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オフィスハック

2019.05.27 公開 ポスト

#15 謎の地下残業組織ダイハードテイルズ

【年の差バディのお仕事は銃撃戦!?これぞ日本版キングスマンだ!】サラリーマン必読!「ニンジャスレイヤー」チームが描くスパイアクション「オフィスハック」待望の新連載! 第1回はコチラ→#1 働き方改革 時は令和元年! 舞台は東京丸の内の巨大企業T社! 人事部特殊部隊"四七ソ"の香田&奥野に今日も新たな指令がくだる。不正を働くオフィス内のクソ野郎どもをスタイリッシュかつアッパーに撃ち殺せ! テイルゲート! ダンプスターダイブ! 禁断のオフィスハック能力を正義のために行使せよ!

#15

『OMNISによれば、あの社員は真っ赤で、武装したならず者社員の一員である可能性が高かった。なぜAIの判断に従い、調整しなかった? 君たちのスマートウォッチにも通知が入っただろう?』

「あれは、どう見ても交戦意思がなかったからですよ。可能性だけで調整はできません。現場判断しないと」とおれは答えた。

「その通りです」と奥野さんも言った。

 おれはてっきり、良い判断だと洩矢から褒められるのかと思っていた。あるいは「どうして解ったのか?」「どうやって見分けたのか?」とか、そういった質問がくると思っていた。それを例えば、AIの判断基準にフィードバックするとかさ。

 だが、事態はおれの想像を超えていた。 

『そういう判断の遅れと躊躇により、奥野くんが被弾したのではないかね?』

 何を言い出すんだ、こいつは。

 おれと奥野さんは迂闊な返事を返さないよう、お互い視線だけを交わし、頷きあった。そして目の前の業務、地下道をゆくターゲットの追跡に意識を向けた。

 おれたちが沈黙していると、洩矢は咳払いして続けた。

『いいか、よく聞きたまえ。本日より、OMNISによる調整業務の指針が大きく変わる。OMNISによる自動判断を最優先したまえ。現場の目視による判断は、不要だ。先行して、第二人事部の五六シスがこの基準で調整業務を行った。その結果、何が起こったと思う? 最終調整における各種パフォーマンスが、平均して50%近く向上した。驚くべき成果だ。これこそが、OMNISとAIのもたらす力というわけだ』

「……ちょっと待ってください。それで誤調整が起こったらどうするんです?」

 流石におれはそう質問した。

 本来、誤調整は絶対に起こしてはならない。四七ソに配属されたおれがメンターの安曇さんから一番最初に叩き込まれたことが、まずそれだった。だからおれも、メンターとして奥野さんにそれを一番最初に教えた。

 だが、何やら雲行きがあやしいぜ。

『今後、OMNISのAI判定に従って即時調整したのならば、誤調整の責任は一切問われなくなる。これにより、君たちの現場ストレスは、大いに緩和されるだろう』

「ちょっと、ちょっと待ってください。そんなの、逆にストレスが増えますよ」

『何故かね?』

「何故、ですか? そんなのは……決まっているじゃないですか。毎回、これは誤調整かもしれない、あれは誤調整だったかもしれないって思いながら現場に立って、それを押し殺して、働き続けるわけでしょう?」

『押し殺す必要など、ないと言っている。それは全て、システムが負うべきものだ。ミスも、責任も、罪悪感も、全てAIに肩代わりさせればいい。それらは本来、現場に立つ人間が負うべきものではないのだよ』

「しかしですよ……」

『人間には重すぎる重圧なのだ。香田くんと言ったか? 君はたとえば、現場判断で全てを解決できる、飛び抜けた調整能力の持ち主なのかもしれない。だがそれは強者の理論だ。個々の力に依存しすぎており、組織のノウハウとしては引き継げない。そのような従来の基準でやれば、心を病む者や、力不足で殉職する者が大勢出るだろう。それでは組織は生き残れない』

 洩矢の声は明らかに苛立っていた。

「ちょっと待ってください。だったらもう、四七ソとかオフィスハック能力者なんていらないという話になってしまうじゃないですか。ミスを起こさないよう、現場の人間同士で顔と顔を突きつけあって、真面目に働いている社員を守るのが、おれたちの役目じゃないんですか? それを全部すっ飛ばせるほど、OMNISの自動監視システムは完璧なんですか?」

『何を感情的になっているんだね君は……。完璧はこれから目指していく。その第一歩を、君のつまらない自己満足で潰すというのか。責任なら全て上が取ると言っているんだ。……正確には、人事部ではなくOMNISとその推進部が責任を取る。人事部にも、君たち四七ソにも、キズはつかない。安心しただろう? 君たちは粛々と業務を遂行すればいいんだよ』

 それでおれは、完全にカチンと来ていた。

「すみません。そろそろ奴らの本拠地が近いようなので、黙っていていただけますか?

 ターゲットは何度も後ろを振り返って尾行を気にした後、地下道にある部屋のひとつへと向かった。そこは使われることなく遺棄されたテナントか何かだった。おれはテイルゲートを使い、ターゲットとともにその中へ忍び込んでいた。

 ターゲットは奥へと向かった。おれはテイルゲートの維持時間を考慮し、入り口付近でターゲットの背後から離れた。幸い、入り口付近に見張りの類はいなかった。

 広さはテニスコート程度。薄暗く、チグハグの事務机や椅子が並び、十数人くらいの社員がPCに向かい、全員黙々とキーボードを叩いていた。おれは一瞬、会議室に監禁されたSEの明石君のことを思い出した。だが、何やらあれとは様子が違う。

「エナジードリンクを買ってきました」「よし……!」「これでまだ戦えるな……!」「尾行されていなかっただろうな?」「大丈夫です。カメラにも引っかかっていないはずです」

 暗がりの中では、まるで地下パルチザンじみた会話が交わされていた。ならず者社員特有のパーティーノリは無い。だとすると、なおさら不気味だ。彼らは何故そこまでして残業したいのだろうか? 麻薬でも合成しているのだろうか? 調査が必要だ。

 おれはまず内側から鍵を開け、密かに奥野さんを迎え入れた。

「どう見ますか」

「遺棄された空間を、強引にオフィスにしているのでしょうか……? SE監禁の類では無さそうですね……」

 やはり奥野さんもそう見るか。おれたちは薄暗がりの中、小声で話し、しゃがみ姿勢で前進した。この部署が重大なコンプライアンス違反を行っているという証拠を掴むために。

 十分な距離まで近づくと、おれは社用スマホを取り出し、OMNISアプリを立ち上げ、そこにいる社員の顔を一人一人スキャニングしていった。どうやらここにいるのは全員、七四オウン……第七IT事業部第四オウンドメディアサービス課……人事部のデータベースによれば、オウンドメディア運用を行うごく普通のIT系部署の連中だ。しかし残業と疲弊によりその社員スコアは全員真っ赤で……本来ここにいる奴らは全員休暇中のはずだった。

「勤怠システムを欺いてまで、一体地下で何をやっているんだろう……」

「やはり麻薬でしょうか」

 働き方改革により、日の当たるメインオフィスでのならず者行為が難しくなってきたから、どんどん地下に潜ってるってことだろうか。

「もう少し証拠が必要ですね」

「ええ……」

 おれと奥野さんは囁き合い、部屋の隅のサーバーPCに向けて接近しようとした。その時、警報が鳴り響いた。

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【スーツ男子バディのお仕事は銃撃戦!?】シリーズ累計150万部「ニンジャスレイヤー」チームが描く衝撃の社内スパイ・アクション!時は2018年、東京・丸の内。巨大企業T社には「消費者をナメくさっている」事業で荒稼ぎする社員が次々誕生。彼らの不正が世に出ればT社へのダメージは計り知れない。その前に証拠を押さえ部署ごと解体するのが人事部特殊部隊「四七ソ(よんななそ)」の仕事だ。31歳妻子持ちの香田は、年上の後輩・奥野とバディを組んでいた。ある日、AIをフル活用してパクりブログを量産する部署への社内調整依頼が入る。順調にサーバールームへ侵入した二人だが、突然、武装したコンサルタントに襲撃を受けた! 血を流す奥野。はたして無事に任務を遂行できるのか!?

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