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かけこみ人生相談

2017.08.25 更新

「息子がテレビの下請け会社を辞め、フリーの映像プロデューサーになると言い出し、食べていけるか心配です」回答「率直に言って、親にできることは何もありません」岸見一郎

今回の回答者は岸見一郎さんです。
 

◎相談(とら子・なし・66歳・女性・東京都)

 映画の専門学校を卒業後、映像関係の会社に就職したが、ADの仕事で、寝る時間もなく、家にもほとんど帰れず会社に寝泊まりしていて、起きられずに、撮影に遅れて、解雇されました。その後、アルバイトしながら、友達の撮影を手伝ったり。

 単発で、発表会のDVD製作を依頼されたりしていたが、5年前に、映像関係の派遣会社に登録し、テレビ局の下請け会社に非正規雇用で働いていました。いつか正社員にしてもらえるかもと、思っていましたが、どうやらその望みはないと見切りをつけたのか、息子は今年の10月で派遣を辞め、独立して、フリーの映像プロデューサーになるといっています。仕事は日本全国を歩き民話の語り部さん撮影しDVDを製作し、製作費をいただくということです。

 母親とては、到底、そんな仕事で、食べていけるとは、思えず心配しています。今、息子は都内のアパートで一人暮らしですが、独立後、家賃や健康保険、国民年金など、親が出してあげたほうがいいのではないかと悩んでいます。
 

◎お答えします(今回の回答者:岸見一郎)

最近では、過労死の問題があって、親は子どもがどんな仕事しているかを知っておくべきだと考えるのはある意味当然でしょうし、子どもから仕事のことを聞かされ心配であるお気持ちはわかります。

 しかし、多忙なADとして働いていた会社は幸い解雇されたのであり、目下の心配は過労ではなく、会社に正社員として就職しないで、フリーのプロデューサーとして食べていけるかということです。
 学校を卒業後、これまでも自分で生計を立ててこられたのであれば、これからも心配することはないというのが合理的な結論です。
「だから、何も心配しなくていいですよ」。そういって、話を終えられたらいいのですが、話をここで終えるわけにはいきません。 なぜなら、息子さんはこれからも自分で生計を立て、問題なく生きていかれるかは、私が太鼓判を押すことはできないからです。親も同じです。親とて、子どものこれからの人生がどうなるかはわかりません。だから、心配なのだといいたいのでしょうが。

 それでは、親として何かできることがあるのか。これが問題です。率直にいって、何もありません。親が子どもの仕事に口出しをすることはできないからです。どんな仕事をするかは子どもにしか決められません。

 仕事がうまくいかなかった時もそのことの責任は自分でしか取れません。実際、起きられず撮影に遅れた時は仕事を辞めなければならなかったのです。
 親ができることがあるとすれば、何かできることがあるかとたずねることです。その問いに対して、こういうことをしてほしいという答えがあり、それが親のできることであれば子どもを援助することはできます。

 しかし、そのような手続きを経ても、実際には、親ができることはありません。遅刻してはいけないから、朝、電話をしてほしいといわれたら電話をしますか?家賃を払ったり年金を払ったりすることも基本的にはモーニングコールをするのと同じなのです。

 まして、頼まれもしないのに、家賃や年金を払うと申し出れば、自尊心の強い子どもであれば、親からそのような援助をされることを潔しとはしないでしょう。親が自分を信頼していないことが伝わるからです。もしも、これまでも親に頼ることを当然だと思っていたのであれば、親がそのようなことを申し出れば、いよいよ依存的になるでしょう。親が何とかしてあげようと思っているうちは、子どもは真剣に自立しようとはしないのです。

 私が援助しなくても、自力で生きていけると考えて、今は何もしないことをお勧めします。

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岸見一郎

1956年、京都府生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学(西洋古代哲学史専攻)。著書に『アドラー心理学入門』(KKベストセラーズ)、『幸福の哲学』(講談社)、『人生を変える勇気 踏み出せない時のアドラー心理学』(中央公論新社)、『老いた親を愛せますか?それでも介護はやってくる』『子どもをのばすアドラーの言葉 子育ての勇気』『成功ではなく、幸福について語ろう』(幻冬舎)訳書にプラトン『ティマイオス/クリティアス』(白澤社)などがある。共著『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)はベストセラーに。

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