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過敏で傷つきやすい人たち

2019.02.09 更新

あの夏目漱石も「過敏」で悩んでいた?岡田尊司

音や話し声がすると集中できない、人にどう思われているか気になる、過度に接近されるのが苦手、頭痛や胃痛、下痢になりやすい…。こんなお悩みを持っている人は少なくありません。続々と重版を重ねている精神科医・岡田尊司さんのベストセラー『過敏で傷つきやすい人たち』は、そんな悩みを解決できると話題の一冊。そんな本書の中から、一部を抜粋してお届けします。

(写真:iStock.com/bee32)

敏感すぎる性格は、発達障害が原因のことも!

過敏性は、さまざまな疾患や障害に伴って表れますし、病気や障害がなくてもよく起きる状態、たとえば睡眠不足や過労、二日酔いによっても強まることが知られています。

それゆえ過敏性だけで、一元的な議論をすることは危険な面もあるわけです。先にも述べたように、発熱という症状だけで熱病と診断することはあまり診断的価値がないのと同じで、その背後にある病態や病因を理解することが、適切な対処のためには不可欠だと言えます。

過敏性も、さまざまな状態や疾患、障害に伴って表れることを知っておいていただくことは、重大な疾患や障害の兆候を見落とさないという点で大事でしょう。

感覚過敏や神経過敏を引き起こす状態で、頻度の高いものの代表が、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害です。自閉スペクトラム症では、緊張が亢進していることもしばしばです。

過敏性は、発達障害、ことに自閉スペクトラム症の診断において、大変重視されるようになっています。それは、もっとも早く気づくことのできるサインだからです。コミュニケーションや社会性の問題が明らかになるのは、一、二歳以降、ときには、十代、二十代になってからですが、感覚過敏や感覚の鈍さといったサインは、生後半年になる頃には認めることができるのです。

自閉スペクトラム症の場合、できるだけ早く発見して、療育や親御さんのかかわり方のサポートを開始した方が予後が良いことを考えると、生後一年とたたずに、その兆候に気づけることは大きなメリットなのです。

同じように幼いうちから感覚過敏が認められるものに、虐待を受けたり、親から引き離されるなどによって生じた愛着障害があります。愛着障害は、愛着の障害であると同時に、傷つけられる体験による心的外傷関連障害の側面をもちます。

幼い頃に心的外傷体験をした人では、感覚過敏や低登録のスコアが有意に高くなっていることが示されています。つまり、感覚プロファイルから、発達障害と愛着障害を見分けるのは難しいのです。

過敏性プロファイルの方が、両者を鑑別する上で助けになりますが、愛着障害でも、トラウマ的体験によって神経学的過敏性が高まっているのが普通ですし、発達障害の子どもも二次的な心の傷を抱えていて、心理社会的過敏性が高いことも多く、過敏性プロファイルでは見分けがつきにくいケースも少なくないと言えます。

やはり一番頼りになるのは、成育歴や養育環境について、できるだけ多くの正確な情報を集めることです。しかし、大人のケースでは、それが難しい場合もあります。そうしたとき、決め手として役立つのは、親との関係が安定したものかどうか、困ったときに親に甘えられるかどうかです。親との関係がどこかぎこちなかったり、親に素直に甘えられない場合や、逆に過度に気を遣いすぎる場合にも、愛着障害を疑ってみた方がよいでしょう。

(写真:iStock.com/johan10)

敏感すぎて病気になった夏目漱石

過敏性がある限界を超えてくると、単なる緊張とか精神的な不安というレベルを超えて、身体的な病気や精神的な異変を生み始めます。健常な反応の域を超え、病理的な現象に移行し始めるのです。

大きく分けて、体の症状となって表れやすい人と、精神的な異変をきたしやすい人がいるようです。もちろん、両方くる場合もあります。

先にも触れましたが、夏目漱石は、『坊っちゃん』や『吾輩は猫である』の洒脱しやだつなユーモアとは裏腹に、神経過敏で気難しい人物でした。長年胃潰瘍に苦しめられ、一度目の大吐血ではかろうじて助かりましたが、二度目の大吐血で、ついに帰らぬ人となりました。

彼はロンドン留学中に、幻覚妄想に苦しめられ、留学先で彼の様子に驚いた人は、「夏目狂せり」と電報を打ったほどでした。帰国後も、しばらくは被害妄想がとれず、まったく理不尽な理由で、子どもを怒鳴りつけたりしていました。自分をこけにしていると思い込んでしまうところがあったのです。

漱石の妄想傾向が落ち着いたのは、胃潰瘍が持病となり、体の方が病み始めてからで、精神の病気が体の病気に入れ替わったとも言えます。

実際、体の病気にかかることで、精神的な症状が改善して正気を取り戻すというケースも多いのです。

体が弱い方が、体の病気を理由に無理をしなくてよくなり、精神的な安定を守ることにつながるのかもしれません。その意味で、ストレスが体の病気になる身体化という現象は、注意サインであると同時に、最悪の事態を避けるための防衛策だとも考えられます。

ただ、先の章で述べたように、全体で見ると、身体化しやすい傾向と、妄想的になりやすい傾向は、正の相関を示し、相関係数は0・55と、そこそこ高いものでした。過敏な人では、どちらも抱えやすい無情な現実があるようです。

この章では、過敏性に伴って起きる病理現象の中でも、子どもから大人まで身近な問題である身体化について理解を深めたいと思います。

岡田尊司『過敏で傷つきやすい人たち』

敏感すぎる気質は自分で直せる! 

決して少数派ではない「敏感すぎる人(HSP)」。
実は「大きな音や騒々しい場所が苦手」「話し声がすると集中できない」「人から言われる言葉に傷つきやすい」
「ストレスで胃が痛くなりやすい」「頭痛や下痢になりやすい」などは、単なる性格や体質の問題ではないのだ。

この傾向は生きづらさを生むだけでなく、人付き合いや会社勤めを困難にすることも。
最新研究が示す過敏性の正体とは? 豊富な臨床的知見と具体的事例を通して、HSPの真実と克服法を解き明かす。
過敏な人が、幸福で充実した人生を送るためのヒントを満載。

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過敏で傷つきやすい人たち

決して少数派ではない「敏感すぎる人(HSP)」。
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岡田尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 

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