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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

2026.09.18 公開 ポスト

#78

突然の北海道取材 十勝編相場英雄

使用機材〈Ricoh GR3〉

先月の当欄は沖縄について触れた。そして今月。実は沖縄から帰京して四日後、私は北海道の十勝地方を目指した。

きつい日程だったが、新作向け取材であり、どうしても行かねばならなかったのだ。同地方に有力な協力者が現れた結果、この人物の都合に合わせる形で飛行機に飛び乗った、という次第だ。

 
機内から雄大な十勝平野をのぞむ。この時点で松山千春さんの歌声が脳内再生される。

訪れたタイミングは七月初旬。東京は梅雨の真ん中で湿気と曇天が続いていた。久々に訪れる十勝は、北海道らしい涼やかな晴天のはず……と私の願望通りにはいかず。

帯広は曇りがち、そして気温も三〇度を超え、湿度も七〇%近かった。要するに、大自然は個人の思惑通りにはならないのだ(ここ、最後で重要になるポイント)。

新作(多分来年から連載開始)の詳細は明かせないが、とにかく腹が減っては取材ができない。ということで、約二〇年ぶりに帯広駅前の名店を目指した。十勝名物の豚丼を初めて提供した老舗店だ。

以前、初めて帯広を訪れた際、その柔らかな食感に驚いたお店だ。店舗が新しくなっても、店前に漂うタレの匂いは健在だ。

分厚い豚肉が八枚の〈華〉をオーダー。蓋からはみ出る肉。炭火で香ばしく焼かれ、濃い目のタレをくぐらせた豚肉の華が目の前に。観光客だけでなく、地元民も多い店内は、必死に箸を動かす人で溢れていた。

蓋から溢れ出る肉。これぞ十勝、帯広の豚丼なり。
王道の豚丼ビジュ。見た目ほどタレはくどくない。旨みが染み込んだ白米は、いくらでもいける。

さて、腹ごしらえを済ませたら、あちこち回らねば。一泊二日の弾丸日程のため、すぐさまレンタカーを駆り、帯広市内のほか、音更町や上士幌町など十勝地方の複数ポイントを回った。

道中、車窓からは広大な畑、地平線が見える。松山千春さんの代表曲の一つ、〈大空と大地の中で〉がなんども脳内でリフレインされた。

この間、カーナビからたびたびこんな音声が聞こえた。

(目的地は四〇キロ先、左折です)

これぞ北海道の道。ひたすらまっすぐ。
畑が続き、その先には地平線が見える。十勝平野なんだなぁ。

直線道路を走っていると、本州では信じられないことが起きる。四〇キロ先で曲がれとは、ナビの意味はあるのか……そんなことを考えつつも、スピードは抑制し(速度違反取り締まりが多いのは周知の事実)、広大な景色を脳裏に焼き付けながら、十勝地方を走り回った。この間、新作の登場人物がどんな風に動き、誰と会うのか等々を記憶に植えつけた。

二日間の取材の最終盤、地元で有名なばんえい競馬(一トン近い巨体の馬たちが巨大なオモリを引く直線レース)が開催されていることを知り、駆けつけた。

パドックを見学し、真剣な目つきでばん馬を観察するガチ勢を横目に、家族連れの穏やかな顔や、食堂から漂うモツ煮や揚げ物の匂いを感じつつ、写真を撮りまくる。

初めて訪れたナイタイ高原牧場。標高800メートルでさすがに涼しい。天国かと錯覚する絶景。
競馬場ふれあい広場にて。ばん馬のビジュに一目惚れ。ものすごくかわいい。
これが帯広名物のばんえい競馬。馬場との距離が近く、迫力満点。

予定以上の成果を得て、空港に向かう途中で異変が起きた。急激に空が暗くなり、肌に触れる風が冷たくなった。

ヤバい、絶対豪雨が来る……そう思ってレンタカーに駆け戻った直後、大粒の雨が降り出した。帯広市内の幹線道路が次々に冠水、空港に向かう郊外の直線道路にも水が溢れ始めた。

猛烈に黒い雲が接近。周囲の安全を確認し、停車。直後に大粒の雨と雷鳴に襲われる。

なんとか空港に辿り着くと、東京からの到着便が天候不順で着陸困難との知らせが届く。ロビーで知ったのは、地元気象台がレベル4の大雨危険情報を発した、との情報だった。そりゃ、ワイパーが効かぬほどの雨だ。飛行機も着陸が難しいわ。

その日のうちに帰京せねば、翌日の予定が全て吹っ飛ぶ……そんな考えが頭をよぎった直後、帰りの便が着陸したとの報告が耳に入った(結局一時間半以上の足止め=まだマシなほうだ)。

いやはや、北の大地の大自然の過酷さを思い知った取材旅行だった。新作の取材でまた十勝を訪れる予定、現地の皆さま、よろしくお願いいたします。

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勝手に!裏ゲーテ 街場の旨いメシとBar

食い意地と物欲は右に出るものがいない作家・相場英雄が教える、とっておきの街場メシ&気取らないのに光るBar。高いカネを出さずとも世の中に旨いものはある!

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相場英雄

1967年新潟県生まれ。元時事通信社記者。主な著書に『震える牛』(小学館文庫)、『血の轍』、『KID』(ともに幻冬舎文庫)、『トップリーグ』  『トップリーグ2/アフターアワーズ』(ともにハルキ文庫)。近著は『血の雫』(幻冬舎文庫)、『レッドネック』(ハルキ文庫)、『マンモスの抜け殻』(文藝春秋)、『覇王の轍』(小学館)、『心眼』(実業之日本社)、『サドンデス』(幻冬舎)、『イグジット』(小学館文庫)『ゼロ打ち』(角川春樹事務)、『マンモスの抜け殻』(文春文庫)。『覇王の轍』(小学館文庫)、『浸潤』(別冊文藝春秋連載中)

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