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本屋の時間

2019.11.01 更新 ツイート

第71回

小さなシステムをつくる辻山良雄

(写真:iStock.com/Antonina Owen)

先日、ライターの石井ゆかりさんにお目にかかる機会があった。石井さんは胸にしみる文章を書くかたで、それももちろん素晴らしいのだが、毎日無償で星占いを発信し続けるその〈職人〉たる姿勢に、以前からひそかに共感をしていた。

 

 

Titleのような小さな店をしていると、毎日同じことをしていて、よく飽きないねと言われることがある。その場所から動くことがほとんどないので、変化を求める人にとってみれば、何がたのしくてそんなことをと思うのだろう。

しかし、ある一つのことを理解したという感覚は、同じことのくり返しにしか生まれてこない。仕事でなくてもわたしたちは、日々の生活を同じリズムで過ごすうちに、その些細な変化に気がつくようになる。

毎朝散歩する道、電車の窓から見える風景、季節になると毎年着るコート……。同じディテールをくり返すことで、その人の人生に対するシステムは構築される。その小さなシステムを通して、夏が終わったとか、今日はツイてるといった生活が持つ深みを、わたしたちは実感する。

 

Titleでは毎朝8時に「毎日のほん」を更新し、12時の開店時間になればシャッターを上げ店の姿を写真に撮り、開店のお知らせをする……。それはいつの間にか生まれたこの店独自のシステムである。たとえ仕事が停滞するときがあったとしても、無心で決まったルーティンを行うことで、その澱みは解消し、仕事はまた前へと進んでいく。

日々変化する毎日を乗りこなすことも、また楽しいことかもしれないが、わたしには決まった構えから、些細な変化を感じとるほうが向いているのかもしれない。

 

 

今回のおすすめ本

『マリアさま』いしいしんじ リトルモア

物語の子・いしいしんじの、18年にわたり様々な媒体に書かれた短篇を集めた、選りすぐりの作品集。わずか数ページに、世界のかけらがぎゅっと凝縮されており、それが一瞬にして身体のなかに入ってくる。

 

◯Titleからのお知らせ

Titleは3月30日(月)から当面のあいだ、19時までの短縮営業といたします。何か変更がある場合には、またTwitterウェブサイトにてお知らせします。


◯2020年3月20日(金)~ 2020年4月5日(日)Title2階ギャラリー

 庭の記録
 花松あゆみ 個展

 人の暮らしと自然の時間が混ざり、物語が重なる庭。それらを記録するように描いた版画の数々を展示。本展にあわせて制作した新作の手製本も販売。

 

◯再掲【延期のお知らせ】
台風と小旅行 石山さやか「Short Trip with Typhoon」原画展
4月7日(火)~ 4月20日(月)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、上記で行う予定だった展示「台風と小旅行」は延期とすることにいたしました。楽しみにされていた皆さまには、まことに申し訳ございません。新たな日程が決まり、安全に展示をご覧いただけることがわかりましたら、またTitleホームページにて告知をいたします。ご了承のほど、どうぞよろしくお願いします。

 


◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 


 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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