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人生は名言で豊かになる

2018.10.15 公開 ポスト

村上春樹『風の歌を聴け』のしびれる書き出しから、エネルギーを受け取って小泉十三

 くじけそうなとき、負けそうなとき、古今東西の「名言」が、自分を助けてくれることがあります。ロングセラー『人生は名言で豊かになる』は、スティーブ・ジョブズ、シェイクスピア、チャップリンから、村上春樹、立川談志、坂本龍馬、良寛まで、著名人や歴史上の人物の「名言」を多数収録。どのページを開いても、心が晴れやかになる一冊です。本書の中からいくつか抜粋してお届けします。

iStock.com/patpitchaya

「完璧な文章などといったものは存在しない。
完璧な絶望が存在しないようにね」

――村上春樹

とにかく「カッコいい」デビュー作

 村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』が群像新人賞を受賞したのは1979年の5月。私はまだ学生で、「群像」に掲載されたその作品を読んだときの興奮は、いまでもはっきりと憶えている。ひとことでいうと、「やられた」である。私のまわりでは「村上春樹、読んだか?」というのが合い言葉のようになり、生協に平積みされていた「群像」はまたたく間に売り切れてしまった。

 ときに手書きのイラストも交じる40の断章とあとがきからなる構成も新鮮だったが、なにより文章がカッコよかった。「洒脱」「都会的」より「カッコいい」という言い方がぴったりだった。のちに芥川賞の候補作になったとき、選考委員から「アメリカの現代小説の読みすぎ」と批判されたその文章が、とにかくカッコよかったのだ。

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」──これが小説の書き出しで、私を含めて当時の文学青年は、この一文だけでイカれてしまったといっていい。

 村上がのちにインタビューに答えて語ったところによると、この文章が書きたかったのが執筆の動機で、あとは小説らしくなるように展開させただけだという。「小説書いてて、これは正しくないんじゃないか、嘘なんじゃないか、小説を書く意味なんかないんじゃないか、って思うときね、ここを読み返すと、ああ嘘じゃないなってね、勇気づけられる。書くだけのことはあったのかなって思うんです」(「宝島」83年11月号)。

 その後、村上春樹は『ノルウェイの森』が大ベストセラーになり、一躍“国民作家”といわれるようになる。その後も、何年かおきに刊行された作品は国内ではベストセラーになるのはもちろんのこと、次々に各国語に翻訳され、その愛読者は世界中に広がっている。そして、現在は、ノーベル文学賞の最有力候補の一人と目されている。

 作家は処女作にすべての未来が詰まっているという。将来のノーベル賞作家の記念すべき最初の一文として、記憶しておいて損はない。いま読んでも、カッコいいし。
 

 

関連書籍

小泉十三『人生は名言で豊かになる』

「悠々として急げ」開高健、「落語とは人間の業の肯定である」立川談志、「きれいは汚い、汚いはきれい」シェイクスピア『マクベス』…あの有名人・作品の名言解説集。人生が変わる言葉に会える!

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小泉十三

1956年生まれ。早稲田大学文学部卒業後、出版社に入社し書籍の編集に携わる。独立後、単行本の編集・執筆を精力的に行う。著書はブームになった「頭がいい人」シリーズの「頭がいい人の文章の書き方」(河出書房新社)のほか、「ゴルフ・シングルになれる人、アベレージで終わる人」(幻冬舎)など多数。様々なジャンルの文献に精通し、いま役立つ知識・情報をさりげなく織り込む執筆スタイルから、その著書は、やわらかい教養本として幅広い層に支持されている。

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