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かけこみ人生相談

2017.06.28 公開 ポスト

第90回

「転職5社目。入って半年でまた転職を考えています」回答「お辞めになるなら“自分に合わなかったから辞めた”とはお考えにならないように。なぜなら…」橋本治

今回の回答者は橋本治さんです。

 

◉相談 vol.90 (キャリアについて悩む男・事務職正社員・29歳・男・東京都)

 今年30歳になる独身男性です。転職回数が多く、現職で5社目になります。最長で2年です。 職種は営業、飲食、事務系とやりまして、続かない原因は人間関係や仕事での評価が得られず、適職は他にもあると考えた事が主です。そして、今年30歳だと思うと、地に足をつけなきゃと焦っております。

 現職は司法書士事務所に勤めておりまして、転職して半年が経ちました。事務所に転職した理由は、数ヶ月前まで真剣に付き合っていた彼女(約一年間の交際)に、ふらふらしてないで大型資格をとって安定したらとのアドバイスを受けて決意しました。結局彼女には価値観の違いで振られたのですが、事務的な仕事は自分にはマッチしないと感じ、今回の転職も失敗したかと落胆しています。理由は、書類作成上のミスが多くお客様や上司に信頼されていないことと、昔から長時間勉強できる性格でなく、資格取得は無理とあきらめてしまっています。

 そこで、資格勉強をする気がないなら早く見切りを付けるべきだと悩むのですが、半年で転職を考えてる自分に絶望しかありません。社会にでてから、主体的に働ける仕事を目指してきたわけですし、むしろ諦めずにほかの仕事にもトライするべきでしょうか。それとも、今の事務所でいい加減頑張ったほうが良いでしょうか。

 ただ、職場でも楽しくなく、さらにその後の余暇も勉強する生活が精神的に苦しいです。甘えでしょうか。根っからのダメ人間でしょうか。また、過去の職場での失敗の一つにプライドを捨てれなかったことがありまして、未だに頭で理解していても感情が抑えられません。例えば、怒られると否定された気分になりスネるとか、思い通りにならないと、やる気が起きないようなことです。どうすれば、この子供みたいな感情を抑えて、組織のために動ける人間になれるでしょうか。先生方、お手数ですが、ご回答頂けたら幸いです。

 

◎お答えします(今回の回答者:橋本治)

 まだ司法書士事務所に勤めておいででしたら、お辞めになってもいいんじゃないですかね。ただ、辞める前に「ここでのこの仕事は自分に合っていないが、一体自分はどんな仕事をすれば長続きするんだ」とお考えになることをおすすめします。もちろん、現在転職五社目のあなたですから、「自分の適性はなんだ?」ということはお考えになったことはあると思います。だから、今の会社を辞める時には、「自分に合わなかったから辞めた」という考え方をなさらないようにして下さい。あなたが転職を繰り返さなければならない理由は、「この仕事が、この会社が、自分に合うか合わないか」という考え方をしていたからです。

「もうそういう考え方をするのはやめなければ」とお考えになってお辞め下さい。重要なのは「合うか、合わないか」ではありません。「合わせることが出来るか、出来ないか」なのです。

 表向き、世の中の勤め先は「あなたに合う仕事ですよ」というアピールの仕方をします。でも、まだ自分のことがよく分かっていない若い人間がいきなり出会える「自分に向いた仕事」などというものはないのです。服を買う時に「お似合いですよ」と言われて、自分でも「意外と似合ってるな」と思って買いはしたけれど、すぐに飽きてしまう。自分は飽きてはいないけれど、他人に「まだそんなの着てるの? もうはやってないよ」と言われて捨ててしまうように、若い時は平気でグラつくのです。

 グラつくのが悪いとは言いません。まだろくに始まっていない若い人は、変わるのが当然で、グラつくのも当然です。ただ、その「グラつく」を野放しにすると、無意味に転職を繰り返すことになってしまいます。子供じゃないんですから、「向こうの方からこっちに合わせてくれるのが当然」という考え方を捨てましょう。転職をせずに長続きをさせたかったら、「こちらからどれだけ合わせて行けるか」と考えることです。若くてすぐグラついてしまうということは、変化可能ということで、「合ってるかどうかよく分からない自分を、その仕事に合わせるようにする」という方向に持って行くのです。つまり、「合わせることが出来るかどうか」です。

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ご応募いただいたお悩みは、編集部で選考の上、採用いたします。お悩みには、橋本治さん(1948年生まれ。小説・評論・戯曲など、縦横無尽に創作活動を展開)、三砂ちづるさん(1958年生まれ。津田塾大学教授。世界のお産・子育ての研究をとおして女性の生き方を提案)、藤原美智子さん(ヘア・メイクアップアーティスト。美容の技術から生き方まで幅広く支持される)、藤田晋さん(1973年生まれ。株式会社サイバーエージェント代表取締役社長。起業家のトップランナー)、岸見一郎さん(1956年生まれ。哲学者。アドラー心理学の第一人者)の5名の人生の達人にご回答いただきます。

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橋本治『橋本治のかけこみ人生相談』

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橋本治

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。小説、評論、戯曲、古典の現代語訳、エッセイ等、多彩に活動。『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)等、著書・受賞歴多数。

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