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70歳、はじめての男独り暮らし

2018.01.18 公開 ポスト

【新春特別企画】70歳、はじめての同級生対談【前編】

死に方はもう決めている西田輝夫(医学博士)

意地を張らず素直に甘える

 僕は妻がまだ元気だから、そこまで周りの人が言ってくることは無いけれど。だけど、例えば僕の先輩が、会社の社長とか会長を長年されていたんですけど、奥さまをやっぱりがんで亡くされて。そういう方を、ときどき色々な遊びにお誘いするとかはやりますね。大したことをしているわけじゃないけど。何人かで遊ぶときに誘うとかね。

西田 坂さんにしても僕にしても、それなりに一生懸命生きてきたら、意地を張るんだよね。「いや、いいです。大丈夫です。僕は自分で何とかします」という、そういう意地を張る。

 僕も最初、頑張らねばと思ったわけ。女房がいないから服装が乱れてきたとか、そういうことを言われちゃ嫌だ、とかいうような気持ちで最初頑張っていたけど、みんながいろいろと声をかけてくださったら、もうそれは素直に「ありがとう。じゃあお願いします」と言うべきだと思い始めた。もう、何か言われたらとにかく「ありがとう」と。「先生、ご飯を食べに行きますか」「ありがとう。一緒に行くわ」という。

 それが結構大事なのかも分からない。

 例えば、若い人と食事に行くでしょう、現役のときに。大学の医者なんて、実はそんなに給料は良くないんですよ。メディアの印象で思っているよりも。で、若い時って子どもが進学したとか、なにかとお金がいるでしょ。だから僕は絶対に若い人に払わさないで「いいよ、俺が持つよ」と。

 ところが最近は「先生、今回は私たちが持ちます」と言ってくれる。若いといっても50、60の先生たちだけど。それでも今までは「いや、いいよ」と、今までどおり断っていたんだけど、半年ぐらい前からかな、「先生、何かさせてください」と言ってくれた先生がいてね。そこで、これはごちそうになるということがその先生たちにとっても、いいことなんだなと思って。さっき坂さんがおっしゃったけど、「西田先生を呼び出して、一緒にきょう晩ご飯を食べよう」という、その気遣いなんだろうね。

 だから「きょうはごちそうになるわ」と、それを素直に言えるようになることが大事かな、と。

関連書籍

西田輝夫『70歳、はじめての男独り暮らし おまけ人生も、また楽し』

定年後、癌で逝った妻。 淋しい、そして何ひとつできない家事……。 人生100年時代の、男の生き方がここにある。 抱腹絶倒、もらい泣き!? 「このまま私はボケるのか?」定年後の独り暮らしを描く、笑えて泣ける珠玉のエッセイ! 古希(70歳)を迎えた元大学教授が、愛妻を癌で亡くした。悲しみを癒す間もないままひとりぼっちの生活が始まるが、料理も洗濯も掃除も、すべてが初めてで悪戦苦闘。さらに孤独にも苦しめられるが、男はめげずに生き抜く方法を懸命に探す。「格好よく、愉しく生きるのよ」妻の遺言を胸に抱いて――。 <目次> はじめに 第一章 家事に殺される!? 〜オトコ、はじめての家事〜 第二章 男やもめが生きぬくための7つのルール 第三章 妻を亡くして 〜オトコ心の変化〜 第四章 妻がくれたもの 〜大きな不幸の先に大きな幸せが待つ〜 おわりに

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70歳、はじめての男独り暮らし

定年後、癌で妻を亡くした元・大学教授が語る、人生100年時代の男の生き方。

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西田輝夫 医学博士

1947年生まれ、大阪府出身。1971年大阪大学医学部卒業後、米国ボストンのスケペンス眼科研究所留学などを経て、1993年、山口大学医学部眼科学教室教授に就任。2001年米国角膜学会にて、日本人としては19年ぶり2人目となるカストロヴィエホ・メダル受賞する。2010年からは山口大学理事・副学長を務めた。2013年に退任後、旅行をゆっくりと楽しもうとした矢先、長年連れ添った妻が子宮頸がんのため帰らぬ人となる。現在は、医療法人松井医仁会大島眼科病院監事、(公財)日本アイバンク協会常務理事などを務めながら、妻が最後の数か月で教えてくれた家事技術をもとに、懸命に独り暮らしの日々を送っている。

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