聞かないだろう。

そういうことが多すぎて、「巨乳を見せつけてる(笑)」とイジってきた男に「私が見せてるんじゃなく、お前が見てるんだろう!」とキレたこともある。目のやり場に困るなら、自分の目を潰せばいい。北斗の拳のシュウ先生をお手本にして。

子どもの頃から、通りすがりのおっさんに「お嬢ちゃん、おっぱいおっきいね!」とからかわれたり、すれ違いざまに触られたり、電車内で盗撮されたりと、何度も被害に遭ってきた。

そのたびに怖かったし傷ついたが、そういうことが多すぎて、昔は私自身も麻痺していたと思う。というか、麻痺させないと生きられなかったのだ。

先日、広告会社時代の同期会が東京で開かれた。神戸在住の私は仕事の出張をからめて、その会に参加した。20年近く会ってない同期もいたし、楽しみにしていたのだ。

その会で20年ぶりに再会した男子たちの第一声が「相変わらずおっぱい大きいねー!」「エロい体してるな~、俺全然イケるわ(笑)」だった。

それを聞いて「新幹線じゃなくタイムマシンで来たんだっけ?」と思った。そして「とっさにプーチン顔ってできないものだな」と実感した。

わが家には「いつも心にプーチンを」と女友達がくれたロシア土産のマグカップがあるので、それを見て練習したいと思う。またはいつもグラサンをかけた鈴木雅之キャラになるか。

同世代の彼らのアップデートできないおじさん仕草、無自覚なセクハラに面食らって「お、おう」的なリアクションしかできなかった私。

何より恐ろしいのが、彼らは普通のいい人なのだ。普段は常識があって気づかいもできるし、頭がよくて仕事もできるし、「娘が中学生になったんだよ~」と話す子煩悩なパパでもある。

そんな人が平気でセクハラをする、というかそもそもセクハラだと気づかない。もし私がプーチン顔をしたら、彼らは「えっ、褒めたのになんで?」とアホになるのだろう。

その顔を「違う、そうじゃない♪」と歌いながらビンタしたいが、ビンタせず冷静に「もう令和やぞ? その感覚はヤバいぞ」と説明しても「えっ、なんかキャラ変わった?」と彼らは戸惑うのだろう。

そして「面倒くさいフェミニストのおばさんになったな」と内心思うのだろう。自分がアップデートできないおじさんだとは気づかずに。

普通の男性の感覚が麻痺している、それがヘルジャパンの正体なのだ

公の場で女の体を性的対象物として扱っていい、それが「普通」。女の体について男があれこれ品評する、それが「普通」。女は男にヤれる女認定されると喜ぶ、それが「普通」。

そんな価値観が「普通の日常」の中に溢れすぎていて、おかしいことだと気づけない。

そんな男性ばかりじゃないのは事実だが、20年ぶりに再会した第一声で「チンポ大きいねー!」と言う女子はいないだろう。チンポは目視できないけれど、「エロい体してるね~、私全然イケるわ(笑)」とからかう女子もいないだろう。

初対面の男子に性的イジリをする女子も見たことがない。そんなことしたら周りはドン引きして、ヤバい女認定されるだろう。

一方、それが男だと「普通のコミュニケーション」として認識される。巨根イジリする女はアウトだけど、巨乳イジリする男はオッケー。

その同期会でも周りは彼らの発言をスルーしていた。私だけがドン引きして「彼らにとって、世界はキャバクラなんだな」と思っていた。

相手は「もう、のび太さんのエッチ!」的なリアクションを期待していたのだろうが、私はしずかちゃんじゃないし、ここはキャバクラじゃない。20代の私は無意識に無料サービスをしていたが、ここはもう令和の世界なのだ。

だから「絶対に乗ってたまるかよ」と真顔を貫いた。そして内心モヤりつつも「よかった、私、アップデートできてる」と安心もしていた。

九九でいうと一の段だが、思うのと言うのは違う。「エロい」「ヤれる」と思うのは自由だが、「エロい」「ヤれる」と本人に言うのは相手を不快にさせるセクハラだ。
「コンプラ棒で殴られる」という言葉があるが、殴られているのはこっちである。

昨今「巨乳=悪だとフェミどもが騒いでやがるぜ、ヒャッハー!!」とアホ軍団が騒いでいるが、フェミニストは「必要ない場所で女性を性的対象物として扱うこと」を批判しているのだ。

それが「普通」に溢れている環境が感覚を麻痺させて、認知を歪ませて、セクハラや性差別を容認・助長させているから。そんな感覚を次世代につなげないために、フェミニストは声を上げている。

みたいな九九でいうと一の段をいちいち説明するのもダルすぎるが、説明してもわからない勢が多くてHELLすぎる。

女叩きが趣味のアホ軍団はほっといて、セクハラや性差別の話の時だけアホになる男性たち、彼らはなぜ理解できないのか? と考えると、男女で見えている世界が違うからだろう。

リベラルで頭のいい夫と暮らすJJ仲間が話していた。彼女が夫に「あなたと二人でタクシーに乗ってる時は、運転手さんは敬語で話すでしょ? でも私一人の時はタメ口で話してくるのよ」と言うと「えっ、何それ? 客にタメ口で話す運転手なんているの?」とキョトンとされたという。

私も夫とタクシーに乗った時は、1人の時よりもずっと丁寧に接客される。それは銀行でも不動産屋でも同じである。

女性の多くは経験があるんじゃないか。タクシーの運転手さんに「えらい美人やなー!」「こんなかわいい子を乗せれてラッキーやわ(笑)」など「女」扱いされたことが。

そこでプーチン顔をしたら「褒めてやってるのに、感じ悪い女だな」と嫌がらせされるかもしれない。車という密室で何かされたら怖いから、反射的に「どうも」と愛想笑いを返す。

そして車を降りた後に「チリ紙とか飴ちゃんとかいらないから、人間扱いしてくれよ……」とガックリするのだ。

タクシーに乗るだけでも愛想や緊張や疲弊を強いられる。そんな世界に住む私の言葉は、彼らには届かないのかもしれないな……とガックリしながら、タイムマシンじゃなくのぞみに乗って神戸に帰った。

その同期の彼らもリベラルで頭のいい男性だし、職場でも評価されているのだろう。同期会ではつい気が緩んでいたのかもしれない。

でももし女性の部下が飲み会で「おっぱい大きいねー!」と言われていたら「それはセクハラだからやめろ」と注意できるのか? 部下からセクハラ相談されたら「酒の席の軽い冗談」「騒ぐほどのことじゃない」とか言っちゃうんじゃないか。だって見えている世界が違うから。

広告業界で働く彼らは、昨今の炎上広告についても「こんなことで騒ぐ女がおかしい」「昔はよかったな、コンプラ棒で殴られなくて」と内心思っているのかもしれない。

でもそれらは全てのセクハラや性差別と地続きなのだ。女性を性的対象物として扱うことが「普通」の社会が、彼らの娘を含む、女性たちを苦しめている。

彼らは「アルちゃん作家してるんだってね、今度コラム読むよ!」と言っていたので、このコラムを読んだ感想をぜひ聞かせてほしい。
私の言葉は少しは彼らに届くのか? それとも「俺をセクハラおじさん扱いしやがって」と怒って、「面倒くさいフェミニストになっちゃったな」とフェイスブックの友達をそっと外すのか。

それでも全然かまわない。彼らにとっては「昔の私の方がよかった」だろう、無料キャバ嬢をやってた頃の私の方が。

でも私は昔の自分に戻りたくない。当時は私も感覚が麻痺していて、セクハラや性差別に加担していた。無意識に傷つけてしまった人もいるだろう。

自分も加害者だった反省があるからこそ、声を上げなきゃと思うのだ。そのためにアップデートを怠ってはいけないと。なんなら二の腕に「悪腐出笑闘」と彫りたい、二の腕が膨らんでるのでいっぱい彫れる。

私は男に好かれる無料キャバ嬢よりも、男に嫌われるフェミニストを選ぶ。だってこの世からあらゆる差別をなくしたいから。

私は子どもの頃から差別やイジメが嫌いだったので、性差別を許せないのも当然だと思っていた。だから「自分はフェミニストじゃない」と言う人を見ると「え、性差別をなくそうと思わないの? なんで?」と不思議に思う。

人種・性別・属性・立場を問わず、全ての人間はフェアに扱われるべき。多様な人々が生きやすい社会を目指すべき。自然とそんな考えになったのは、毒家庭で生まれ育って「あそこの家はおかしい」という偏見を感じていたからかもしれない。

毒親問題で彼氏の親に結婚を反対されたりもして、自分にはどうしようもないことで差別されるつらさも味わった。

でも一番大きいのは、十代をリベラルな女子校で過ごしたことだと思う。プロテスタント系の学校で「自分を愛するように隣人を愛せよ」精神を叩きこまれ「世の中、支え合いが基本やで」と自然に思うようになった。

そして何より「女」じゃなく「人」として生きられる自由を知った。その後、外界に飛び出したらミソジニーにぶん殴られて「この世界は地獄だ」とアルミンの顔になった。

だけど、その地獄で仲間ができた。価値観を共有できる女性たちとつながって、シスターフッドの強さと素晴らしさを知った。

今の私には愉快な仲間がいるから、男に嫌われても屁でもない。彼女らのおかげでJJライフはハチャメチャに楽しいし、毎日ハチャメチャに快便だ。ウンコをバンバン出しながら、「退かぬ☆媚びぬ☆省みぬ☆」と元気いっぱいに戦っている。

最後に、今も戦っている友人へ、私はあなたと共にいる。

*   *   *

※同時連載中!「アルテイシアの59番目の結婚生活」もお楽しみください。

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アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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やまねこNO MORE ABE  「おっぱい大きいねー!」と言った彼にこのJJコラムの感想を聞かせてほしい|アルテイシアの熟女入門|アルテイシア - 幻冬舎plus https://t.co/ZO5Qze48Lb 1日前 replyretweetfavorite

アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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