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猫を撫でて一日終わる

2019.05.13 更新

シェアハウスに飽きてきたpha

かれこれ10年くらい、シェアハウスを自分で運営しながら住み続けてきた。

シェアハウスのような人の集まる場所に住んでいると、ぼーっとしているだけでいろんな人が住んだり遊びに来たりするので退屈はしなかった。まあ人が集まるとときどきはトラブルもあったりはするのだけど、基本的には楽しく暮らしていた。だけど、そんな生活に最近少し飽きてきた気がする。

いや、飽きてきたというか、シェアハウスに住み続けることが、自分の何かをだめにしている部分があるんじゃないかという気がしてきた。

それは、待っているだけでいろんな人がやってくるから、それに甘えてしまって、自分から他の人に声をかけるのがすごく下手になってしまったのではないか、というようなことだ。シェアハウスに住まないような人、シェアハウスに遊びに来ないような人と、どうやって仲良くなればいいのか、全然わからなくなってしまっている自分に気づいたのだ。

 

そんな風に人と仲良くなるやり方を覚えたのは、大学生の頃に寮に住んでいたときのことだった。

 

 

高校までの自分は人と仲良くなるのがすごく苦手で、ほとんど友達がいなかった。会話に入っていくのが苦手で、教室の中ではいつも一人で本を読んでいて、そうでないときは机に突っ伏して眠っているふりをしていた。本当は寂しかったのだけど、自分から人に話しかけることができなかったし、話すきっかけがあったとしても何を話せばいいのか全くわからなかったので、しかたなかった。

だけどそんな自分でも寮に入ると、特に頑張って人に話しかけたり会ったりしようとしなくても自然と周りに人がいるので、強制的に人と交流することができたのだった。

僕は人と会っているとすぐに「自分はここにいていいのだろうか」「相手は飽きてないだろうか」「そろそろ帰ったほうがよいだろうか」と不安になってしまうほうなのだけど、寮で人と会っているときは、「ここは自分の家だから自分はいてもいい」「他に帰る場所もないし」と自然に思えるので、そうした不安に襲われることがないのがよかった。

寮に住んで二年目くらいの頃、寮の玄関ホールの一角に新しいスペースができた。

そこはそれまでは粗大ごみが雑然と放置されているスペースだったのだけど、寮生の有志が粗大ごみを全部片付けて掃除をして、コンクリートの上に畳屋から貰ってきた中古の畳を敷き詰めて、こたつを置いて、交流するスペースを設置したのだ。

僕はその場所に入り浸った。そのスペースは玄関ホールにあるので、外に出かけていく寮生や外から帰ってくる寮生が絶え間なく目の前を通り過ぎていってあまり落ち着かないのだけど、そんな行き交う人を気にしないふりをしながら、一人でこたつに入って、ひたすら本を読んだりしていた。

本当は暇だったり寂しかったりして人と話したかったのだけど、自分から人に声をかける勇気がないので、わざと人目につく場所でこれみよがしにだらだらすることで、誰かに声をかけてもらうのを待っていたのだ。

その戦略はうまくいった。こたつに入ってぼーっと座っていると、通りがかる人が立ち寄ってくれて会話をしたり、メシを食おうとか麻雀を打とうとか誘ってくれるようになった。

そうして僕はそんなやり方に味をしめてしまった。交通量の多い場所で蜘蛛のように巣を張って、そこに誰かがかかるのをひたすら待ち続けるような人間関係の作り方に。今のシェアハウスでやっているのも基本的には同じことだ。

 

だけど、そのやり方があまりにもうまく行ってしまったために、それ以外のやり方がわからなくなってしまった。自分から人に声をかけて仲良くなるのって、どうやったらいいんだっけ。

今は家でごろごろと寝て過ごしているだけで、自動的にいろんな人がやってくる。それは寂しくないし、うれしいことだ。だけど、来る人はみんなそれぞれ面白くて魅力的な人なんだけど、どの人ともそんなに深いつながりはないような気もする。家に来てくれたら話をするけど、そうでなければわざわざ自分から出かけて行ってその人と会おうとするかどうかはよくわからない。自分が本当に会いたい人ってどういう人なのか、そもそもそんな人がいたのかどうかもよくわからなくなってしまった。

あと、場の主催者というのはとりあえず一段上に見られるようなところがあるので、自分は家にいる限り、みんなからそれなりの扱いを受けることができる。そんな風にホームで戦うことに慣れすぎてしまって、アウェイな場所にその他大勢の一人として参加するのが怖くなってしまった。そんなことを続けていると自分の世界がどんどん閉じていきそうだ。

ひょっとして自分は、一見人に囲まれているように見えて、すごく寂しい人間なのかもしれない。一生こんな感じで生きていくのだろうか。そろそろ一人暮らしをしてみるべき時期なのかもしれない。

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コメント

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𝔻𝕁 𝕘𝕖𝕤𝕙𝕥𝕒𝕝𝕥  人と無理につながる必要ないと思う。意識してつながったら切れやすいし。 シェアハウスに飽きてきた|猫を撫でて一日終わる|pha - 幻冬舎plus https://t.co/Fy4gupUNKR 3日前 replyretweetfavorite

Hana🌻 🇹🇭 ノマドエンジニア  確かに自分も長い期間シェアハウスに住んできたから思うが、新しい人と出会おうというモチベーションは減ると思う。(遊び的な意味で) ただ、勉強会とかはむしろ誘って行きやすくなった。 シェアハウスに飽きてきた|猫を撫でて一日終わる|… https://t.co/enFVO5seqq 3日前 replyretweetfavorite

りょう  @pha phaさんと同じ孤独を抱えているかたは多数いると思います。 phaさんみたいに正直に言わずに、友達ごっこを演じている人も"多数の中の孤独"を味わっているのではないでしょうか? シェアハウスに飽きてきた|猫を撫でて一日… https://t.co/pw7gFOigK7 4日前 replyretweetfavorite

朔夜  シェアハウスに飽きてきた|猫を撫でて一日終わる|pha - 幻冬舎plus https://t.co/KkhFnG5Dau 4日前 replyretweetfavorite

ゆるい喫茶店AAてんちょう  RT @kame_Lamant: 飽きるほどシェアハウス上手く運営できてるのすごい。 シェアハウスに飽きてきた|猫を撫でて一日終わる|pha - 幻冬舎plus https://t.co/AYZfDugM0Y 4日前 replyretweetfavorite

カメ  飽きるほどシェアハウス上手く運営できてるのすごい。 シェアハウスに飽きてきた|猫を撫でて一日終わる|pha - 幻冬舎plus https://t.co/AYZfDugM0Y 4日前 replyretweetfavorite

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マユチェル  RT @pha: 写真でうちの猫のかわいさを自慢しつつあまり関係ない内向的な話を書く連載、次回が最終回です https://t.co/zlMFSN5J9M 5日前 replyretweetfavorite

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沖田 丈7  わからんでもない / 他93件のコメント https://t.co/DhwR0FN8qK “シェアハウスに飽きてきた|猫を撫でて一日終わる|pha - 幻冬舎plus” https://t.co/AsXQyih4Dq 5日前 replyretweetfavorite

猫を撫でて一日終わる

人と話すのが苦手だ。ご飯を食べるのが面倒だ。少しだけ人とずれながら、それでも小さな幸福を手にしたっていいじゃないか。自分サイズの生き方の記録。

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pha

1978年生まれ。大阪府大阪市出身。現在東京都内に在住。京都大学を24歳で卒業し、25歳で就職。できるだけ働きたくなくて社内ニートになるものの、28歳のときにインターネットとプログラミングに出会った衝撃で会社を辞める。以来毎日ふらふらしながら暮らす。シェアハウス「ギークハウスプロジェクト」発起人。著書に『ニートの歩き方 お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法』(技術評論社)、『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』『ひきこもらない』などがある。

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