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本屋の時間

2018.02.01 更新 ツイート

第31回

谷川俊太郎さんがTitleにやってきた辻山良雄

 

(写真提供:ナナロク社)

 これまでも雑誌の取材場所として指定していただいたり、気がつけばお客さんとしてそこで本を読んでいたりと、詩人の谷川俊太郎さんがTitleに来られたことは幾度かありました。しかしお客さんを前にしてお話を伺うことは、また別の話です。

 学生時代、谷川さんのデビュー作「二十億光年の孤独」に触れて以降、その主な作品はほとんど読んできましたが、その書かれた詩には、平易なことばの中にも〈個〉として立つ凛とした姿勢が一貫してあります。もう何十年も現代詩のトップランナーとして活躍されているかたですので、昨年にトークイベントの話が出た時から「はたして、聞き役が無事に務まるのだろうか?」とその日が近づくにつれて不安になってきました。しかし、そんな心配はよそに、イベントの申し込みは即日完売し、ついに当日がやってきました。

 トークは朗読あり、事前に集めた一問一答ありと和やかなものでしたが、思い描いていたイメージを簡単に覆された、谷川さんの人間性に触れた夜でした。お話の中でも、ご自身のことを「保守的な詩人」と評されたことには驚きました。谷川さんには、「常に現代詩の新しい一面を切りひらいてきた人」という印象があったからです。お聞きしてみると、「保守的」とはその人の根っこから出てきたことばを信じる態度のように思えました。谷川さんは自作のどんなに実験的に見える詩でも、どこかに自分が溶け込んでいたと言います。そうしたことばと人への信頼は古風に思えるかもしれませんが、そのような人間への真っ当な理解を支えにしなければ、これだけの高い質と膨大な量の作品は生まれてはこなかったでしょう。

 また、このような話もありました。映画「ギルバート・グレイプ」で、欲しいものを聞かれたジョニー・デップが「I want to be a good person (良い人間になりたいんだ)」と答えるシーンがあるのですが、谷川さんはこれを聞いて、若きジョニー・デップのことが好きになったと言います。「良い人間になりたい」という思いは、人間が生まれながらに持っている祈りのようなものです。その人を見かけや地位で判断せず、人間の心根にある美しさを見つめた、シンプルで若々しい人だと改めて感じ入りました。

 いまは、詩作が楽しくなってきたという谷川俊太郎さん。特に決まった時間を設ける訳ではなく、気が向いたときに詩を書くそうですが、毎日文章を見直している時間が幸せとのことでした。素晴らしい。

 

今回のおすすめ本

谷川俊太郎『こんにちは』(ナナロク社)

 その歩んだ道のりを年表にしてみれば、壁一面では収まらない。なつかしい人はいるがまっすぐ歩いていけば、いつも新しい人がそこにいる。惜しみない詩人の、現在形。

 

◯Titleからのお知らせ

Titleは3月30日(月)から当面のあいだ、19時までの短縮営業といたします。何か変更がある場合には、またTwitterウェブサイトにてお知らせします。


◯2020年3月20日(金)~ 2020年4月5日(日)Title2階ギャラリー

 庭の記録
 花松あゆみ 個展

 人の暮らしと自然の時間が混ざり、物語が重なる庭。それらを記録するように描いた版画の数々を展示。本展にあわせて制作した新作の手製本も販売。

 

◯再掲【延期のお知らせ】
台風と小旅行 石山さやか「Short Trip with Typhoon」原画展
4月7日(火)~ 4月20日(月)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、上記で行う予定だった展示「台風と小旅行」は延期とすることにいたしました。楽しみにされていた皆さまには、まことに申し訳ございません。新たな日程が決まり、安全に展示をご覧いただけることがわかりましたら、またTitleホームページにて告知をいたします。ご了承のほど、どうぞよろしくお願いします。

 


◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 


 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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