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福沢諭吉の『学問のすゝめ』

2016.07.10 更新 ツイート

福沢諭吉の『学問のすゝめ』政治編(4)

誰もが手探りの新時代に重要なのは、「何もわからないまま流されるバカ」をなくすこと橋本治

好評発売中の橋本治著『福沢諭吉の『学問のすゝめ』』から、一部を抜粋してお届けする、試し読み第二弾。
世の中が「バカばっかり」ということが分かったらどうするか? 諭吉の決意はここに集約されました。

 仮に福沢諭吉が政治の方面に乗り出したとしたって、うまく行くはずはありません。現に『学問のすゝめ』を完結させた三年後、福沢諭吉は東京府会議員になってその副議長に選ばれますが、これを辞退して、ついでに議員の方もすぐ辞めてしまいます。たぶん「バカばっかり」がいやだったんでしょう。

「今の世の中はバカばっかりでどうにもならない」ということが分かったら、「政界に進出して社会を変えてやろう」ということが無意味だということは分かります。進出しなくても、なんとなくは分かります。「政界進出で世を変えてやろう、変えられる」と考えるのは「青雲の志を持った書生」レベルの話です。そんなことよりも重要で、一番必要なのは、なんにも分からないで平気で《乱世》に巻き込まれてしまうようなバカをなくすことです。急がば回れではありませんが、「誰もが手探り」であるような時代に一番重要なことは、なにも分からないまま流されてしまうだけのバカをなくすことで、「啓蒙」とはそういうことなのです。

『学問のすゝめ』を書く福沢諭吉は、「騒ぐな、政府に従え」と言って、でも「政府に負けるな、頭がよくなれ」と、高い所から言う人です。その点で「上から目線のエラソーな奴」でもありますが、あなたが《書生》でなかったらお分かりになるでしょう。人に「こうしたらいいよ、これじゃだめだよ」と教えてくれる人が、バカの群れに巻き込まれて言うことがグチャグチャになってしまったら、バカは減らずに困ったことになるだけです。

 その点で、人から「エラソー」と言われてしまう啓蒙は、「エラソー」と言われる分だけしんどいものなのです。

 

 啓蒙の人、諭吉の苦労も垣間見えたところで、試し読み第二弾は終了です。第三弾ももうすぐ公開。どうぞお楽しみに。

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橋本治『福沢諭吉の『学問のすゝめ』』

君も賢くなれる、と諭吉は言った――。で結局、何を学ぶのか? いまだにベストセラー!!(当時20万部、岩波文庫71万部) 感動!興奮!泣ける!! 橋本治の熱血講義 全十七編のうち「初編」(冒頭たった10ページ)だけ読めばいい。 超有名なのに、みんな実は内容をよく知らない、 『学問のすゝめ』の魅力とは― 自由とは? 平等とは? 明治政府って何やるの? 天皇ってどんな人? 藩と国はどう違う…? まだ庶民が江戸脳だった明治5年に出版され、当時20万部の大ベストセラーとなった『学問のすゝめ』。列強侵略の脅威を一旦は免れたものの、その真の恐ろしさや近代化のなんたるかが全然わかっていない日本人に、諭吉は何を学べと言い、彼らを熱狂させたのか? 当時の時代背景や、ことばの意味、諭吉の思考回路もおりこんだ新感覚の解説本。そしてなぜ現代人も、時代の節目節目に、この本を繰り返し読んでしまうのか、その理由も明らかに! 蒙【バカ】が大嫌いな福沢諭吉の、蒙【バカ】への愛まで伝わってくる、感動の講義録。

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福沢諭吉の『学問のすゝめ』

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橋本治

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。小説、評論、戯曲、古典の現代語訳、エッセイ等、多彩に活動。『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)等、著書・受賞歴多数。

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