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じつは治せる“おなかの弱い人”の胃腸トラブル

2019.12.27 公開 ツイート

【腸の新常識】よくおなかをこわすのは糖質が原因かも?【2019年総合ランキング1位(再掲)】 江田証

「おなかが弱いのは体質だから…」「こんなことでわざわざ病院に行くのは恥ずかしい」など、おなかの不調に慣れてしまい放置している、"おなかの弱い”あなた。
 胃がん・大腸がんなど大きい病気を見過ごしてしまうかもしれないというリスクもそうですが、胃腸にトラブルがある・ないでは日々の生活の質も雲泥の差。きちんと治療をすることが大事です。

胃がん発生に重要な働きをしている特定の遺伝子がピロリ菌感染胃粘膜に発現していることを世界で初めて発表し、毎日全国からの患者さんを診察している消化器内科医、江田証さんによる著書『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』より、おなかの不調の原因とその治療法を紹介します。

<過敏性腸症候群を引き起こすのは、糖質「FODMAP」が原因?>

 つらい腹痛や下痢に悩まされる過敏性腸症候群。

 この過敏性腸症候群の最新研究では、炭水化物などに含まれる特定の糖質「FODMAP(フォドマップ)」が注目されています。過敏性腸症候群の人は、FODMAPというある種の糖質を小腸でうまく吸収できない体質と腸内細菌の特徴をもっており、これらを多く摂取したときに症状が悪化する、という考えで、豪州のモナッシュ大学をはじめとする海外で盛んに研究が行われています。

 本来、糖質は消化酵素で分解され、小腸で吸収されます。ところがFODMAPは小腸で吸収されづらいため、小腸から大腸へとそのまま到達します。そして大腸で腸内細菌とFODMAPが異常発酵を起こし、過剰な水素ガスが発生し、腸の働きが不調になるのです。

 現在、欧米・豪州では低FODMAP食が盛んです。FODMAPが多い食品を避け、症状の引き金となる糖質を特定していく方法です。

3週間低FODMAP食にすることで約7~8割の方は症状が改善します。消化器系の医学誌で最も権威の高い「Gastoroenterology」誌の最新号でも、低FODMAP食が過敏性腸症候群に有効であることを証明した論文が掲載されました。最近注目されているグルテンフリー食も過敏性腸症候群に効果が期待されますが、今のところ科学的にその有効性が確認されていません。それよりも低FODMAP食のほうが科学的にも有効性が高いことが論文で確認されています(江田証医師)。

特定の糖質「FODMAP」ってなに?

 FODMAPは、炭水化物などに含まれ過敏性腸症候群の症状を悪化させると考えられる特定の糖質の略称。これらの糖質を含む食品をとると、腸の運動が過敏になり、ガスが増える。


ガラクタン(ガラクトースの重合体)…レンズ豆、ひよこ豆などの豆類に含まれる。
フルクタン(フルクトースの重合体)…小麦やタマネギなどの果糖に含まれる。


二糖類に含まれる乳糖…高乳糖食(牛乳、ヨーグルト)に含まれる。


ガラクトース…生物界に広く分布している糖の一種。
フルクトース…果糖。果実、ハチミツなどに含まれる糖の一種。



 

ポリオール(ソルビトール、キシリトール)…マッシュルームやカリフラワー、くだもの類に含まれる。

FODMAP食を食べると、小腸の運動機能が高まりすぎる

 過敏性腸症候群の人は、FODMAP食に含まれる糖質をうまく小腸で吸収できないため、小腸内の浸透圧が高まることで小腸内に過剰に水分が引き込まれます。その結果、小腸内で水分が過剰に増え、その運動機能が高まりすぎ、腸全体が過敏に。おなかがゴロゴロしたり、痛くなったり、ガスがたまったりします。

過敏性腸症候群の人がFODMAP食を食べると……


低FODMAP食 食品OK・NGリスト

 過敏性腸症候群の人は、まず最初に3週間、高FODMAP食を控え、低FODMAP食をとってみましょう。

 次に高FODMAP食でふだんよくとっていたものを、おなかの調子を見つつ1品ずつとり入れ、自分の体質に合う食品、合わない食品を特定することを目指しましょう。

 オリゴ糖や発酵食品など一般的に「腸にいい」とされトクホに認定されている食品も、過敏性腸症候群の人にはかえって症状を悪化させかねない。腸内細菌は個人個人で指紋のように多様であり、十把一絡げには論じられない。

 過敏性腸症候群の人の腸内では、バイヨネラとラクトバシラスという腸内細菌が多く、これらが作り出すある代謝産物が過剰なほど過敏性腸症候群の症状が悪いことがわかっている。低FODMAP食にするとこの代謝産物が減り、症状が改善することがわかっている。

 ふだんから腹痛などの症状がない無症状の人と、ふだんから腹痛や下痢などの症状がある人では、食事方法が異なることを覚えておきましょう。
 


 なお、完全にFODMAPを除去できなくても、意識してFODMAPを食べる量を減らすだけでも症状が軽減することが論文で確認されていますので完璧をめざさずにやってみましょう。

 残りの食材については、
専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』(江田証著 幻冬舎刊)に掲載されています。

江田証『専門医が教える おなかの弱い人の胃腸トラブル』

「またおなかの調子が悪い」は治せる病気です! おなかの不調に慣れてしまっているすべての人のための、専門医が教える治療法大全!

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江田証『機能性ディスペプシア おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart2「機能性ディスペプシア」を抜粋してまとめたものです。

◆ 5人に1人、若い女性に多い。異常はないのに胃もたれ、胃痛がある
◆ 発症のキーワードは「ふくらみ」「感受性」「ストレス」
◆ 食べても胃がふくらまず、トラブルが連鎖していく
◆ 新薬アコチアミドと漢方薬・六君子湯で解消できる
◆ 内臓知覚過敏には薬のほかに唐辛子も効果あり
◆ まずストレスで胃が働かなくなり、悪循環におちいる
◆ 寝る前に食べると胃もたれするのは?
◆ “おなかの風邪”後の機能性ディスペプシア

江田証『過敏性腸症候群 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart3「過敏性腸症候群」を抜粋してまとめたものです。

◆ ストレスや腸内環境の悪化で腸の運動が変調する
◆ 下痢型、便秘型、混合型。3つの症状がある
◆ 下痢、便秘の症状にあわせて2種類の薬を使う
◆ 低FODMAP食で腸内異常発酵を止める
◆ 低FODMAP食 食品OK・NGリスト
◆ リラクゼーションや認知行動療法で改善
◆ おなかにまつわる噂のウソ、ホント

江田証『逆流性食道炎 おなかの弱い人の胃腸トラブル〈分割版〉』

『専門医が教える おなかが弱い人の胃腸トラブル』のPart4「逆流性食道炎」を抜粋してまとめたものです。

◆ ピロリ菌の感染率が低下して、中高年になっても胃酸が出すぎる
◆ 食道の筋力低下や感受性の強さも胃液の逆流を招く
◆ 長くほうっておくと食道がんになるおそれがある
◆ 胸焼け、吐き気が週2回以上あるなら治療が必要
◆ 胎児時代の飢餓感で将来、メタボに!?

関連書籍

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江田証

1971年、栃木県生まれ。医学博士。自治医科大学大学院医学研究科修了。江田クリニック院長。日本消化器病学会奨励賞受賞。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。米国消化器病学会(AGA)インターナショナルメンバーを務める。毎日、国内外から最新の治療法を求めて来院する、お腹の不調をかかえた患者を胃内視鏡・大腸内視鏡で診察し、改善させることを生きがいにしている。著書に『医者が患者に教えない病気の真実』『病気が長引く人、回復がはやい人』『おなかの弱い人の胃腸トラブル』『腸内細菌の逆襲』(すべて幻冬舎)などがある。

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