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調理場という戦場

2019.03.18 公開 ポスト

本気でいいものを作りたいなら「怒る勇気」を持て斉須政雄

日本を代表するフランス料理界の巨匠で、名門「コート・ドール」のオーナーシェフをつとめる斉須政雄。著書『調理場という戦場』は、「仕事論、リーダー論、人生論。すべての旨味がこの本にある」と評されるロングセラーです。大志を抱き、23歳で単身フランスに渡った斉須。夢に体当たりしてつかみ取った「アツすぎる」言葉の数々は、働くすべての人に勇気を与えています。そんな本書の一部を、抜粋してお届けしましょう。

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私が絶対に許さないこと

フランスは基本的には大人の国だから、実力がなかったらだめだというシンプルなよさがあります。実力がなければ世間一般の地位や報酬はないということです。甘くないし結果と評価が比例している……。フランスのその厳しい実力主義は、とてもあたたかく見えました。あとは一生懸命に頑張ればいいだけだから。ぼくがいつも見つめていたフランスは、そういう姿なのです。

iStock.com/Sean3810

ハングリーな部分は、今でも絶対に必要だと考えています。

負荷を絶えず負っている。これができなければいる意味がない。そう思っていなければ、人はすぐに「まぁ、こんなもんか」と感じてしまうのではないでしょうか。

若い人であっても意識のブヨブヨしたいやらしいところを持っている人がいますから、それを見かけた場合には、ぼくは、徹底的にやっつけますね。年齢が若いからとか経験が少ないからということで、情をかける気はないのです。

ぼくが怒るのは、精神的な姿勢のことだから。

技術的なことで間違った。それを厳しく言うことはありません。壊そうと思って壊す人はいない。失敗しようと思って失敗する人はいない。それは問いません。

でも、誰がどう見ても、手を貸したほうがいいということがはっきりしている場面があるとします。そこで手を貸さずに放っておいた。何も教えてあげなかった。見過ごした

そういう人のことを、ぼくは絶対に許しません。手を貸すことは難しいことではないのに黙って見ているわけですから。……白日のもとに引きずり出して、もう、泣くまで言いますね。親切だと思いますよ。

どんなに相手に泣かれたって、「これは、親切なんだ」とぼくは言います。本心からそう思う。ぼくにお金を払ったっていいぐらいな親切なことです。笑って軽蔑して無言で済ますことを、ぼくはしません。

「自分の感情の高ぶったぶざまな姿を皆にさらして、でかい声を出しているのだから、思いやりだ」

そう言います。怒られている人より、怒る人のほうがずっと悲しい

ぼくは必要があれば、若い人を追いつめるようなことを言います。

トラウマになるかもしれないぐらい強く諭すけれども、そうしたほうがいいと思っています。本気で言わないと、誠意がないから。

「その考えは違う」

「その仕事のやり方は、どうしても許せない」

そう思ったら、言うべきです

権力を見せつけるためではなく、本気でいいものを作りたいから追いつめるのです。

「小競り合い」はどんどんやれ

小競り合いというのは日常茶飯事であっていいものだと思う。みんないい子になっていて、「それは違うよ!」とも言えないような職場では、淀んだ空気が温存されてしまう。隣にいる人が何を考えているかもわからない。

iStock.com/RomoloTavani

たまったガスはどうする?

組織の中の数人が集まって陰で愚痴を言い合う?

……健康的な組織とはほど遠くなり、結局、みんなのためにならないのです。

少しの争いがないと、ガス抜きができない。上っ面のことばかり言っていては、チームメイトの意志疎通が滞る。仕事を一生懸命やっていればいるほど、ほんとうは必ず何か衝突するところが出てくるはずです。

ひとりでできないことを実践するためにチームを組んでいるのです。「まあいいや」で済ませることは、結果を悪くすることにしかなりません。「まあいいや」で済ませれば、チームメイトどうしの欠点を教え導くことにはならないでしょう。しかも、お店の欠点をお客に出すことになる。

評判は落ちるし、淀みが肥大する。

不満に思ったことがあるのならば、小競り合いのうちに発散しておく必要があると思います。

情に流されず、悪いことは悪いと言い、いいことはしっかり褒める。

自然に言い合えるような雰囲気を作ることが、リーダーの大切な仕事だと思っています。乾いた空気の環境があればとてもいいでしょう。それならば、ちょっとした注意で済みます。

「いつかあいつに言ってやろう。今に見てろよ!」

なんて思っていたら、大変なことが起きたあとの指摘になる。チームメイトに退職してもらう時が、はじめて注意する時になってしまっては、悲しすぎます。絶えず「こうするといいのではないか」と伝えておけば、すり込まれてできるようになるはずです。

さきほど例に出した「調理場で困っている人に手を貸さない」ということは、「コート・ドール」でももちろん致命的なミスですが、例えばその人がフランスのレストランで働いていたとすれば、もしかしたらゲームオーバーになるかもしれない重大な出来事なのです。

妙なプライドを持っているがゆえにチーム全体のことを考えなかった。これは、外国のお店では大ケガにつながるかもしれない。フランス人なら、多民族でせめぎ合っている中で育てられているから、他人の過失について容赦しませんよ。一刀両断みたいなところがある。軽くあやまるだけでは済まないかもしれない。

少し気をまわすことができなかったばかりに、ゲームオーバーになってしまうのはつらいことでしょう? だから、そうならないように、ぼくはチームメイトに厳しく指摘をするんです。優秀な能力は自分だけで満喫しないで、チームワークで出す結果によって満喫すればいいのではないでしょうか。

関連書籍

斉須政雄『調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』

大志を抱き、二十三歳で単身フランスに渡った著者が、夢に体当たりして掴み取ったものとは? 「早くゴールしないほうがいい」「効率のいい生き方をしていると、すり切れていってしまう」。激流のように過ぎゆく日々をくぐり抜けたからこそ出てくる、熱い言葉の数々。料理人にとどまらず、働く全ての人に勇気を与えたロングセラー、待望の電子化。

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調理場という戦場

日本を代表するフランス料理界の巨匠で、名門「コート・ドール」のオーナーシェフをつとめる斉須政雄。著書『調理場という戦場』は、「仕事論、リーダー論、人生論。すべての旨味がこの本にある」と評されるロングセラーだ。大志を抱き、23歳で単身フランスに渡った斉須。夢に体当たりしてつかみ取った「アツすぎる」言葉の数々は、働くすべての人に勇気を与えています。そんな本書の一部を、抜粋してお届けしましょう。

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斉須政雄

1950年生まれ。73年よりフランスに渡り、フランス料理界に12年間身を置く。86年、「コート・ドール」の料理長に就任。92年からはオーナーシェフとして活躍。

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