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改憲ってほんとにするの?

2018.12.28 更新 ツイート

<日本国憲法の成り立ち>♯2

日本国憲法は九日間で完成した。どう始まり、どう終わったのか高尾栄司

GHQ民政局で日本国憲法の起草に関わり、90年代頃から日本で突如、「男女平等条項の起草者」「戦後民主主義の女神」と注目されたベアテ・シロタ・ゴードン。憲法の門外漢だった当時22歳の若いベアテに本当に起草ができたのか、という素朴な視点から日本国憲法の成り立ちを解き明かした『日本国憲法の真実 偽りの起草者ベアテ・シロタ・ゴードン』(高尾 栄司著)から、試し読みを5回にわたってお届けします。(第2回)

 

 
 
 

例えば、男女平等条項を含む人権条項は、現行日本国憲法の第三章「国民の権利及び義務」に入っている。実は、同章の担当班長はピーター・ルーストという人物だが、日本の学者は、この名前からして間違って伝えている。加えて、ベアテの上司であり、日本国民の義務を憲法で規定したこれほどの重要人物が、全く紹介されなかったこと自体、謎なのだ。そこで、私は、ルースト班長の息子たちに接触し、彼らから証言を得、これまで日本人が知らなかった事実を発掘することにしたのである。しかし、どのようにしてそのようなことが出来たのか?

元GHQ(連合国軍総司令部)民政局のベアテ・シロタ・ゴードン女史(1997年8月、写真提供:共同通信社)。

移民の国米国は“流れ者”の国でもある。東京のGHQ本部に集まった中にもこうした人が多く、ピーター・ルーストもオランダで父親に勘当されて、米国に流れ着いていたのである。ピーターは元々はライデン大学医学部に在籍し、父親から期待をかけられていた。ところが、信仰上の違いから彼を勘当してしまった父親は、生涯、息子ピーターに会えなくなってしまい、失意のうちに世を去り、母親も町を出ていたのである。

現在米国西海岸に住む彼の息子たちも、一度はオランダまで父親のルーツを求めて出かけてみたもののわからず、私の取材を受けるまで父親の生家を見たことがなかったのである。私がオランダに行き、そんな彼らの父親の生家を探し当て、現在の家主の許可を得て写真に収め、両親の出生証明書と婚姻証明書を取得し、それらをプレゼントすると、彼らは感謝し、以降は父親について、母親について、何でも話してくれるようになった。すると、その結果、憲法の「女性の権利」と「男女平等条項」の背景には、ピーター・ルーストの妻ジーン・ルーストと神智学協会という宗教団体の存在があることが新たに浮上してきたのである。

日本国憲法は九日間の作業で完成した。

しかし、それがどのように始まり、終わったかは、明かされてこなかった。本書で扱われるサイラス・ピーク、アルフレッド・ハッシー、マイロ・ラウエルその他キーパースンのオーラル・ヒストリーにより、読者は初めてその詳細を知ることになる。作業に当たり、日本の学者は、そこに小委員会が設立されたと記している。しかし、それは名ばかりであった。さらに、その小委員会の起草委員たちは、憲法の書き出しさえわからなかったため、「虎の巻」を求めて東京中を探し回ったのである。そして、この虎の巻を接収してくると、それをそのままコピーしたのである。本書で私は、現行の日本国憲法がどの国の憲法からコピーされ、どの条項になったかを、原文と対照して提示している。

日本国憲法は、偽りの「小委員会」によって英文で書き上げられると、GHQ本部民政局は日本側代表(松本烝治国務相)に手交し、「日本語にせよ」と命じた。松本国務相は日本案を作り、民政局に届けるが、日本側のなすことは頭から信じていなかった民政局は、この日本文を英文にする確認作業を徹夜で強行したのである。その作業中に通訳をしていたベアテは後に彼女ならではのストーリーを作るが、それで話は終わらない。ベアテは、家族の日本での戦時体験をユダヤ人ホロコーストに重ね合わせて、GHQの仲間に語っていた。それほどまでに彼女の日本への怨みは激しく、それ故に以降、彼女は「復讐心」を背景に、その認識が全くの誤解であったにもかかわらず、その個人的感情を「人類普遍の理念」の反映とされる日本国憲法の中に注入するというパラドックスに陥るのであった。

しかし、こうして作られた米国製文書は、日本国憲法として私たち日本人の前に姿をあらわし、そのまま使われることになったのである。

 

この度の取材で、私は米国、オランダ、オーストリア、フランスなどを訪れたが、一度として嫌な思いをしたことがなかった。それどころか日本人とわかると誰もが親切に接してくれたことが印象に残り、本当にありがたいことであった。一方で、この世界は国境の壁はますます薄くなり、コスモポリタン的反国家、反体制テロリスト集団が国境を超えて跋ばつ扈こし、無差別・非道なテロ行為を繰り返している。第二次世界大戦の教訓から生まれた国連は形骸化し、「世界の警察」米国の国威が衰退し、新興大国がムキ出しの国家エゴを振るう中で、「平和を愛する諸国民の公正と信義」に依存する我々が戴いてきた現行憲法は日本国と国民の安全保障を本当に担保できるのだろうか──? 今を生きる者、これから生きてゆく人たちが、現行憲法が制定されるに到った真実の姿を本書を通して考えていただければ幸いである。

 

※試し読み、続きます。

『日本国憲法の真実 偽りの起草者 ベアテ・シロタ・ゴードン』高尾栄司

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世論調査をみても、経済政策や社会保障といった話題に比べると国民の関心が低い「憲法改正」。なのに新聞では連日とりあげられ、改憲が当然の空気も醸し出されている。改憲前に知っておきたい話のあれこれ。

 

 

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高尾栄司

1947年、群馬県伊勢崎市生まれ。ノンフィクション作家。上智大学を経てイギリスおよびインドに留学。集英社の特派記者としてヨーロッパ、中東各地を取材。著書に『ビートルズになれなかった男』『国際金融都市東京が日本をこう変えるーー香港消滅』『安全国家日本の終焉』『韓国車が日本車を駆逐する日』『「天皇の軍隊」を改造せよ――毛沢東の隠された息子たち』等。

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